クルーズトレイン・ななつ星in九州は高いのか? コストパフォーマンスを考える。

最低で一人15万円(一泊二日スイート、二名利用の場合)、最高で95万円(三泊四日DXスイートA、一名利用の場合)。
JR九州が先日発表したクルーズトレイン「ななつ星in九州」の旅行代金です。
ニュースが入ってきた時には、一瞬、あまりの高価さに目を疑いましたが、よくよく考えてみると、このお値段、そこまで法外なものでは在りません。
一週間当たりの運営者の取り分を元に考えてみましょう。



c0124076_17443148.jpg
かなりの高額に思われるななつ星in九州ですが、果たして、このコストパフォーマンスは どれくらいのものなのか。
少し計算してみようと思います。
※写真は10月13日に行って来ました「ななつ星in九州」旅行説明会の入り口です。

ここでは、ななつ星in九州の第一期行程が三泊四日(火曜出発)・一泊二日(土曜出発)を繰り返すローテーションを採っていることから、一週間単位での計算を致します。
対するはJR東日本と北海道、第三セクター三社で共同運行している、豪華寝台特急カシオペア。ちょうどななつ星in九州と同じく、客車一編成のみの構成で、週6日運行する点でも同じです。
つまり、両者は一週間当たりの売上を計算することが出来ます。
(北斗星やトワイライトエクスプレスは編成数が多く、運行日も変動するため一概には比較が出来ないのです)

カシオペアのE26系客車は12両編成、ななつ星の新造客車は7両編成。
両者の編成両数の差は有りますが、それぞれの建造費用(調達費用)の総額も同じく30億円です。
ここでは、ななつ星とカシオペアが全室2名利用された前提に立ち、運営者の得る売上高を計算致します。

《ななつ星in九州・一週間の料金》
カシオペアは、ななつ星と異なり、旅館宿泊などのコースは有りませんので、料金全てが運営者の取り分となります。
一方、ななつ星には三泊四日コースでの旅館宿泊が有りますのでこれを引かねばなりません。
JR(運営者)の取り分を計算するためには、旅館代を差し引く必要があるのです。
ななつ星デラックス・スイートの宿泊先は「天空の森」。一泊15万円〜20万円程度の超高級リゾートです。
ななつ星スイートの宿泊先は「忘れの里雅叙苑」「妙見石原荘」。これまた、一泊3万2千円〜5万5千円程度の高級旅館です。
これの一泊二食の代金を引く必要があります。
恐らく実際には定価よりは安く上がっているものと思われますが、ここでは暫定的に各旅館のホームページ上に表示されています一人当たりの一泊二食標準価格を利用しました。

細かい計算式を示しますと以下の様になります。
ななつ星の客室は、スイート12室、DXスイートB(車中)1室、DXスイートA(展望)1室の計14室です。

ななつ星in九州《三泊四日コース》
1.スイート+「忘れの里雅叙苑」部屋指定なしコース(一泊二食付3万2910円の六部屋)の売上が、
一部屋当たり(38万円ー3万2910円)×2=69万4180円で、これを6掛けして計416万5080円。
2.スイート+「忘れの里雅叙苑」部屋指定なしコース(一泊二食付3万8160円の一部屋)の売上が、
一部屋で(38万円-3万8160円)×2=68万3680円。
3.スイート+「忘れの里雅叙苑」客室「椿」コース(一泊二食付4万8660円の一部屋)の売上が、
一部屋で(39万5千円-4万8660円)×2=69万2680円。
4.スイート+「妙見石原荘」の「石蔵」洋室コース(一泊二食付4万6200円の三部屋)の売上が、
一部屋当たり(40万円-4万6200円)×2=70万7600円で、これを3掛けして計212万2800円。
5.スイート+「妙見石原荘」の「石蔵」和洋室コース(一泊二食付5万5000円の一部屋)の売上が、
一部屋で(41万円-5万5000円)×2=70万9200円。
6.DXスイートB+「天空の森」の客室「霖雨の森」または「茜さす丘」コース(一泊二食付15万300円の一部屋)の売上が、
一部屋で(50万円-15万300円)×2=69万9400円。
7.DXスイートA(展望スイート)+「天空の森」の客室「天空」コース(一泊二食付20万1400円の一部屋)の売上が、
一部屋で(55万円-20万1400円)×2=69万7200円。
・これらを合計しますと、三泊四日コースの総売上が977万40円となります。

ななつ星in九州《一泊二日コース》
こちらは旅館宿泊がないため、全てが運営者の取り分となります。
1.スイート12部屋が、
一部屋あたり(15万円×2)=30万円で、十二掛けして360万円。
2.DXスイートB(一部屋)が、
一部屋あたり(20万円×2)=40万円。
3.DXスイートA(一部屋)が、
一部屋あたり(22万円×2)=44万円。
・これらを合計しますと、一泊二日コースの総売上が444万円となります。

そして、三泊四日コースと一泊二日コースの総売上を合算した「ななつ星in九州」一週間(実働六日)当たりの売上は、総計1421万40円となるのです。
なお、旅館代を引かなかった場合の総売上は1587万円です。


《寝台特急カシオペア・一週間の料金》
一方、カシオペアはどうでしょうか。
カシオペアは12両の編成の中にカシオペアスイート7部屋、カシオペアデラックス1部屋、カシオペアツイン67部屋、カシオペアコンパートメント1部屋を持っています。
これらを全て二人利用、始発から終点(上野〜札幌)まで乗るものとすると、
1.カシオペアスイート七部屋の売上が、
一人4万6360円で一部屋当たり9万2720円。七掛けして64万9040円です。
2.カシオペアデラックス一部屋の売上が、
一人3万8050円で一部屋7万6100円です。
3.カシオペアツイン六十七部屋の売上が、
一人3万4220円で一部屋当たり6万8440円。六十七掛けして458万5480円です。
4.カシオペアコンパートメント一部屋の売上が、6万4630円です。
これらを合計したカシオペアの一日当たりの売上は537万5250円。
カシオペアはななつ星と同じく週六日の運行ですから、一週間(実働六日)当たりの売上は六掛けして総計3225万1500円となります。

《計算の結果・・・》
計算の結果、おどろくべきことにカシオペアはななつ星in九州に比べて、
旅館代を引いた状態で約2.26倍、旅館代を引かないにしても約2.03倍の売上が見込まれることが明らかになりました。
繰り返しになりますが、両者の編成建造費用は同じく30億円です。
運営者にかかっているコストはほぼ同等と考えられますから、こんなに差があって大丈夫かと素人ながらに思わされます。
果たしてJR九州に利益が出るのか。

この巨大な売上差を出した原因は、客室数の差異です。
カシオペア全76部屋に対し、ななつ星全14部屋。
両者の車両数が違いますから、これを加味して一車両あたりの割合に直すと、
カシオペア6.3部屋/車両に対し、ななつ星2部屋/車両になります。
実に三倍以上の差異。
その三倍以上の空間を存分に使った客室と旅行を、ななつ星は、一泊あたりの価格差にして三倍以下で提供しています。
一人・一泊あたりの平均料金を算出しますとカシオペア3万5300円に対し、ななつ星9万4440円です(約2.68倍)。
しかも、ななつ星の料金は食事付きの料金ですから、食事が別料金のカシオペアとは異なり、三食(朝三回・昼四回・夕四回)及び、アフタヌーンティーなどの料金も含まれての価格です(ななつ星滞在中は、食事におけるドリンク以外のお金は殆どかかりません)。
すると、ななつ星とカシオペアの実質的な価格差は、もっと縮まってくるものと思われます。
つまり、享受できる空間や食事を含めてのコストパフォーマンス(費用対効果)を算出すると、ななつ星はカシオペアより費用対効果に優れる、言い換えてしまえばある意味「安く」すらあるのです。

とは言え、実際に支払う旅行費用そのものは、かなりの高額。
これを支払うか否かは、なかなか判断が分かれるところと思います。
しかし、一週間当たりの売上から言って、人件費やメンテナンス費、食事の原価などを捨象したとしても、
JR九州が「ななつ星in九州」をペイ(黒字化)できるまでに要する期間は最低でも211週間。約4年はかかります。
新幹線などを除けば、これだけ長期間をかけて事業を運用しようとする例は、なかなか見られません。
それだけの負担を背負って、彼らが実現しようとした「クルーズトレイン」という新たな旅の形態を体感するには決して法外な価格ではないと思われました。
[PR]
by katukiemusubu | 2012-10-13 17:46 | 生活一般・酒類・ウイスキー | Comments(0)
<< 音展2012雑感ーKORGのD... 最近のオーディオ雑感 MDR-... >>