ニッカウイスキー「ブラックニッカ ブレンダーズスピリット」 レビュー

ニッカウヰスキー「ブラックニッカ」発売60周年記念商品「ブレンダーズ・スピリット」を購入しました。
感想・評価など、書き置きます。



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<商品情報>
2016年11月1日(火)発売。
1956年デビューのウイスキーブランド、「ブラックニッカ」の60周年記念商品です。

容量700ml、アルコール度数は43度。税抜2,500円。
限定商品で、ニッカウヰスキーのプレスリリースによると総生産本数は144,000本となっております。

1956年に蒸留された余市蒸留所産の60年もののシングルモルト原酒のほか、
25年以上熟成された旧・西宮工場産のカフェグレーン原酒、
ディープブレンドでも用いられた新樽熟成の余市モルト、
2015年の限定商品でも用いられたシェリー樽熟成の宮城峡蒸溜所産モルト、
これらが使用原酒として公表されております。

驚くべきは、
60年熟成の超長期熟成原酒の使用と
1990年に閉鎖された西宮蒸溜所のグレーン原酒の使用です。

ウイスキー会社ですから、長期熟成酒を保有していることそのものは当然なのですが、
まさか、ブラックニッカの様な低〜中価格帯の商品に投入してくるとは。

1956年当時、余市蒸溜所で用いられていたウイスキー樽のサイズは500Lだったはず。
すると、天使の分け前を捨象した容量は500,000(50万)mlです。
これを仮に最低本数として、1樽開栓するとすれば、限定数14万4千本の一本あたり、約3.5mlの60年物原酒が使用されていることになります。
実際には、エンジェルズ・シェアにより容量は半分以下になっている筈でしょうから、1本あたりの使用量は1mlくらいとなりましょうか。

2011年にサントリーが発売したシングルモルトウイスキー「山崎50年」の価格は700ml、57度で100万円でした。
これを1ml(ミリリットル)あたりの価格に敷き直すと、1,428円になります。
今回用いられた「余市60年」の価格を「山崎50年」と同程度と考えると、
使用された1mlだけで商品価格の60%を占めることになります。

これに長期熟成グレーンや余市・宮城峡の各モルトが加わるのですから、
相変わらずと言うべきか、ニッカ特有の、採算をどこかに放り投げた様な価格設定です。
なんと贅沢な商品でしょうか。
(ちなみに「山崎50年」(限定150本)の価格は高騰しており、最近のオークション価格は定価の5倍となっています)

ブラックニッカらしく、カフェグレーンの優しく甘い香りが印象的。
キーモルトはヘビーピートタイプの余市モルトであり、優しい香りの中に若干の潮気が感じられます。

驚くのは口に含んだ後。
円熟という言葉が似合う、まろやかさな口当たりに、長期熟成酒をふんだんに用いていることを確信させられます。
舌で転がせば、余市のピート原酒由来の苦味、宮城峡のシェリー原酒由来のなめらかな甘味、カフェグレーン原酒由来の豊満なコクが次々と姿を見せ、百花繚乱の趣き。
さながらニッカの味標本、一口で味わう展覧会の様です。

最後は穏やかに、ピート由来の煙香(スモーキーフレーバー)がふわりと全てを覆って行きます。
超長期熟成酒の効果でしょうか、余韻は非常に長く、20年熟成のシングルモルト並みのロングトーンです。

限定商品だからこそ出来た、プレミアム原酒を総動員したブレンデッド・ウイスキー。
「ブレンダーズスピリッツ」の名の通り、ニッカ・ブレンダー陣の鬼気迫る気合が感じられる中価格商品です。

もちろん基調はブランド名の通り、「ブラックニッカ」のそれなのです。
しかし、その基調の間から顔を覗かせる60年という年月の断面。
ウイスキーを飲み慣れている方であればあるほど、その様々な個性に気が付き、楽しめる商品と申せましょう。

NHKドラマ「マッサン」を端緒とする日本のウィスキーブームにおいて、
ニッカは需給調整に失敗し、サントリーの囲い込み戦略に屈し、長期的には敗北しました。
(年数表記モルトが全滅し、プレミアム市場をサントリーに総取りされた惨状は「敗北」と評する他ありません)

おそらく「ブラックニッカ ブレンダーズスピリッツ(BNBS)」とは、
「それでも真摯なウイスキー造りを諦めない」という彼らの叫びなのでしょう。


<テイスティング・ノート>
水色は冬の針葉樹を思わせる紅褐色。褪せた風合いが、年月の経過を感じさせる。
上立ち香は洋梨を思わせる甘い香り。優しく深い。
よくよく香りを聴くと、ストロベリーを連想させる爽やかな香味の後に、密やかな潮気。
泥土層が顔を覗かせている。
口にふくむとカカオを思わせる苦味とコク。そこに果実味が加わり、良質なビターチョコレートの様。
舌で転がすと硫黄を思わせるシェリー樽の芳香。ふくよかでなめらか。官能的。
しかして、これらの苦味も、香りも、豊かな甘味の中に収斂されて行く。
余韻は非常に長く、穏やかに続く。甘味の中に波の如くあらわれる燻香。
寄せては返し、寄せては返す。ゆるやかに回る、六十年という歳月の万華鏡。
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by katukiemusubu | 2017-02-09 00:00 | 生活一般・酒類・ウイスキー | Comments(0)
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