ニッカウイスキー「余市ヘビリーピーテッド」「宮城峡シェリーカスク」レビュー

平成27年(2015年)9月1日、ニッカの新しいシングルモルトウイスキー「余市」「宮城峡」が発売されました。
これと同時に、各3,000本限定で「余市 ヘビリーピーテッド」「宮城峡 シェリーカスク」が発売。即時に枯渇。
限定品二種を飲む機会を持ちましたので、感想と評価を書き記します。




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〈商品情報〉

1.シングルモルトウイスキー 余市 ヘビリーピーテッド
700mlで、実売12,000円。アルコール度数は48度。
北海道余市蒸溜所産のモルトウイスキーのみを使用したシングルモルトウイスキーです。

そのコンセプトは「ヘビリーピーテッド(Heavily Peated)」。
つまりはピート(Peat=泥炭)を盛り沢山(Heavily)。
ピートとはウイスキーの特徴の一つ、スモーキーフレーバー(燻香・煙香)の元となるもので、
この使用量や用い方によりウイスキーのスモーキーさが大きく異なります。
今回の限定品では、このピートをたっぷり用いて麦芽を乾燥させ、これを原料として仕込んだウイスキー(ヘビーピートモルト原酒)のみを使用・ヴァッティングしています。
名称の通り、ピートを盛り沢山使用したウイスキーなのです。

朝の連続テレビ小説「マッサン」にも出てきた話ですが、余市蒸溜所の所在地・石狩平野は泥炭の産地。
海にも近く、独特の潮気を含んだピートが産出されています。
これを用いて製造されたウイスキーもまた、ピート香と共に潮気を持ち、他にない余市の個性となっています。
土地の環境を反映した、物語性のあるウイスキーです。

味わいはといえば、コンセプト通りのピーティー、スモーキー。
しかし、煙一辺倒と言うのではなく、潮気や華やぎ、層の厚い味わいを持っています。
驚いたのは加水時の変わり様。
非常にフルーティな甘味が現れ、その変幻自在ぶりに舌を巻きます。
ピートもそこまで強烈ではなく、万人向けと申せましょう。

2.シングルモルトウイスキー 宮城峡 シェリーカスク
700ml、実売12,000円。アルコール度数は48%。
宮城県宮城峡蒸留所産のモルトウイスキーのみを使用したシングルモルトウイスキーです。

そのコンセプトは「シェリーカスク(Sherry Cask)」。
ウイスキー熟成の鍵となる貯蔵樽(カスク)。
樽の種類は、素材(樫やミズナラ)や履歴(新樽や使用済み樽)などにより千差万別ですが、
その中でもシェリーカスクとは、かつてシェリー酒に用いられていた酒樽を言います。
これを用いて熟成させた原酒を使用して作られたウイスキーです。

シェリー酒(Sherry)とはスペインの酒精強化ワイン。
敢えて空気に触れさせることで酵母の発生を促し、通常のワインにはない深いコクと木の実の様な香りを獲得しています。
シェリー酒樽として使用されたカスクはウイスキーの熟成にも適しており、ウイスキーに対して俗に「シェリー香」と呼ばれるこってりとした香りを持たせるため、好事家に珍重されています。
ワールドウイスキーバイブル2015で世界最高評価を得たサントリー「山崎 シェリーカスク2013」もシェリーカスクを利用したシングルモルトウイスキーでした。

さて「宮城峡 シェリーカスク」の味わいですが、とても濃厚かつ強烈です。
シェリー香のうちでも、硫黄臭が際立ち、これに凝縮された甘味が続いています。
個人的には大好きな味わいですが、硫黄臭は苦手な方も多く、人を選ぶ商品と申せましょう。
高級ノンエイジらしい複雑な味わいと重層性が感じられ、舌で転がす喜びがあります。


〈テイスティングノート〉

1.シングルモルトウイスキー 余市 ヘビリーピーテッド
水色は透き通った琥珀色。明度は比較的高い。
上立ち香はピーティー、スモーキー。まさにコンセプトの通り。
基調香は、厚みのある煙香。
これが鼻腔をくすぐるが、しかし酒精感は抑えられており、マイルドに広がる。
口当たりも柔らかい。48度と思わせぬ滑らかな舌触り。
口の中で転がすと、余市らしい潮気が現れ、スモーキーフレーバーと相俟って複雑な表情を見せる。
味わいはオレンジピールの効いたビターチョコレートを思わせる。
但し、カカオ分は転がす毎に変化を見せる。
まったりとした長熟の原酒が感じられたかと思うと、さっぱりとした若い原酒の成分も感じられ、高級ノンエイジ品らしい重層性を持っている。
全体としてみると熟成年数12~15年の原酒がキーモルトか。
確かにヘビリーピーテッドではあるが、「オクトモア」の様に爆発的なピート感ではなく、あくまでも深く静かに、柔らかく。かすかなヨード香。
「余市20年」とは異なり、石油を思わせる様なオイリーなコクは感じられない。この点は残念。
しかし余韻はかなり長く、返り香が強いため煙を燻らすような楽しみがある。

加水をすると味わいは一転。
ピート香はその存在感を後退させ、パインアップルを想起させるトロピカルフルーツの香りが前面に現れる。
甘味があり、さっぱりとした余韻が続く。
どこにこんな味わいが潜んでいたのかと驚くほど。
無加水時の閑静な味わい、加水時の清涼感ある味わいと一度で二度楽しめるウイスキー。


2.シングルモルトウイスキー 宮城峡 シェリーカスク
水色は透き通った琥珀色。明度は比較的低い。
上立ち香は若干癖のあるシェリー香。コンセプトを突き詰めた印象。
非常に濃密で、硫黄を思わせる様なこってりとした香り。
口に含むと、蜜を思わせるトロリとした舌触りを持っており、しとやかに広がる。
アルコール度数は48度だが、刺激は控えめで、相当程度の熟成を感じさせる。
宮城峡らしく華やかな基調香を持ち、ドライフルーツの様な凝縮された果実味、そして和三盆糖を思わせるふくよかな甘さがある。
非常にリッチ。
以前ニッカが発売していた「宮城峡12年 シェリー&スウィート」に比べても味わいが濃厚に思われた。
熟成年数12年以上のシェリー樽原酒がキーモルトか。
終売した「宮城峡15年」に比べると華やかさは減退しているが、シェリー感は強め。
高級ノンエイジ品らしい複雑な味わいと重層性は、こちらにおいても健在。
ドライフルーツを思わせる果実味は、レーズン(干しブドウ)の様でもあり、林檎の様でもあり、洋ナシの様でもある。
余韻は長く、シェリー香の甘く豊かな残響が印象的。
ただしシェリー香のうちでも硫黄臭が際立つため、苦手な向きにはとことん合わないかと思われる。

加水をすると、より個性が際立つ。
甘味が強調され、舌触りもクリーミーに感じられる。
焦がしバターの様な香味に、ミルクティーを思わせる典雅な甘さ。


〈総評〉
万人受けする美味しさをもった「余市 ヘビリーピーテッド」と強烈な味で飲む人を選ぶ「宮城峡 シェリーカスク」。
背反する個性をもった二つの限定品ですが、しかし、どちらも価格なりの価値はあるものと思います(倍額出すかと言われると微妙ですが・・・)。
いずれも年数表記のないノンエイジ品(NA品)でありながら1本1万円を越える高級品。
しかし高級ノンエイジならではの裁量豊かなブレンド(ヴァッティング)が施されており、12年~15年ものに相当する熟成感も感じられます。
3000本というニッカウヰスキーのあまりに少ない限定数のせいでオークション等での高騰が相次いでいるのは悲しい出来事。
しかし、ツイッターなどを見ていると手頃な価格で提供しているバーも見かけます。
酒場の新規開拓と同時に飲んでごらんになるのも悪くありません。
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by katukiemusubu | 2015-09-02 12:59 | 生活一般・酒類・ウイスキー | Comments(0)
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