東山翔 著 『Gift』レビュー

本日は、茜新社刊行(2008年11月27日)の成年向け漫画『Gift』のレビューをしたいと思います。
漫画の内容が、性的な表現を含むため、18歳未満の方、およびその類の表現が苦手な方は閲覧をお避け下さい。



先日、ゴルゴ13シリーズなどで高名な漫画家、さいとうたかを氏のインタビューを何かの媒体で拝見したのですが、
そこに、非常に印象的な言葉がありました。
すなわち、「劇画こそスペクタクル・シーンに最適のメディアである」。

表現方法としてのメディアには、小説、絵画、映画その他あるかと思いますが、
小説では、想像力を駆使しなくてはならないため、一目で事態の把握を図ることが難しく、逆にそれが可能な絵画では、流れを表現することが難しい。
映画は、俯瞰的な事態把握が可能ですが、何分、費用がかかりすぎてしまう。
一方、劇画、そしてそれを内包する漫画は、作者の手間しだいで、どこまでもディテールを表現できます。
構図も、技量さえあれば、現実では撮りえないものであっても自由自在ですし、コマの大小などにより直感的に事態と流れの把握が可能です。
そして、なにより費用がかからない。

無論、小説は感情表現の豊かさ、言語表記技法の粋を極めることができる物でありますし、絵画、映画などのメディアについても、それぞれのメリットがあります。

ただ、漫画が、小説などの文字表現、絵画などの視覚表現の混合物であるがためにできる表現というものも確実にあるのだと思います。
その一例が、先述のさいとうたかを氏の言なのかと。

今回の『Gift』も、漫画による表現の可能性を感じさせてくれるものでした。
『Gift』の著者、東山翔氏は、本作で単行本2冊目となる方で、この漫画は、コミックLOという雑誌に連載されていたものです。

掲載紙の「LO」はロリータオンリーの漫画誌でして、表現としてのロリ漫画を振興する一方で、現実での犯罪を抑止・防止する趣旨の意見広告掲載で有名です。
この広告が、ウィットをよく効かせた、小洒落たものでして、個人的には、JTのマナー講座にも匹敵する出来と思っています。
せっかくですので、一例をどうぞ。
c0124076_135548.jpgc0124076_1354089.jpg





















ところで私は、成年向け漫画は、他の性表現メディアに比していくらかの利点を持っていると考えています。

まず挙げられるのが、欲望の惹起の上手さ。
性表現のメディアの一般的な目的は、受け手の欲望を刺激することです。
漫画表現は、流れ、つまりストーリーを描くことが出来るため、登場人物の色付けをAVなどに比べて出しやすいのですが、そのために行為に至る過程を合理的に説明することが出来ます。
従って、単に行為を見せられて起こる動物的・本能的な欲情に加え、これこれこういうことがあって彼ら、彼女らは行為に及んでいるのだという知覚的興奮が起こり、欲望の度合いが強くなるのです。

次に、表現の可塑性、フレキシビリティー。
コミックLOもその一つですが、想像によって話をつくり出せる漫画では、ファンタジー・ロリータなど、現実には起こり得ない、あるいは禁止されている状況をも創造可能です。
また、断面透視、内臓模写などの表現語法も、またその類の表現を好む方にはたまらないものでしょう。
この表現の可塑性は、「ありえない物に興奮する私」に興奮する私という、少々倒錯的なプロセスをたどって、性表現の本質的目的たる欲望の刺激に貢献するものでしょう。

これらのメリットは、漫画のほかPCゲーム(いわゆるエロゲー)にも見出せますが、
成年向け漫画が、一話完結あるいは短編集的な形態をとることが多いため、類型的には、PCゲームより素早い欲望の刺激が可能であると思います。


さて、本作『Gift』ですが、上述の如き、成年向け漫画ならではのメリットを存分に生かした傑作でした。
表題作『Gift』は、天賦の才能をもった少女、亜紀とその義兄、俊の生活を描いた中篇で、全6話と後日談あり。
他に短編『Why Not?』と『Bewitched』が収録されています。

もちろん、成年向け漫画なのでとことんエロエロ、行き着くところまで獣欲を掻き立ててくれますが、それ以上に、話の作り込みがしっかりしていて、知覚的な興奮を感じられます。

筆者自身、主人公の天才少女という人間像を追求するため、「食料を買いだめて引きこもってみたり、亜紀が読んでいそうな本を読んでからネームに」取り組んだりしたと、あとがきで告白していますが、その成果は存分に生かされ、天才ならではの苦悩、幸福を、存分に描き切っているように思いました。

頭の良い主人公という性格付けは、得てして衒学的な専門用語の羅列、単なる主人公への周辺人物からの妬みあるいは崇拝に堕してしまい、話の面白さをむしろ阻害してしまうことになりがちです。
しかし、本作では、そういったこともなく、用語の用い方も適度で、ときおりクスリと笑わせてくれる様相で、楽しませてもらえました。

話の結びの付け方も、キャラクターの個性を生かして終わらせており、文句のつけようがありません。
概して、本の帯にあるアオリ文は、誇張が多いものですが、
この本ばかりは、確かにこの漫画に出会える可能性が高い、それだけで「ロリコンは勝ち組。」かと。

帯につられて買った初のLOコミックでしたが、これだけ面白いとなると、他のコミックにも手を出したくなるものです。
取り敢えずは、筆者の処女単行本でも買ってみましょうか。

では、また。
[PR]
by katukiemusubu | 2008-11-30 14:44 | ブックレビュー・映画評 | Comments(0)
<< 洗剤探して、一時間。 『漆黒のシャルノス』発売日です! >>