【レビュー】ニッカウイスキー「ブラックニッカ クロスオーバー」

ニッカウヰスキー「ブラックニッカ」シリーズの数量限定品、「ブラックニッカ クロスオーバー」を購入しました。
感想・評価など、書き置きます。




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<商品情報>
2017年5月23日(火)発売。
1956年デビューのウィスキーブランド「BLACK NIKKA(ブラックニッカ)」の限定版第二弾です。

容量700ml、アルコール度数は43度。税抜2,000円(メーカー参考価格)。
16年11月に発売され17年3月に再販された限定版第一弾
販売予定数量は「ブレンダーズスピリット」の初期出荷より1万本以上少なく、132,000本です。

その味わいはJazzy(ジャジー)。
ジャズの即興演奏じみた掛け合わせで、二つのモルトが、変化に富んだ味わいを奏でます。

商品コンセプトの「Crossover(クロスオーバー)」は、
掛け合わせ、交差、交錯、横断などの意味を持つ多義語です。

そして、その名の通り、本商品では、
余市蒸溜所の”ヘビーピートモルト”と宮城峡蒸溜所の”シェリー樽モルト”、
二つの蒸溜所の代表的なモルトウイスキーが掛け合わされています。

通常、ブレンデッドウイスキーを作る際、
骨格となる味を構成する「キーモルト」は一種類であることが原則的です。
それは味わいの纏まりを良くし、齟齬を無くすためですが、
ニッカのブレンダー陣がそれを知らないはずはなく、今回の商品は、
その基本原則を分かっていながら、”あえて”確信犯的に二種類のモルトウイスキーを「キーモルト」に据え、
両者をぶつけ合い、その対峙を楽しむという手法が取られたものと言えます。

ここで対峙するのは、両蒸留所の代名詞とも言える銘酒、
余市蒸溜所「ヘビーピートモルト原酒」と宮城峡蒸溜所「シェリー樽熟成原酒」。

「ヘビーピートモルト原酒」はヘビリーピーテッドとも呼ばれ、
つまりは、ピート(Peat=泥炭)を盛り沢山(Heavily)使用したウイスキーです。
モルトウイスキーの原料となるのは麦芽ですが、
泥炭を炊いて麦芽を乾燥させることで、力強く・辛く・スモーキーな味わいを持ち得ています。

もう一方、
「シェリー樽熟成原酒」はシェリーカスクとも呼ばれ、
貯蔵樽(カスク)にワインの一種・シェリー酒の樽を用いて寝かせたウイスキーです。
ウイスキー熟成の鍵となるのは、この貯蔵樽(熟成樽)ですが、
シェリー樽を用いて熟成を重ねることで、柔らかく・甘く・華やかな味わいを持ち得ています。

「おだやかな調和を、決して期待してはいけない。」という刺激的な宣伝文句の通り、まさに対極の個性を持つ、二つのキーモルト。
骨太vs華麗とでも申しましょうか。
普通にブレンドしたら、お互いの個性が喧嘩してしまい、味のバランスを損なった商品となってしまいそうです。

しかし飲んでみて、びっくり。
ニッカの誇る余市モルト(ヘビーピート)と宮城峡モルト(シェリー樽)とが、お互いの個性を際立たせつつ、ある種の連携をもって味わいを奏でています。

非常に面白く思ったのは、飲む温度による違い。
温度によってメインとなるキーモルトが異なるのです。

常温・無加水(ストレート)で飲むと、宮城峡が前に出るふくよかな味わいですが、
低温・加氷(ロック)で飲むと、ぐぐっと味が引き締まり、余市が基調となります。
中温・加水(トワイスアップ)はその中間的な塩梅。

なるほど、製品サイトが「ロックでも飲んでみて欲しい」と訴求する訳です。
低温から常温へ、氷が溶け、温度が上がるに従って、味わいが刻々と変化して行きます。

おそらく、この変化は計算づくの設計でしょう。
ニッカブレンダー陣営の、卓越した技術力と発想が光る商品でした。

超長期熟成原酒を使用した「ブレンダーズ・スピリット」に比べれば、
若さが目立ち、どこか刺々しい面も感じる、この「クロスオーバー」ですが、
実にトリッキーで、スリリング。面白いウイスキーと言えます。

いわゆる”ブラックニッカらしい”グレーンの円やかさが感じづらく、
宣伝文句の通りというべきか、穏やかな調和など、どこにも無い。
しかし静的な調和を失った代わりに、躍動的な変容を手にしており、非常に個性的なお酒です。

穏やかな調和と円熟味の元、複雑な個性が混ざりあった味わいがスーッと伸びてゆく
「ブレンダーズスピリット」は交響楽的と例えることができますが、
激しい躍動感と絶えざる変化の元、個性が交錯するままに一つの味わいを構成する
「クロスオーバー」はジャズ的と例えることができそうです。

万人向けに「美味しい!」といったお勧めは致しかねますが、個人的には好ましいウイスキーでした。

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<テイスティングノート>
水色は鮮やかな新緑。五月の朝、その陽射しを思わせる。
上立ち香はモルティ。トーストした食パンの様な香ばしさ。
アルコールの揮発が強く、比較的熟成年数の若いブレンドと感じられる。
基調香は熟れた果実。バナナやパパイヤ。
若干の硫黄臭を含み、実に宮城峡のシェリーらしい味わい。
口当たりは刺激的。喉奥を焼くドライテイスト。
全体としては、まったりとした味わいながら、ピリリとした辛さがリズムを刻む。
一方、ロックで飲むと、余市の個性がぐっと前に出る。
上立ち香はスモーキーとなり、基調香はリンゴを思わせる軽やかさ。
ライトテイストでフルーティー。温度と加水率の変化に非常に敏感。
含み香は一貫してスモーキー。
この煙香が、おもちゃ箱をひっくり返した様な味わいに一定の統一感を与えている。
余韻は太く、力強く、短い。


・2015年9月に各3,000本限定で発売されたシングルモルト・ウイスキーのレビュー記事です。
・商品価格は1本1万円超と大幅に異なりますが、今回のクロスオーバーのネタ元とも言える商品です。
・しかしまあ、この二つを本当に掛け合わせるとは思わなかった…。

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by katukiemusubu | 2017-05-23 15:10 | 生活一般・酒類・ウイスキー | Comments(0)
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