春のヘッドフォン祭2015長文雑感(感想レポート)

平成27年5月16日(土)・17日(日)開催。
フジヤエービック主催、春のヘッドホン祭り2015へ行ってきました。
ナイトホークやHE-1000、Dharma D1000など高級ヘッドフォンを試聴。

レビュー・評価などを記しおきます。
(→パイオニア・SE-master1の試聴レビューも一体化しました)




5月17日(日)16時30分ころ、中野サンプラザ(会場)に到着。
閉会まで、残すところ1時間半。
全ブースを満遍なく見ていくことは不可能ですので、超高級ヘッドホンを中心に試聴していく事にしました。

試聴機器はSONY D-E01(ポータブルCDプレーヤー)及びBialbero Proto1(ヘッドフォンアンプ)。
試聴音源はNHKドラマ「ハゲタカ」のサウンドトラックです(作曲:佐藤直紀)。


audioquest オーディオクエスト

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アメリカのオーディオケーブルメーカー、オーディオクエスト社。
最近はDAC兼ヘッドホンアンプ(DRAGONFLY)やヘッドホン(NightHawk)等、総合オーディオメーカーへと脱皮を遂げようとしています。
今回はヘッドホン・ナイトホーク(Night hawk)を試聴。

リキッドウッド(液化木材)のハウジングが特徴的なセミオープン型のヘッドホンです。
SONY MDR-CD3000などにも採用されたバイオセルロース振動板を採用。
7月発売予定で、予想価格は7万5千円前後とのことでした。

スパルタンな音質が特徴的。
低音寄りの音域バランスを持ち、オープンバック構造の影響か音場は比較的広め。
解像感もそれなりにあるのですが、どこか演出的です。
音の粒立ちが大きく、なんだか油彩を近接距離で見ている様な気分になります。
良く言えば質実剛健なのですが、メリハリがつきすぎて大味な印象。
3Dプリンタ成形のボディが美しいだけに悩ましいものです。
セミオープンでありながら音漏れは少ない事は優れたポイントです。
装着感も良好。


Final Audio Design ファイナルオーディオデザイン

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日本のヘッドホンメーカー、ファイナルオーディオデザイン(FAD)。
ステンレスや銅、真鍮など金属を多用した製品設計で知られるメーカーです。
今回は最上級機種SONOROUS X(10)を試聴。

ステンレスを用いた筐体に、アルミニウムのハウジング。
主要部分は殆ど金属により形成されており、630gという重さを持ちます。
かれこれ5年ばかりこの試作機(当時の名称はパンドラ)を聞いてきましたが、
装着感は改善されておりました。1時間程度の視聴なら首への負荷も少なそうです。

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面白いのは振動板で、チタンコーン(銀色の金属)をPET振動板(透明のフィルム)が包み込む形。
両者は接続されており、二つで一つの振動板を構成しています。
金属とPETではかなり特性も異なりますので、事実上の同軸構成というべきか。
BA+ダイナミックという特殊構造を用いたヘッドホン、PANDORAもそうでしたが、
相変わらず面白い発想をするものです。

濃厚芳醇な音質が特徴的。
音域はセオリー通りのピラミッドバランスで、解像感も高め。
振動板の繋がりもよく、音色も揃っています。
ただし、かなり脚色的な音。一音一音が非常に濃厚です。
言うなればフォアグラのソテー。
人を選ぶ傾向があるかなと思いますが、音の粒立ちは細かく、うまく脚色に乗せてくれます。

ソノロウスとは、英語で「響き渡る」という意味。
その名の通り、音場は広く、豪奢な響きが印象的なヘッドホンした。
お値段、63万円。


HiFiMAN ハイファイマン

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中国のオーディオメーカー、ハイファイマン。
HM-901を中心とした高音質DAPで有名ですが、平面磁気駆動方式を採用したヘッドホン、HEシリーズでも知られています。
今回はそのフラッグシップモデルHE-1000を試聴。

ナノメーター単位の超薄型振動膜を用いており、広帯域に対応。
8Hz~65kHzと圧巻のスペックです。
予価は40万円。国内代理店との契約が終了し、現在、日本へ入って来ていないハイファイマン製品ですが、近日中に復活とのこと。
木材と皮革、金属製のグリルが印象的なデザインで、ミッドセンチュリーテイストがあります。

勤倹誠実な音質が特徴的。
非常にクセのない、フラットな音域バランスが印象的で、大変に高解像度。
平面駆動らしく、その場の空気そのものが再現される様な塩梅で、
Head-Fiで「3Dホログラムみたいだ!」と音場の広さが絶賛されていたのも頷けます。
ジャンルを問わず、誰が聞いても「良い音だ」と確信できる仕上がりかと思います。
ナノメーター単位とはいえ、振動板にはコイルが蒸着されており、出力機器は相当な駆動力を要求されます。
高出力のヘッドホンアンプBialberoでも、70%程の出力が必要でした。


Enigma Acoustics エニグマアコースティクス

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アメリカのオーディオメーカー、エニグマアコースティック。
セルフバイアス式静電型スーパーツイーターSopranino(ソプラニーノ)で知られており、その透明感ある音質に定評があります。
今回は初のヘッドホンDharma D1000とアンプAtena A1を出展。

ダーマ(DHARMA)D1000は同社のセルフ・バイアス式静電スピーカー技術を応用した製品で、高音域を静電型、低音域をダイナミック型が担当するハイブリッド型ヘッドホンです。
帯域は15Hzから50kHz。
静電型(コンデンサー型)とはいえ、セルフバイアス式ですので電源は不要。
STAXの様に、専用ドライバーが必要というわけではありません。
ダイナミック型の振動板は和紙。ソニーのPFR-V1を思わせるものがあります。
デザイン自体もソニーのQUALIA Q10-MDR1そっくりで、思わず「似ていますね!」と言ってしまった程。

そういえば、アテナ(ATENA)A1もどことなくアップルG4 Cubeに似ている様な・・・。
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ともあれ既存のプロダクトデザインを上手く応用した仕上がりで、興味深いものがあります。
D1000についてはゼンハイザーHD800と同じ形式でのリケーブルが可能。
Atenaは用いず、手持ちのアンプで聴かせてもらいました。

端正優美な音質が特徴的。
音域バランスは高域寄りで、解像感もかなり高い。
非常に透明感ある音を奏でます。
それでも音に芯はあり、しとやかな振る舞い。
ドライバー間の齟齬も感じられず、なめらかな繋がりです。
いわば極限まで磨いた純米大吟醸酒。獺祭「磨きその先へ」の様な。
音場は広く、静電型らしい空気感の表現があります。

Dharmaとはダルマ。
非常に多義的な言葉(サンスクリット語)ですが、主要な意味は「法」です。
その名に違わぬ精緻な仕上がり。

AKG K340以来となる静電型ハイブリッドヘッドホン、D1000。
今少し筐体が洗練され、低域に量感があれば、完璧でしょう。
国内での販売はNOAH(ノア)が担当し、ヘッドホン祭での感想をフィードバック、製品版のチューニングに役立てるとのこと。
発売は年内を予定しており、予価は20万円とのことでした(米州予価は$1,200)。
「素晴らしい音色の美しさです。少し低域の量感がほしいところですね」とお伝えする。

製品版の試聴レビューはこちら。


Pioneer パイオニア

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日本のAV機器メーカー、パイオニア。
オーディオ部門はオンキヨーへ事業譲渡され、オンキヨー&パイオニア株式会社となりました。
傘下のTADを含む高級オーディオの行く末に気をもんでいましたが、フラッグシップヘッドホンSE-MASTER1が登場、健在の様です。

SE-Master1は、予価25万円。
TAD(テクニカルオーディオデバイセズ)と同じく、東北パイオニアでの製造となるそうで、ハンドメイド(手作り)。
振動板の主要部はマイクロメーター単位のアルミニウムで、エッジ部にはPEEKフィルム複合材を使用。
FADのSonorousの様な同軸風の構成ではありませんが、非常に手間のかかった製品となっています。
パイオニア30年ぶりのmaster型番ということもあってか、ヘッドホン祭会場では長蛇の列が形成。
会場での視聴はあきらめヨドバシカメラ秋葉原店で試聴させてもらいました。
プレーヤー・アンプ・音源は全く同じものを使用。

芳容華麗な音質が特徴的。
ほぼフラットですが、若干低域寄りの音域バランス。
オープン型ヘッドホンのヌケの良さを保ちながら、豊かな低域の量感を併せ持っており、正直、脱帽しました。
ゼンハイザーHD800程ではありませんが音場も広く、広大な空間に音を満たします。
HD800的な「ヘッドホンであることを忘れる」様な音場の広さというよりも、「ヘッドホンとしての音場拡大を突き詰めた」様な音場の広さ。
解像感も非常に高い。
その音色は少しく演出的な傾向があり、むっちりとした質感がありますが、鼻に付く程ではなく楽しく音楽を聞くのに適した味付けです。
丹念に作られた絹の反物を思わせる仕上がりです。


Campfire Audio キャンプファイヤーオーディオ

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アメリカのイヤホン・ヘッドホンメーカー、キャンプファイアオーディオ。
ポータブルヘッドホンアンプで高名なALO audio社のCEOが、新たに立ち上げたブランドです。
ヘッドホン祭には「Lyra」「Jupiter」「Orion」の三機種でもって参戦。

ライラ(lyra)は、ベリリウム振動板を用いたダイナミック型でセラミック筐体を採用。
淡い音色が特徴的です。バランスは良いのですが、もう少し量感があると好ましい。
ベリリウム振動板は1970年代にヤマハによって開発されましたが、製造過程における高度の毒性から衰退。
ポータブルオーディオでは、中国シャオミ社のイヤフォン・ピストン2やフランス・フォーカル社の開発中ヘッドホンに見られる程度です。
こうした失われつつある技術を用いてくれることに好感。

オリオン(Orion)は聴きませんでしたが、ジュピター(Jupiter)は聴きました。
ニッケルメッキを施されたアルミニウム切削筐体に、BAドライバーを4基搭載したマルチBA型イヤホンです。
Lowに2基、Highに2基の2ウェイ・4ドライバー構成。
3箇所のビスもデザイン上の特徴で丁寧な仕上がり。
非常に抜けの良い音質が特徴的で、量感も必要十分、大変好印象なイヤホンでした。
付属のレザーケースも格好良い。


ソニー

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ご存知、総合電機メーカー・ソニー。
ヘッドホン・イヤホンの試聴展示のほか、microSDXCカードの展示がありました。
そう、あの"高音質"SD カードSR-64HXAです。

ウォークマンを用いて普通のSDカードとの聴き比べが出来るということで、試聴。
このSDカードのアマゾンレビューは大喜利と化しており、私も読んで笑っていたクチです。
ビットレートも含め確認させてもらいましたが、全く同一の音源。カードのみが異なります。

では、試聴。
・・・参りました。確かに違いがあるのです。
具体的には中村製作所のNIP-01(アイソレーショントランス)を用いた時の様な音質変化。
音の新鮮味が増して、生々しい臨場感を実現せしめているのです。
アイソレーショントランス(ヘッドホンコンディショナー)の効果はノイズの低減ですが、SR-64HXAも同様。
うたい文句通りの性能があります。

ただし、これはあくまでオーディオ機器に接続した時のこと。
「スマートフォン等では他にノイズ発生源が多く、あまり効果は感じられないのではないか」との事でした。


その他

・マッキントッシュ(McIntosh)のMHP1000。見た目はベイヤーダイナミックT5pそのものですが、音はしっかりマッキントッシュ。レンジが広く、金管系には好相性。
・サトレックス(SATOLEX)のDH291-D1。フルデジタルヘッドホン。少しすっきりし過ぎている嫌いもあるが、非常に素直な音で、装着感も軽く良好。
・従前、10万円を越える超高級ヘッドホンについて、いまいち価格なりの音質向上が感じられず懐疑的な立場だったのですが、最近はピュアオーディオと同様、一定以上の水準を保ちつつもメーカーの色をも打ち出せるハイエンド機が増えてきた様に思います。カウンター・カルチャーとしてのヘッドホンオーディオの進化。
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by katukiemusubu | 2015-05-20 11:35 | Ecouteur(ヘッドホン) | Comments(0)
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