DENON 新型ヘッドホン・イヤホン一斉レビュー(AH-D7100、AH-D600、AH-D400、AH-C400、AH-C300etc)

ヘッドホン4種(AH-D7100、AH-D600、AH-D400、AH-NCW500)
イヤホン2種(AH-C400、AH-C300)を試聴できましたので所感を記しておこうと思います。



「Music Maniac」シリーズ
ミュージックマニアックシリーズは、今回のデノン新型ヘッドフォン製品群の中でも上位に位置するシリーズです。
現在の2012年夏段階での構成は、フラッグシップAH-D7100(実売11万円)、AH-D600(実売5万円)、AH-C400(実売4万円)の三機種構成。

AH-D7100(報道時の型番はAH-D7100EM)は50mmナノファイバー振動板を備えた密閉型ヘッドホン。
DENON創立100周年記念モデルAH-A100にも用いられた高級木材、マホガニーを使用したハウジングを採用する一方で、未来的なFRP(ガラス繊維強化プラスチック)筺体を採用し、今までにない形状のヘッドホンとなっています。
音の傾向は強烈なハイ上がり。
高音域がスピード感をもって立ち上がり、中低域を圧倒している印象です。
今まで聞いたこともない音域バランスで面食らいましたが、よく聴くと中低域も出ています。ただ、高域のスピード感に追いつけない印象で、どうにも一拍遅れたようにも感じられました。
解像感はかなりの高さ。その意味では従来のフラッグシップAH-D7000に優越しています。
音場は大変大きく、ホールの広さを良く表現しています。自然音との相性も良く、雑踏を録音した音源などまるでそこに居るかのよう。
この辺りはD7100とD600に採用された「フリーエッジ構造」(スピーカーと同じく振動板を筺体に固定せずに浮かせて動かすという構造)の賜物なのかも知れません。
しかし、音場の大きさが一部悪影響を与える場合があり、特にボーカルにおいては声が遠く、あっさりと感じられます。比較的ボーカルが近く、濃厚な音を持っていたD7000とは方向性の異なる音と言えましょう。
ただ、試聴していて思ったのですが、このAH-D7100の音のアンバランスさはエージング不足によるものかも知れません。
ダイナミック型ヘッドホンにおいては、ある程度のエージングをしないと十分な中低音が出ない場合がありますが、その典型のような具合でした。
今後の変化に期待です。

AH-D600(発表時の型番はAH-D600EM)は、AH-D7100と同様の50mmナノファイバー振動板、FRP筐体を採用したモデルです。
大きな差異はハウジングがマホガニーではなく、グラスファイバー配合FRPとなっている点と着脱可能ケーブルの純度の点。D7100では7N-OFCケーブル(純度99.9999999%以上)でしたが、D600では通常のOFC(純度99.95%以上)になりました。
音の傾向は非常にバランス良く、低音、中音、高音ともに追随性が高く、聞いていてストレスがありません。
特に低音域の制動感は見事で、音数の多い大編成交響楽でも、にじみを見せずに捌き切ります。試聴にストラヴィンスキーの「火の鳥」を用いていたのですが、ロシア音楽との相性も良さそうです。
音場の広さはD7100に一歩劣る印象。この辺りは、ハウジングの反響の程度の差異なのかも知れません。
解像感についてはD7100と余り変わった印象はなく、むしろボーカル曲などでは声が近くなった分、口の動きなどがより精細に描写されています。
従来のフラッグシップAH-D7000はアコースティック・オプティマイザーによる弾性有る低音域、それを基礎として際立つ中高音域が特徴的な機種でしたが、AH-D600は低域の弾性が消滅し、その代わりにスピード感を獲得しています。
AH-D7000の濃厚で包み込む様な音からは、ガラリと印象を変えており、快速感ある抜けの良い音とでも評するべきでしょうか。
これはこれで有りと思われ、今回聞いた中で、一番気に入った機種でした。

AH-C400は亜鉛ダイキャスト筐体を採用したイヤフォンで、バランスド・アーマチュアドライバーを2基搭載したデュアル・フルレンジ構成です。
流石に同時に二つのスピーカーから音を出すだけあって、BA型とは思われぬ音の力強さがあります。
特に中低域の力強さは特筆すべきもので、コントラバスの唸りをしっかりと捉えつつ、しかもBA型らしい繊細な解像度を併せ持って、音を出していました。
高域の伸びも明瞭でかつ繊細。BA型は繊細さに優れ解像感豊かなものの、出せる音の範囲に限りがあり、どうにも量感にかけるという欠点がありますが、それをデュアル・ドライバで補っており、魅力的な機種に思われました。

「Globe Cruiser」シリーズ
グローブクルーザーシリーズはオフィスや旅行での使用を考慮して開発されたモデルで、ノイズキャンセリング機能を備えたヘッドホン「AH-NCW500」(実売4万5千円)とワイヤレスイヤホン「AH-W200」(実売2万円)がラインナップされています。

今回は音質のみを試してみようということでAH-NCW500のノイズキャンセリング機能を切って試聴。
ノイズキャンセリング・ヘッドホンは外の騒音を打ち消すための反対周波を発生させる機能を持っていますが、その機能に対応するためか、ノイズキャンセリング機能OFF状態ではどうにも周波数帯域が狭く感じられ、解像感不足な印象でした。
NCW500の場合はノイズキャンセリング機能のほかワイヤレス機能も備えており、これらの機能を用いた場合にこそ真価を発揮するヘッドホンなのかも知れません。
ノイズキャンセリング機能・ワイヤレス機能(ケーブルでの接続も可能)に加えて、折りたたみ機構も備えており、畳むとカバンにも容易に入りそうなサイズ感は、なかなか便利に思われました。

「Urban Raver」シリーズ
アーバンレイバー・シリーズはクラブミュージックを範にした低音重視の製品群です。現状ラインナップはアンプ搭載ヘッドホン「AH-D400」(実売3万5千円)と二つのダイナミック型ドライバーを向かい合わせにした機構を持つイヤホン「AH-C300」(実売2万円)の2機種。

AH-D400は低音増幅に主眼が置かれたアンプリファイアを搭載したヘッドホン(内蔵バッテリー駆動)で、装着しながらも筐体上のコントロールホイールで自在に音量調節が可能です。
50mm振動板を搭載し、形状はミュージックマニアックシリーズのAH-D600とも似通っており、同様のペンタゴン・低反発イヤーパッドが快適な装着感を実現しています。
音の傾向は・・・と言うまでも無いですが低音重視。本来はヒップホップやクラブミュージック仕様なのでしょうが、案外中音・高音も歯切れよく、厚い低域に埋没せずに音が出ていました。
その為、残響感が程良く出て女性ボーカルを艶めいて聴かせてくれたりと、なかなか面白い鳴り方をしています。
解像感はさして高くありませんが、塊でぶつかってくるような音圧感が新鮮です。同様のシリーズとしてSONYのMDR-XBシリーズが有りますが、XB1000ほど深くは沈まないものの、低音の量感では良い勝負が出来るのではないかと思われました。

AH-C300は二つのダイナミック型ドライバーを搭載し、これを向かい合わせて低音域を増幅するというダブル・エアコンプレッション・ドライバーを採用。
似た発想のものに音茶楽の「Flat4-粋-」がありますが、Flat4が対向ドライバー構造で自然な音の響きを追求したのに対して、C400は対向ドライバー構造でアーティフィシャルな低音を追求しています。
その試みはかなりの程度で成功したといって良く、C400はイヤホン離れした強烈な低音域を実現しています。流石に、イヤホンという極小の振動領域で低音と高音を両立することは難しいらしく、AH-D400の様に大量の低音を出しつつ適度に高音も出すといった鳴り方ではなく、低域が他の全帯域を支配する鳴り方をしています。
しかし、イヤホンでこのパワフルさは好事家にはたまらないものかも知れません。

総じて見て
総評するに、デノンの新型ヘッドホンシリーズ(Lifestyleシリーズ)は従来のAH-D7000に代表されるClassicシリーズとは明確に異なる方向性でもって市場に信を問おうとしているように思われました。
鮮烈な音のバランス、斬新な形状の筐体、いずれも従来のヘッドホンラインとは一線を画するものです。
FRPを多用したデザインを「安っぽい」と受け取るか「格好良い」と受け取るかは個々人の感性によるものですが、
これにより、従来機のファンとは異なる客層を掴み、ヘッドホン市場を広げられるのか、楽しみに見ていきたいと思います。

余談
生産国の話ですが、今回のAH-D7100、AH-D600等いずれも中国製でした。ヘッドバンドの左の付け根辺りを見ると生産国表示があります。
デノンは従来のフラッグシップAH-D7000についても中国で生産しており、それでいて安定した成果を出しておりますので、余程生産管理が上手く行われているというべきか、信頼出来る工場があるのでしょう。
一時は「安かろう悪かろう」の代名詞であったところが、いまや10万円を超えるフラッグシップ級の製品すら製造可能になっている。時代の変化を感じるところです。
[PR]
by katukiemusubu | 2012-07-21 22:35 | Ecouteur(ヘッドホン) | Comments(0)
<< DAコンバーター試聴会2012... Bialbero ε試作機試聴... >>