Philips Electronics 社のヘッドホンFidelio L1を個人輸入しました。
Fidelio L1はフィリップスの新たな旗艦ヘッドホンで、昨年のIFA2011で公開された商品です。 先日のIFA2012では、本年5月からの欧州市場への投入が予告されました。 フィリップス・ジャパンに尋ねてみると、日本への導入は未定とのこと。 とはいえ、製品の説明書には日本語での記述もありましたので、将来的には国内でも発売される事でしょう。 2012年9月25日追記: フィリップス・ジャパンより、Fidelio L1及びM1の国内発売が発表されました。 L1は29,800円、M1は24,800円との事。10月上旬の発売予定です。 M1は兎も角、フィデリオL1はこの価格帯において、 他に類をみない質感を持つヘッドフォンですので、是非一度ご覧になることをお勧めします。 フィリップスは1891年創業、ヨーロッパ有数の電機企業です。 オーディオ・ビジュアル部門にも造詣が深く、ソニーと共にCD(コンパクトディスク)を開発した事でも知られています。 一時期はマランツの親会社でも有りました。 同社は70年代~80年代、いわゆるオーディオ黄金期において、エレクトレット・コンデンサー型ヘッドホンN6325など魅力的なヘッドホンをラインナップしていましたが、その後は比較的低価格帯の商品に注力、いわゆるHiFiオーディオの世界からは遠ざかっていました。 そのフィリップスが昨今のオーディオ動向に対応し、久々にHiFiオーディオの世界に復帰を宣言したのが、一昨年のベルリンIFA2010でのこと。 以降、同社は上位のオーディオ製品群に「Fidelio」フィデリオの名を与え、スピーカーその他の商品をラインナップしていきます。 そしてIFA2011では、先に発表されていた密閉型のM1に続き、フラッグシップ・ヘッドホンとしてFidelio L1が発表されました。 Fidelio L1はセミ開放型、駆動方式がダイナミック型のヘッドフォンです。 振動板径は40mm、マグネットには高磁束密度のネオジウム磁石が使用されています。 イヤーバンド、イヤーシェル(外殻)、シェルを可変させるヒンジ部分までアルミニウム合金で形成され、ヘッドバンドは本革にステッチというこだわり様。 金属部分が多く、ずっしりと手に馴染む筐体は、しかし、3万円前後のヘッドホンとは到底思えない高級感を保持しています。 イヤーパッドは合成皮革製。内部素材には形状記憶の低反発フォームが採用され、快適な装着感を実現しています。 このイヤーパッドのつけ心地は本当に素晴らしく、3時間以上着用していても痛くなることが有りません。 ヘッドバンドにも厚いパッドが入っていますので、頭頂部の圧迫感もなく、そういった意味でも快適です。 何より金属と革のコントラストが鮮烈で、調整機構のダイヤルやコードという細かな部分までもデザインが行き届いており、なんと言うべきか、実に美しいヘッドホンです。 ATH-W2002が木の美しさを、YH-5Mが機能美を、それぞれ表現しているとするならば、Fidelio L1が表現するのは構築の美でしょうか。 Fidelio L1は無駄な装飾やロゴを加えることを極力避けつつ、 選び抜かれた構成部品、その異なる素材感を巧みに組み合わせて、ハッとさせられる程の端正さを備える事に成功しています。 そして、音も見た目に反さず、整った出音です。 ハウジングの真ん中にはきめ細やかなアコースティック・グリルが備えられて、空気の出入りを担っています。 このアコースティック・グリルが優れものでして、外部の空気を取り入れつつも、遮音性と音漏れの防止を同時にやってのけます。 オープン型のヘッドホンの場合、外部の空気が取り入れられる為、名前の通りの開放的な音場を提供することが出来るですが、その分、遮音性が悪く、外部の騒音が入ってきてしまったり、音漏れがするという欠点が有りました。 一方で、クローズド型では遮音性高く、密閉された空間でドライバを鳴らせば良いので、比較的容易に重低音を実現することが出来ました。しかし、密閉空間であるが故に音場は狭くなりがちであるという欠点がありました。 これらに対して、FIDELIO L1ではアコースティック・グリルに設けられた特殊なフィルターが、周囲のノイズをキャンセルしつつ、音漏れをも低減するという芸当をやってのけます。 しかも空気自体は循環しているため、開放型特有の広い音場はそのままに維持されるのです。 音漏れの防止と遮音性、これらの同時実現は、ほとんど矛盾した命題です。しかし、Fidelio L1はそれをやってのけました。 試みに、FIdelio L1を着用して幹線道路(新宿通り)沿いを歩いてみましたが、開放型のはずなのに、音量を上げること無く音楽を聞くことが出来ました。 さりとて、激しい音漏れがする程、音量が大きいわけでも有りません。 何とも不思議な機能で、狐につままれた思いでした。 音は少し低域寄りに感じられます。 全体的に濃厚な音で、解像感も豊かです。 濃厚で低域寄りでは有るのですが、しかし、それは中高域が等閑となっている事を意味しません。 濃厚な低音は、それでいて大変スピード感があり、決してだらだらと滞留する事がないのです。 その為、低域を基盤としながらも、中高音域が阻害されず、その鮮やかさが際立たちます。 速い低音と、伸びの良い中高音のコントラストが、見事にマッチングし、聞いていて爽快感のあるヘッドホンです。 言い方を変えればフィデリオL1は少し演出的なヘッドホンなのかも知れません。 しかし、モニター的な音が欲しければ、スタジオモニター・ヘッドホンがあるのですし、こういった「音」を「楽しく」聴かせてくれるヘッドホンも在って良いのではないかと思います。 もう一つ、音について特筆すべきなのは音場の広さです。 開放型なだけあって、Fidelio L1は大変広い音場を持っています。 エージングがてらビジュアルノベル「魔法使いの夜」をプレイしていたのですが、プレイ中、何度部屋のスピーカーから音が出ているのではないかと錯覚したことか。 ビジュアルノベルやゲームですと、元の音楽の上に効果音がミックスされますが、Fidelio L1はこの効果音の遠近感を見事に再現するために、聴覚的な錯覚に陥ってしまったのです。 ともあれ、通常の音楽を聞く際にも音の見通しは大変良好で、ホールの広さなどもかなりの程度聴覚的に把握することが出来ます。 Fidelio L1は外見にしても、機能にしても、その音作りにしても、製作者のバランス感覚の妙を見せつけられる製品で、構築の美に溢れています。 ケーブルは交換可能で、iPod用と通常のケーブルの二本がついておりますので、アクセサリー派にも適した製品と言えましょう。 国内の発売が何時になるかは不明ですが、是非機会を見つけて、お聞きになることをオススメしたいヘッドホンです。
by katukiemusubu
| 2012-04-18 00:53
| Ecouteur(ヘッドホン)
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