平成25年(2013年)12月に始まったばかりのシューズブランド「RENDO」(レンド)。
浅草のアトリエへ行って、買い物をしてきましたのでレポートです。 写真の真ん中辺り、ビルの一階に、庇のかかった明るい一角が見えるかと思います。 ここがRendo Shoesのアトリエ兼ショップです。東武浅草駅から徒歩10分ほど。 直営店としての営業時間は、基本的に平日12時から20時までとの事です。 5月4日追記: 営業時間は13時から20時まで、不定休に変更となりました。 土日でも開いている場合があるそうです。HP確認のこと。 19時過ぎに訪問。 店を訪れると、RENDOの発起人である吉見鉄平氏、ご自身が応対してくれました。 せっかくなので検討している二つのモデル、どちらも見せてもらいます。 革靴のフィッテイングについて、足の測定や各種サイズ出しはもちろんの事、革製のソックシートによる微調整など、とことんまで付き合ってくれ、安心して買い物ができました。 まさに直販ならではのきめ細やかさで、RENDOの靴を検討している方で東京近郊にお住いならば一訪の価値有りです。 アフターケアについても、持ち込み又は郵送で対応してくれるとの事で安心感があります。 サイズ感を調整する幅出しなども無料で対応してくれるとの由。 ブランド開始から4ヶ月、ファーストロットの在庫も徐々に少なくなり、セカンドロットの入荷が待たれるところだとか。 セカンドロットの入荷は、ファクトリーの都合にもよるものの4月下旬から5月中旬くらいになるのでは、という事でした。 さて、今回購入したのはR7702・Punched Cap Toe OXford。 ストレートチップのキャップトゥ及び鳩目周りに穴飾りを施したモデルです。 フォーマルな見た目ながらも、パンチドキャップトゥが良い具合にくだけています。 甲革は国産カーフ(キップ)、中底、本底は牛革、つま先側のライニングは見たところ豚革でしょうか。 靴の価格は税抜き38,000円。箱付きで靴袋はなし。 ですが、革底はヒドゥン・チャネル仕様と凝った作りで、見た目の美しさにも寄与しています。 真鍮釘や塗装など、仕上げも丁寧です。 革底のほか、ダイナイトソールのものもラインナップされておりました。 All Aboutの飯野高広氏も言及されている点ですが、RENDOの靴はカカトから甲にかけての側面の押さえに優れています。 それは靴の中で足がしっかりとホールドされている為だと思いますが、その実現の為には、作り手が履き手の足の形を熟知していなければなりません。 その点、RENDOの吉見氏は、ご自身のパタンナーとしての経験から、履き手の足のデータを数多く保有しており、このデータを自身のブランドの既製靴づくりに応用したものと言えます。 吉見氏と話していて印象的だったのは、氏が「オーダーメイドのアプローチでレディメイドを創ろうとしている」という点でした。 オーダーメイド、すなわち注文靴の世界では、はじめに買い手の足があり、作り手は対象とする足の形に合わせて木型を用意し、靴を作っていきます。 レディメイド、すなわち既製靴の世界では、はじめに作り手の靴があり、買い手は対象とする靴と自分の足が適合するであろうか、試し履きをしながら探っていきます。 とはいえ、レディメイドも売れなければ意味が無い。 そこでレディメイドに際しては、誰の足にも適合するような足の甲が高く、幅が広い靴を作る傾向がどうしても増えてしまいます。 つまり、レディメイドの靴はまず確実に足が入るけれども、その足のフィット感が良いのかは甚だあやしい。 そういうものが出てしまいがちでした。 そこで吉見氏は、靴を作る段階で、現代の履き手の足にとって収まりが良いであろう木型を用意し、出来うる限り履き手の足へのフィット感に優れた既製靴をつくろうとするというアプローチを取りました。 はじめに合わせたい足ありき。たしかにオーダーメイド的な手法です。 その結果生まれたのが、ワイズE、かかとC相当のRENDOの靴です。 足の甲からカカトにかけて、二等辺三角形を書く様に絞りこまれているのがお分かりになるでしょうか。 他のシューズメーカーの靴とくらべてみましょう。 向かって左側の靴はヒロカワ製靴・Scotch Grainのオデッサラストを使ったモデル。 向かって右側にあるRENDOの靴と同じく、サイズは7 1/2です。 オデッサは比較的シャープな印象のあるラストで、ワイズも同じくEとなっています。 Eのラインがそのまま続くオデッサに比べ、RENDOの靴はEの足囲からカカトに向けて徐々に狭くなっているのが見受けられます。 捨て寸の差もあり、全長はオデッサの方が1.5cmほど長いのですが、注目したいのは履き口の形状。 オデッサは楕円に近い形状をしていますが、RENDOの靴はかかとに向け、ググっと絞り込んでおり、鋭角的な菱型に近い形状となっています。 またヒールカップの作りも大きく異なります。 見ての通りですが、RENDOの靴は足首に向けて吸い付くような傾斜を持っています。 こういった傾斜が目立たないオデッサに比べ、ヒールカップの全高は1cmほど高めになっています。 このような履き口のつくりやヒールカップの形状から、RENDOの靴はかかとを包み込む様なフィット感を実現しているのでしょう。 甲の高さについても同様で、二つの靴を水平に置いた上で横から見てみると、RENDOの靴の向こうにオデッサの甲が見え、オデッサの方が甲が高いことが分かります。 RENDOの靴は甲が低いため、足がきっちりと固定される印象です。 こうした甲の低さや踵の構造、土踏まずを支えるダブラー芯など諸々の要素が相まって、RENDOの優れた側面の押さえ、包み込まれるような収まりの良さを実現させたものと思われます。 もちろん、かなり凝ったつくりをしておりますので、甲高の方やかかとが大きめの方には難しい靴でもあります。 そこはオーダーメイド的なアプローチをした靴ならではの宿命というべきか。 但し、サイドエラスティック・モデル(R7703)は構造上、甲高の方のほうが適合的ですので、結局はモデルによるところでしょうか。 かつての足の甲が高く、幅が広いという日本人の足形が変化をみせるいま、現代的な足形に則した形態をまとって登場したRENDOの靴。 さて、実際に使ってみてどうなるか。逐次、このページにて報告予定です。 ※ 一つ付言しておきますと、スコッチグレインの靴が悪いと言っている訳ではありません。 万人の履き込みやすい靴をつくるのも一つの既製靴のアプローチですし、一定の足形を念頭において履き心地にこだわった靴をつくるのも一つの既製靴のアプローチです。 それぞれのアプローチに善悪はなく、好き嫌いがあるのみ。 ちなみに私はどちらのアプローチも好きで、どちらの靴も履いている、というわけです。 4月16日更新:履き慣らし1日目 着用8時間、5kmほど歩行。 かかとの押さえがしっかりとしているため、踵が浮くことがなくフィット感は上々。 比較的厚手の甲革、しかもタイトフィットで購入したこともあり、夕方になって足がむくんでくると流石に痛みが走ります。 この辺りは革が馴染んでくるまでの辛抱か。 帰り際、シューキーパーを探していたのですが、R&Dのオリジナルブランド「サルトレカミエ」のものが適合的でした。 ネジ式のSR-300が良いかなと思ったのですが、試みに同ブランド最高ラインの「Sarto Recamier × Nakada Last シュートリー」を入れてみると誂えたかのようにピッタリ。 甲の部分からかかとまで、隙間なく見事に収まります。革へのストレスも少なそうです。 実に良いとは思うのですが、4万円の靴に対し、3万円のシューツリーを入れるべきか否かは悩ましいところ。 5月4日更新:履き慣らし7日目 徐々に革が馴染んできたのか、走ってもズレを感じません。 甲革は国産のものですが、トゥキャップに鏡面磨きをかけてみると、なかなかどうして深みのある光沢が出ます。 手入れのしがいが有るというものです。 足がむくんで来た際の痛みも大分おちついてきましたが、やはり夜になると出てしまいます。 履いた状態で検証してみると、親指と小指のそれぞれが当たっている模様。 高さ的には余裕があったので、問題は、靴の幅かあるいは体重のかかり方か。 浅草RENDOへ相談に行くと、対応してくれるとの事でお願いしてきました。 さて、どう仕上がってくるのか。楽しみなところです。 12月16日更新:履き慣らし244日目 久々に更新。 パンチドキャップトゥ、完全に馴染みきっています。 この間、浅草RENDOで二回の調整を行ってもらいました。 一つ目はソックシートの追加。 足と靴の密着感を向上させる試みです。 前半分に、薄く梳いた革製のソックシートを入れてもらいました。 この結果、踵のみならず甲もしっかりと押さえられ、RENDO特有の側面の押さえの良さもあり、足全体に渡る自然なフィット感が実現されました。 二つ目は幅出し加工。 7日目更新の際に言及していた「親指・小指の当たり」への対応です。 吉見氏に見ていただくと「小指がつかえており、これが足の指全体のバランスを崩し、ストレスを与えているのではないか」との原因指摘。 確かに、私の足の小指は外側に曲がり気味ですので、その傾向はありそうです。 ではどうするか。 既製のストレッチャーを用いるのかな、と思いましたが、吉見氏曰く「いえ、もっと良い方法があります」との事。 少々時間を要するとの旨を了承して、お預けし、一週間後に受け取りに行くと仕上がっておりました。 見た目の幅は、補正前と変わった様には見えません。 「はて、どういう事かしらん?」と思いながら、足を通し、歩いてみてビックリ。 なるほど、指への圧迫感が薄れています。 どういう調整が為されたのか、不思議に思っていると、吉見氏の解説。 「靴を作る際に用いた木型(ラスト)の親指部分に、二枚ほど革を貼り付けたのです。 これをご依頼のパンチドキャップトゥへ、シューツリーの様に装入して一週間馴染ませました。 これにより親指部分に空間が出来、体重のかかり方も内寄りになります」 然り、体重が内側にかかる様になれば、外側の小指はつっかえから開放され、自由になります。 そして、つっかえが無くなれば、足の指全体もバランスを回復し、痛みが遠のきます。 見た目をほとんど損なう事無く、機能を調整する。 成る程、木型を用いた幅補正とは良い方法です。しかも、工房直売方式でしか行えない対応でもある。 実に興味深く思われました。 この調整以降、パンチドキャップトゥにはトラブルが生じておらず、現在に至るまで快適な履き心地を提供し続けてくれています。 二回の調整ともに、無料。 手間のかかる作業でしょうに、熱心に対応して下さり、頭が下がります。 フィット感を重視した設計、それを追い込む充実したアフターケア。 「履き手の足に合わせた靴にしていこう」という情熱が感じられるRENDOの靴、魅力的な選択肢です。
by katukiemusubu
| 2014-04-15 04:07
| 生活一般・酒類・ウイスキー
|
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