ハイエンドショウトウキョウ Agara100万円ヘッドホンアンプ HPA01レビュー

フジヤエービック主催ヘッドホン祭りの熱気も冷めやらぬ五月第三週、有楽町・東京交通会館にて開催されているハイエンドショウ東京へ行って参りました。
今回の目的は、ハイエンドショウで初披露となった新鋭ブランド・Agaraのヘッドフォンアンプ試作機 PROTO H01(型番HPA01)とPROTO HSJ01(型番HPAJ01)の試聴です。
〈8月3日追記〉
フジヤエービックのフジヤTVにて製品版AGH-1000が発表されました。
PROTO H01を更にブラッシュアップした仕様で9月初旬発売予定・価格100万円を予定しているそうです。
PROTO HSJ(ジュニア)01製品版は四分の一程度の価格帯を予定、発売時期は同時期との事。
8月25日フジヤエービック主催のDAコンバーター試聴会にて試聴可能だそうです。




Highend Show Tokyo2012スプリングは、東京交通会館・12Fで5月20日(日)まで開催されました。
ハイエンドを謳うだけあって、TADのReferenceシリーズやDYNAUDIOのConfidenceシリーズ等、名立たるスピーカーが勢揃い。
トライオードの元、国内復活を果たしたゴールドムンドなどの高級アンプやトランスポートも数多く出品されていました。
価格帯的にも上流ということも有り、ヘッドホン祭りに比べると人出は少なめで来客年齢層は高め。
ヘッドホンでしたら、多少人がぎゅう詰めであっても音を聞く分には支障ありませんが、こと部屋の環境に大きく左右されるスピーカーシステムの試聴に関しては人は多過ぎない方が、視聴環境として好適でしょう。
今回のハイエンドショウでは三部屋が展示・試聴コーナーとして割り振られ、各部屋に出品した会社が、交互に30~60分毎、デモンストレーションを行なっていました。
デモンストレーションの時間中は、担当社のスピーカーが盛大に鳴らされることになりますので、他社のスピーカーの視聴は出来ません。
そのことを考えてか、ヘッドホン出力を備えたアンプを出品している会社では、デモンストレーション期間中にはヘッドホンを備え置きして、アンプの音を聴けるようにしている会社もありました。

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さて、Agara社が出品しているのは、会場Cルームです。
場所としてはCルーム入り口から正面奥側、47研究所の隣でした。
というよりも、パンフレットの出品ブース名としてはAgaraも含めて「(株)四十七研究所」となっており、Agara社は四十七研究所と関係ある会社なのかも知れません。
47研究所自体も大変魅力的なメーカーで、超弩級CDトランスポート・Model4704に代表されるReferenceシリーズから、シリーズ全ての製品が高さ96mm・幅123mmに統一され・オーディオ機器らしい楽しみに満ちている濃紺色のMidnight Blueシリーズまで、懐の深いラインナップを持っています。
最近ではヘッドホンアンプを含めたキット販売も行なっており、こちらも興味深い処。

ところでAgara(アガラ)です。
Agara社は日本の会社で、今年初夏からの事業開始を予定している新鋭メーカーです。
現状の処、ラインナップはモノラルパワーアンプPROTO PW01、ヘッドホンアンプPROTO H01、同じくヘッドホンアンプPROTO HSJ01の三点。
PROTO P01については聞きそびれてしまいましたが、PROTO H01は100万円前後、PROTO HSJ01は20~30万円前後を考えているとの事でした。

先述の通り、ハイエンドショウでは会期中のほとんどの時間帯においてスピーカーが鳴らされ、ヘッドホンアンプの視聴環境としてはかなり厳しい部類に入ります。
とはいえ、スピーカーが鳴らされない時間帯もあり、特に会場が開いた当初の30分間(10時〜10時半まで)は「アイドリングタイム」としてデモンストレーションが行われないため、ヘッドホンを聞く分にも支障がありません。
そこで今回は、朝のうちからハイエンドショウに行って参りました。デモンストレーション時の試聴にも備え、密閉型ヘッドホンATH-W2002も持って行きました。

午前10時20分頃、Agaraブース到着。Cルーム内ではトライオードのデモンストレーション準備が開始されておりました。
一先ず、備え置きのゼンハイザーHD650でPROTO H01を一聴させてもらいました。
先ず以て驚かされるのはそのダイナミックレンジの広さ。
音の大変小さいところから、大きなところまで、非常に丁寧に拾っており、聞き逃すという事が有りません。
手持ちの音源の再生は不可で、PCから出力した音楽を聴かせてもらったのですが、その時掛かっていたのは美空ひばりの曲だったかと思います。
昨年、舟遊びのついでに京都嵐山の美空ひばり記念館に立ち寄ったのですが、ここで実に驚かされたのが、美空ひばりという歌手の口から出る帯域の広さとダイナミックレンジの広さでした。
つまり美空ひばりという歌手は、低域から超高域まで縦横無尽に自らの声を操り、かつその大きさをも自在に調整できる天賦の才能を持っていました。
それこそが彼女の演技力を支え、彼女を長きに渡って「歌唱の女王」足らしめた物なのでしょう。
これを良く練り上げられたシステムで聞くことが出来たら、どれだけ抒情的であろうか、とその時思ったものです。
その思ったままの音が、確かに存在する。
歌い上げる高域の声から、低く唸るような小節の装飾音まで、綺麗に洗い出され、しかも音の大変小さなところまでも逃すことがない。
朗々と歌う音の大きな部分においても、単に音が大きいだけではなく、口の動きが見えるかのような高解像を伴って空気振動が現れる。
かと言って、演出的かといえば然程でもなく、とはいえモニター的と行くわけでもない中性的な塩梅。
成る程、流石は100万円。ヘッドホンアンプとしては前例を見ない価格帯に在るだけのことは有ります。

その後、ATH-W2002でも聴かせてもらいました。
ヘッドホンの個性にも、忠実に対応するらしく、高音のクリアな具合が大変見事に感じられます。
ダイナミックレンジの広さからか、微小な残響までも確と捉えられるため、音にかすかな余韻が残り、艶が有ります。
しかし、これは脚色的な絢爛豪華さとは一線を画しており、音の良い部分を巧みに引き立てる鮮やかさ、鮮度とでも言うべきものです。
PROTO H01は解像感そのもので言うならば、これまで私が聞いてきたヘッドホンアンプの中で最高という訳では有りません。
音場の広さについても、驚くほどの広さという訳では有りません。
しかし、この鮮やかさこそがPROTO H01に一つの個性を与えている、と思われます。
誤解を恐れずに言うならば、音のコントラスト比が高い、とでも言うべきか。
2007年にソニーが最初の有機ELテレビXEL-01を発表した際、これを超える解像度を持った液晶テレビはごまんと存在していましたし、輝度の点でも有利な商品は存在しました。
しかし、何よりもXEL-1が見る人を驚かしたのはその100万対1という圧倒的な高コントラスト比が叩きだす鮮やかな映像でした。
画面に描き出された世界がすぐ目の前に在るかのような、その鮮やかさこそが人々を驚嘆せしめたのです。
映像の世界でコントラストがリアリティを高めると言われるのと同様、音の世界においてもコントラストはリアリティを高めるのではないかと思われます。
そのため、PROTO H01の出す音は、自然なものに感じられ、同時に説得力を有しています。
H01は音の左右チャンネルそれぞれについて、単独に電源をとり、単独に増幅をなし、単独でアッテネーターの調節ができるデュアル・モノ構成を採っていますが、その辺りの丁寧な構成が、音にも効果を持ってきたのでしょうか。

ところで、廉価版のPROTO HSJ01はどうでしょうか。
会社の方によりますと、PROTO H01とPROTO HSJ01は同じ増幅回路を積んでおり、H01と同じく左右相互に独立した増幅を行なっているとの事。
違いがあるのは電源・昇圧系統であり、これについてはH01では電源から左右独立を行うのに対し、HSJ01では左右共通の電源・昇圧系統を搭載、ボリュームについても左右共通との事でした。
備え置きはAKG K240でしたが、これを手持ちのATH-W2002に付け替えさせてもらって試聴。
PROTO H01でも感じたダイナミックレンジの広さ、音の鮮やかさは健在です。
但し、少しく解像感の点でH01に先行されている印象か。
ちょうどHSJ01に変更した辺りで、曲が美空ひばりからジャズに変わったのですが、金管の深い倍音成分や低域の沈み具合、シンバルの鳴りっぷりといった高音域の伸び具合について、H01の優越を感じ、電源・昇圧系統やボリュームの違いを感じさせられました。
とはいえ、H01とHSJ01は同傾向の音を持っており、あとはその違いにどれくらいの価値を見出すかという事になりましょう。

H01とHSJ01はその電源部から増幅部に至るまで、各回路をアルミダイキャストの箱に収納・ユニット化した上で、バネ状のものをユニット下部に差入れ、各ユニットを固定せずに浮かせた特異な構造を持っています。
会社の方にお尋ねした処、これは元からフローティング構造を狙ったという訳ではなく、音質改善のための試行錯誤を重ねている際に見出した、苦労と偶然の産物との事。
この構造が、音にどの様な影響を与えているのかは不明ですが、見た目にも面白いアンプです。
デュアル・モノ、更にフローティング。特殊構造のため、海外生産はおろか国内工場への製造委託も難しいそうで、一つ一つ手作業での生産となる由。
入力は双方共にRCAのみ。秋のヘッドホン祭りへの出展も検討中との事。
→2012年8月25日のフジヤエービック主催DAコンバーター試聴会にて製品版の初展示がアナウンスされています。
初夏以降の展開が楽しみな商品群でした。
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by katukiemusubu | 2012-05-19 18:27 | Ecouteur(ヘッドホン) | Comments(0)
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