山の「立入禁止」をめぐる法学

山を歩いていると、ときおり見かける「立入禁止」の札。
これは如何なるものなのか、もし規制に反した場合はどうなるのか。
法的な観点から整理しました。



山の「立入禁止」を法的に分類すると、四つに大別されます。
1.災害対策基本法に基づく規制、2.自然公園法に基づく規制、3.私有地・公有地への侵入規制、4.設置管理者の権限に基づく表示、この四つです。
各々についてまとめてみましょう。

タイプ1:災害対策基本法に基づく規制
例 :箱根大涌谷や浅間山、口永良部島や御嶽山など
解説:災害対策基本法に基いて、市町村長(または都道府県知事)行う「警戒区域」の設定(63条・73条)、及びこれに伴う警戒区域内への立ち入り規制(入山規制)のことを言います。規制に反することは違法であり、違反者には災害対策基本法116条2号による刑罰が科されます。基本的に警戒区域の設定・運用は、気象庁の発する各種警報に基づいて行われており、山に関して言えば、火山警報に基づくものが多い印象です。
結論:侵入は違法。違反者には拘留刑または罰金刑。

タイプ2:自然公園法に基づく規制
例 :尾瀬(ルート外)、大台ケ原(西大台地区)など
解説:自然公園法に基いて、環境大臣(または都道府県知事)が特定の地域を「国立公園特別地域」(都道府県知事の場合は「国定公園特別地域」)に指定(20条)した場合に行われる、立ち入り規制のことをいいます。湿原については自然公園法20条3項16号、一般的な山岳については同23条3項柱書(特別地域内の利用調整区域)を根拠とし、指定された区域、つまり「特別地域内の湿原及び利用調整区域」への許可なき立入りは許されません。違反者には同法83条3号による刑罰が科されます。
結論:侵入は違法。違反者には懲役刑または罰金刑。

タイプ3:私有地・公有地への侵入規制
例 :白井差登山道(両神山)、大内院(富士山)、その他山中にある私有地・公有地
解説:一般に私有地・公有地への立入そのものは違法ではありません。問題は私有地や公有地の内でも、山小屋を含む建造物の囲繞地や入ることを禁じた場所、田畑(含ワサビ田)などへの立入は違法な「不法侵入」となりうる場合があるということです。不法侵入か否かは、囲繞地について「管理権者の意思に反するか否か」、入ることを禁じた場所や田畑について「正当な理由があるか否か」で判断されます。
結論:場合によっては侵入は違法。軽犯罪法1条32号、刑法130条など参照。

タイプ4:設置管理者の権限に基づく表示
例 :閉山期間中の登山道、廃道、閉鎖されている林道など
解説:上記3タイプに当たらない限り、原則的に立入は適法です。ただし富士山山頂周回線道路(お鉢巡り)の様な開山(山開き)期間のある登山道や、土砂崩れを被った雲取山大ダワ林道といった場所では、通行止めの措置が採られることがあります。これらへの立入も違法ではありませんが、通行止めの措置が取られている以上、登山道の設置管理者に管理責任はなく、万が一事故が生じた際には一切の責任を自分が負うことになります。
結論:侵入は適法(法的拘束力は無し)。しかし、事が生じた場合には自己責任100%であることに注意。

その他の規制として、林野庁(森林管理署)によるものや自治体独自の条例がありますが地方により大きく異なるため、事前の確認をおすすめします。
また本記事の内容は、歩行による通行を前提としたものであり、通行以外の行為(たとえば動植物採取など)や自転車を含む車両による通行については別の規制がなされることにもご注意ください。

タイプ1から3までは、言葉通りの「立入禁止」、侵入規制の問題でした。
一方、タイプ4は「通行止め」といった文言こそ似通っているものの、その内容の実質は責任の所在にあります。
たとえ登山道があったとしても、通行止めがなされている場合には、管理者に責任はなく、通行者が全責任を負う、完全自己責任の世界となります。
要はバリエーションルートや冬山登山、岩稜登攀などと同じ責任の構造となるということです。
山行保険などについても、一般的なものでは足らず、山岳登攀を対象としたものでなくてはならないことにご留意ください。
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by katukiemusubu | 2015-06-16 16:14 | 登山・トレッキング・温泉 | Comments(0)
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