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京王高尾山温泉 極楽湯 訪問記(感想・口コミ)

構想5年、施工3年。
ついに開業した「京王高尾山温泉 極楽湯」へ行って来ました。

感想・レビュー等(口コミ)を書き置きます。



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「京王電鉄が高尾山に温泉施設を計画している」という話を聞いたのは、平成22年(2010年)の事。
もう5年も前のことです。
平成23年(2011年)に入ると高尾山口駅の駅前に温泉井戸が建設され、噂は現実のものに。
平成24年(2012年)10月にはボーリング調査(掘削)が開始されました。

しかし、高尾山は関東有数の地盤の固さで知られる場所です。
表層地盤増幅率は高尾山口駅で0.8、山上駅で0.6にも達します。
地震の揺れ(増幅)を半減させてしまう程の地盤の硬さ。
硬い地面では水は浸透せず、湯も湧きません。
当然、源泉の探索は難航する事になります。
当初の開業予定は「平成26年(2014年)夏」でしたが、同年に入っても温泉は見つからず、先行きは不透明でした。

平成26年4月30日、地下1,000mに待望の温泉を発見。
京王電鉄は、八王子市と共に高尾山口駅の周辺整備に着手することを発表しました(PDFリンク)
いわく「平成27年(2015年)春をめどに高尾山口駅駅舎のリニューアル、高尾山口温浴施設(仮称)の開業を目指します」。

平成27年春、予定通りに駅舎の改装が完了。
高尾山口駅新駅舎の建築家(デザイナー)は隈研吾氏。
氏の最近の建築は、上質な木材を多用して「和」のぬくもりを表現する事にあります。
個人的には「M2ビル(現:東京メモリードホール)」に見られた、内外の対比の鮮烈も好きですが、それは別の話。
日帰り温浴施設の建築家は未公表ですが、二度の延期を経て、平成27年秋に完成しました。
構想から5年。開発4年、施工3年で漕ぎ着けた温泉施設開業。

平成27年10月27日の開業から10日、
平成27年11月6日、京王高尾山温泉を訪ねました。

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改装なった高尾山口駅は、内側へ切り込みを入れた大屋根が印象的。
無機質な鉄筋コンクリートの柱も集成材でおめかしされて、リゾートの趣があります。
主題とされた木材はスギで、杉並木や巨木で知られる高尾山の地勢を読み込んだ演出となっています。

大和張りに羽目板張り、千本格子に小端立て張り。
木組みの博覧会の様な仕上がりです。
ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星を獲得し、年間260万人超が訪れるという高尾山。
海外からの来訪者も多く、日本の窓口として恥ずかしくないファザードとなりました。

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京王高尾山温泉は高尾山口駅の北隣にあります。
改札外の連絡通路でつながっており、ホームをくぐり階段で地上へと登ると到着です。

通路の主題とされた木材はタケで、竹壁に竹天井。
節の不規則性が効いており、間接照明と相まって厳粛な雰囲気をたたえています。
隈氏が設計した根津美術館(南青山)でも採られた手法で、
駅から温泉場へ、場面転換の役割を果たしています。
なおエレベーターは無いため、車椅子の方は駅を出て回りこまねばならず、少々不親切な設計です。

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階段を登り切ると、線路と同じ高さに到達。
プラットホームから10mもない場所に温浴施設があるのは、
関東ではココと水沼駅くらいなものでしょう。

京王高尾山温泉 / 極楽湯はその名の通り、スーパー銭湯「極楽湯」のフランチャイズ店です。
とはいえチェーン店にありがちな画一的な外見とは一線を画しており、
高尾山口駅の隈研吾デザインを援用した、和モダンな仕上がりとなっています。
一階には差し掛け屋根(下屋)、二階には入母屋屋根が掛けられており、お金のかかった構造です。

内部にはお食事処(レストラン)やほぐし処(リラクゼーション)があり、京王グループが運営。
特にお食事処は「カレーショップC&C」で知られる「レストラン京王」の担当で、地場産品を用いたオリジナルメニューが目白押しです。
京王グループの総力を挙げてのリゾート開発と申せましょう。

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館内に設けられた高尾山口駅の発車時刻表モニター。
駅隣接の日帰り温泉らしいサービスです。
岩手の温泉付き駅舎「ほっとゆだ駅」の浴室内信号機を思わせるものがあります。

とはいえ、流石は東京と言うべきか。
ほっとゆだ駅は2時間に一本でしたが、京王高尾山口駅は10分に一本のペースで発着時刻が並んでいます。
驚くべきハイペース。

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内装は極楽湯チェーンによくあるウッディなデザイン。
しかし立地条件を反映して、登山用ザックを入れるための大型ロッカー(一階)やお土産処(一階フロント前)など観光地仕様にチューンナップされています。
自販機コーナーの牛乳は明治牛乳ですが、多摩産にしてくれれば嬉しいところ。

その他、12畳程のうたた寝処(一階・男女共用)や
有料マッサージチェアのある休憩コーナー(二階・休憩所)、貸座敷(一階・定員12名×2室)もあります。
特に貸座敷は1時間単位での当日時間貸し(600円/時間)に対応しており、グループ登山の休憩などにも便利です。
平成17年(2005年)の東京都調査によれば、高尾山の入山者のうち山頂まで登る人(登山者)の割合は67%。
需要はありそうです。

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では、温泉へ参りましょう。
京王高尾山温泉のお風呂は男女ともに二階にあり、階段またはエレベーターで上ります。
バリアフリー対応はしっかりとなされており、足腰の弱い方も安心です。

男女ともに同様のレイアウトで、内湯が3つに外湯が4つ。
これに高温サウナがついています。
写真撮影は不可ですので、画像は公式サイトを御覧ください。

まずは、本施設の目玉「天然温泉 露天岩風呂」からスタート。
「あつ湯」(屋根付き)と「ぬる湯」(屋根無し)で構成された2つの露天風呂です。
温度は熱湯で43度程度、ぬる湯で40度程度。
トロリとした肌触りの温泉で、湯冷めしにくく、保温効果が感じられます。

脱衣所で掲示されていた成分分析表によりますと、京王高尾山温泉はアルカリ性単純温泉。
単純温泉とは、溶存物質量が1000mg/1kg以下の温泉を指す言葉です。
京王高尾山温泉の総溶存物質総量は182.5mg/1kg。
少ない様に見えますが、
それでも一般的な入浴剤(200Lの湯に対し20g=1kg当たり約100mg)の倍近いスペックとなっています。

法律上「温泉」と言うためには、
規定物質が一定以上あるか、又は源泉温度が25度以上あることが必要です。
温泉成分表を見るに、本源泉は、19の規定物質のどれについても温泉法の定義を満たしてはいません。
しかし源泉温度が26.2度あり、温泉と表記することが可能なのです。

特記事項としては、44.5mgのメタケイ酸水素イオンを含んでいることが挙げられます。
メタケイ酸とは保湿効果のある物質。
PH9.9という比較的強めのアルカリ性(PH10を超えるものを強アルカリ性という)とあいまって美肌が期待できそうな泉質です。

湯量(動力揚湯量)は300リットル/分と景気の良い数値。
この湯量であれば、源泉掛け流しかな、と期待したのですが、残念ながら循環式です。
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温泉分析表の右端に「循環ろ過装置を使用しております」と書かれておりました。
また分析表によれば塩素投入(消毒)もなされており、若干の塩素臭あり。
多数人の利用が想定される施設ですから、衛生管理上、循環・消毒ともに致し方のない事でしょう。
雑菌が死滅する強酸性泉ならば兎も角、アルカリ性泉では衛生対策は必須です。

素晴らしいのは加温をしているのに無加水である事。
恐らくは熱交換器を使用しての加温なのでしょう。
湯量から言って掛け流し・循環の併用方式でしょうから、
豊富な湯量を用いて無加水でいてくれれば、それで良いのです。
循環しているとはいえ、混じり気なし。純度100%の温泉が楽しめます。

比較的薄口で無味無臭、微弱な白色を含んでいますがほぼ透明です。
肌触りは温度によって変化し、熱湯の方がトロミを感じられます。
入って5分もすれば、肌の油脂や老廃物はすっかり消失。
肌はしっとりスベスベとなり、見た目にもきめ細やかです。
柔らかい湯の質感に「ああ、温泉に入っているなぁ」という充足感があります。

泉質から言って深層地下水型の温泉ですが、1000mで26℃というスペックは、地下増温率(100m毎に3℃上昇)から見て自然な数値です。
火山性・酸性の温泉は、その地理的・化学的性質により周りの物質を溶解し、包含物質量の多い温泉となりますが、その分、刺激的で長湯には向きません。
一方、本源泉の様な非火山性・アルカリ性の温泉は包含物質量は少ないものの、その分、低刺激で長湯にも適しています。

あつ湯と水風呂を往復して温冷浴を楽しんだり、あつ湯とぬる湯をはしごして湯触り(ぬめり)の違いを発見したり。
近くには休憩用の椅子もあり、じっくりと体感できる温泉となっています。
熱湯浴槽で8人ほど、温湯浴槽で12人ほどが余裕を持って入れるサイズです。

お次は「座り湯」へ。
露天に設置された椅子型の風呂で、全部で四席があります。
肘掛けの幅も広く、人と隣り合っても手がぶつかるという事はありません。
肩から腰にかけて湯が流れ落ちており、ヘッドレストも完備。
足元には湯溜まりがあり、真冬でもゆるりとすごせる事でしょう。

成分分析表の表記によれば、使用されているのは沸かし湯ではなく温泉。
そのせいか、背中が揉みほぐされる様な感触があり、心地の良い浴槽となっています。
正面には稲荷山方面の展望がのぞまれ、紅葉の高尾山を堪能することが出来ました。

続いて、「露天炭酸石張り風呂」。
その名の通り、石張りの人工炭酸泉です。
浴槽のキャパシティは15人ほど。
露天風呂でも高い位置にあり、高尾山周辺の風景が望まれます。

沸かし湯に炭酸ガス発生装置を組み込んでいるのですが、その性能の良さに刮目。
よくあるスーパー銭湯の人工炭酸温泉とは段違いの泡付きの速さです。
入って1分後には全身が泡に覆われるほど。
通常の炭酸ガス発生装置は1000ppmを目安にガスを作るのですが、
本施設のそれは、通常の倍、2000ppm程度あるのではないか。

流石に世界有数の天然炭酸泉「みちのくの湯」(青森県・4004ppm)には劣るものの、
人工の二酸化炭素泉(高濃度炭酸泉・ラムネの湯)では、はじめての濃度でした。
温度は38℃前後、体温(不感温度)に近く、身体に負担をかけることなく温浴を楽しめます。

炭酸ではありませんが、
半露天・半内湯「檜風呂(マイクロバブル風呂)」も面白い出来栄えです。
15人は入れるであろう総檜造りの浴槽に、なみなみと沸かし湯が満たされ、マイクロバブル(微細気泡)発生装置が稼働しています。
マイクロバブルとは直径50μm以下の微小気泡のことで、通常の気泡とは異なり水中に長く留まる性質を持ちます。

そのため空気と水だけで生成されているにも関わらず、湯が白濁して見え、ミルク風呂の様な仕上がりになります。
微小気泡は毛穴よりも小さく、肌に触れるとブラッシングやマッサージの効果があるため、全身洗浄の効能が期待されます。
しっとりとした肌触りで、木造風の湯屋と相俟って、湯治場の面持ち。

唯一、完全に屋内にある暖浴槽が「替り風呂」です。
名前通りの週変わりのお風呂で、この日は「甘草エキス配合の湯」という桜色の湯でした。

天然温泉に人工温泉、マイクロバブルに替り風呂。
どれをとっても単なる沸かし湯ではありません。
京王高尾山温泉・極楽湯に感心するのはこの点で、決して大きくはない施設でありながら、
湯使いに趣向を凝らし、日本の温浴文化・銭湯文化をコンパクトにまとめています。

とはいえ、現代化はなされており、
洗い場ではノンシリコンシャンプーやボディーソープが備え付け。
洗い場の各席は仕切りで区切られており、隣人の水しぶきがかかる事を抑止しています。

そして「サウナ」と「水風呂」。
水風呂の浴槽は深さ60cmほどと深めの作りで、17度と水温も低く、しっかりと肌を引き締めてくれます。

またサウナには、本場フィンランド製の「METOS(メトス)ikiサウナ」を採用。
ドライサウナ(乾式)の他、ロウリュやアウフグース(湿式)にも対応した高級サウナ機器です。
金網に香花石(サウナ石)が積み上げられたタワーの様な外見が特徴的。

都内では錦糸町「楽天地スパ」(入浴料2,400円)に設置されていますが、
まさか入浴料1,000円の施設で見るとは想定しておらず、思わず「あっ!」と声を上げました。
現在は乾式サウナとして85度前後での運転が為されていますが、
折角のikiサウナ、落ち着いてきたら湿式サウナ(スチームサウナ)としての運転も為されることでしょう。
今からが楽しみな設備です。

脱衣所にはロッカーが約200台。
小型ロッカーと中型ロッカーがあり、自由に選んで使えます。
中型(20Lリュックサックが収まるサイズ)が数多く配置されており、行楽客の需要に対応した形です。
ロッカー・靴箱ともに鍵式で、特にコインを必要としないので、一々小銭入れを取り出す必要もなく手間が省けます。

鏡台にはドライヤーと耳掻きが装備。
タオルは付いていませんので、購入かレンタルが必要です。
シャンプーとリンス、ボディーソープは備え付けがあり。
化粧水等のアメニティは、男湯・女湯ともに付いてはおりません。
浴場内には給水器があり、火照った身体を冷ましつつ湯浴みをすることが出来ます。

食事処では、オリジナルカレー(680円・ミニサラダ付)をいただきました。
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地場産にこだわり、東京X豚を使用したカレーで、コク深くスパイシーな仕上がりになっています。
中辛と辛口の間くらいの辛さ。
レストランはセルフサービス式で、調味料も充実しています。

東京X(トウキョウX・TOKYO X)とは、名前のごとく主に東京都内で養畜されているブランド豚で、
美しい霜降りと素晴らしい香りをもった豚肉として知られています。
生産量が大変少なく、ほとんど都内で消費されてしまうため「幻の豚肉」とも呼ばれますが、
こうして恒常的に、しかも手頃な価格で食べられるのは実に良いことです。
今のところX豚の使用はルウのみの様ですが、トッピングのトンカツなどにも拡張して欲しいところです。

特に時間制限はなく、何度でも入浴できるため、うたた寝処で休んだ後、再度入浴。
周囲の紅葉を楽しみ、極楽湯を後にしました。

開業当初ということもあり、休日には入場規制がかかるほどの混雑具合という京王高尾山温泉。
スタッフの方に話を伺うと、「朝のうちは、お客様が比較的少なく、ゆっくり出来るかと思います」との事。
夜明けとともに高尾山を登り、午前中から温泉三昧というのが最適のプランでしょうか。

循環式とはいえ天然温泉と、豊富な変わり風呂を楽しめる京王高尾山温泉極楽湯。
「高尾の湯ふろッぴィ」と共に、高尾山観光におけるオススメの温泉施設が誕生しました。


<施設情報>
名称:京王高尾山温泉 極楽湯(KEIO TAKAOSAN ONSEN / GOKURAKUYU)
住所:東京都八王子市高尾町2229-7
電話番号:042-663-4126
営業時間:8時〜23時(最終受付22時)
休館予定:施設点検により臨時休業の場合あり。原則、年中無休。
入館料:中学生以上1,000円(シーズン料金1,200円) 小学生以下500円(シーズン料金600円)
回数券:10枚つづり8,000円(一人あたり800円)・シーズン中も使用可・利用期限1年6ヶ月
by katukiemusubu | 2015-11-08 16:34 | 登山・トレッキング・温泉
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