6月15日発売予定のソニーの最新コンパクトデジタルカメラ、Cyber-shot DSC-RX100を見聞してきました。
少しばかり印象・レビューを書き置きます。 DSC-RX100は、2005年発売のDSC-R1以来、実に7年振りとなるサイバーショットのフラッグシップ機です。 SONYのオーディオ機器やVAIOが好きな方はよくよくご存知の事かとは思いますが、ソニーは型番によりその製品の位置づけを表示することがあります。 例えばVAIOのデスクトップ機において長らく最上位機の地位を保っていたのは、VAIO R(PCG-R33〜PCG-RZ75)、typeR/typeR master(VCG-RA50〜VCG-RM95)という所謂「R」シリーズでしたし、 オーディオでもフラッグシップ・ヘッドホンMDR-R10(35万円)、受注生産のフラッグシップ・ステレオアンプTA-DR1a(130万円)などの「R」型番が存在しました。 ソニーに言わせますと、「R」とは即ち「Reference」。全ての物の規範、基準となるべき製品に与えられる名称だそうです(ソニーHi-Fiコンポーネントのページより)。 サイバーショットにおいて長らくこの「R」型番は存在していませんでしたが、2005年にDSC-R1が登場。 F値2.8という比較的明るめのバリオ・ゾナーTを採用し、21.5×14.4mmというコンパクトデジタルカメラ離れしたフォーサーズよりも大きな撮影素子(CMOSセンサー)を採用し、35mm換算で24mm〜120mmの5倍ズームが可能でした。 このDSC-R1、有り体にいって使い勝手そのものは微妙なのですが、広大なCMOSセンサーと高解像の描写力で知られるバリオ・ゾナーTレンズでもって、表現力豊かな写真が撮れるカメラでした。 その後「R」型番は長らく消失。 「H」即ち「High」-zoomを謳ったHシリーズ、HXシリーズが実質的な上位機となっていました。 しかし、これではどうにも物足りない。 例えばNikonがF値1.8のニッコールレンズを搭載したCOOLPIX P310を出したように、はたまたOLYMPUSがF値1.8の瑞光レンズを搭載したXZ-1を出したように、SONYもまた、良く練り上げられたコンパクト機を出してくれないものか。 そう思ったものでした。 そんな時勢を読んだのか、SONYが6月に入って突如発表したサイバーショット最上位機種がDSC-RX100だったのです。 スペックはまさしく圧巻。開放F値1.8という明るさを誇るバリオ・ゾナーTレンズを搭載して、レンズの面で先行2機に並び、撮影素子の広さの面では1.0型(13.2×8.8mm)CMOSセンサーを搭載、1/2.3型のP310の約4倍、1/1.63型のXZ-1の約2.5倍と先行2機種を大きく引き離しました。 実は1.0型CMOSとは言っても大きさの点では、DSC-R1のCMOSよりも小さいのですが、何より驚異的なのは、ここまで大きな撮影素子を通常のコンパクトデジタルカメラの筐体に納めてしまった事です(DSC-R1はRX100の容積2.5倍程度と大振りな筐体でした)。 これは、一度いじって見るに如くは無し。 ちょうど6月9日(土)、6月10日(日)に東名阪のソニーストアで特別体験会をするという事で早速見に行って来ました。 ソニーショールームの営業は11時から19時までとのこと。 9日16時頃、銀座ソニービル着。 体験会場(といっても通常のソニーショールーム内ですが)に行ってみますと人が並んでおりました。 係の方に尋ねると15分待ちくらいで触れるのではないか、という事。 用意された実機は2台で、一人の体験時間は10分まで。最大で1時間程度の待ちが出ていた模様です。 先年のヘッドマウントディスプレイHMZ-T1、脅威の7時間待ちには及ばないものの、しかし、発売前にこれだけの人が注目して、試しに使って見る為に足を運んでいる。DSC-RX100への期待が伺えます。 ソニー側としてもDSC-RX100の1台ごとに人を配置し、専用パンフレットを作って体験会に並ぶ人に配るなど、気合十分な様子です。 さて、パンフレットを読んでいる内に、早々に15分が経過。 係の方がDSC-RX100の設定を全て初期状態に戻した後、クロスで綺麗に拭いて渡してくれます。 こういう細やかな気配りは大変有難いことで、こちらとしても気兼ねなく色々と試すことが出来ました。 まずはF値1.8の実力拝見という事で、マクロ撮影用サンプルの造花を撮ってみることにします。 マニュアルモードにシフトして、ISO感度AUTO、F値1.8、シャッタースピード1/200秒。 マクロはワイド端5cmまで寄れるそうで、ぎりぎりまで寄って写真を撮りました。 するとボケることボケること。最も近い花にのみ合焦し、まわりの花々は淡くボケていきます。 焦点があった部分は大変くっきりと、それこそ花弁の一つ一つを明確に描写しつつ、背景は遠くに行くにつれて徐々に輪郭を減衰していきます。 前景と背景のグラデーションが大変美しく、コンパクトデジタルカメラでこれだけの描写力が実現できるのかと、ほとほと感心してしまいました。 手前の花の解像感も見事で、一部、展示実機での作例が展示会場のモニターに表示されていましたが、何も言われなければαで撮りましたと言われても、驚かない程の写し振りです。 続いて試したのは、DSC-RX100が初搭載するインターフェース「コントロールリング」。 一眼レフにおけるフォーカスリングの様に、レンズ基部にリングが付されており、これを用いた直感的な操作が可能になっています。 ファンクションキーを押すたびに、F値、シャッタースピード、ズーム、ISO感度、ホワイトバランス等、機能が切り替わり、カメラの筐体を保持したままに最適な設定を導くことが出来る様になっています。 デジタルの利点を生かして、ファンクションキーに割り与える機能は自由にカスタマイズ可能で、使い手に合わせた設定が可能に思えました。 リングの質感はリニアな具合。オーディオ機器のボリュームを捻るかのようにすんなりと動いて行きます。 個人的にはカチカチと動くようなステップ式が好きなのですが、DSC-RX100のカスタマイズ性を考えると、リニアな方のが実際に使い易い事でしょう。 コントロールリングを使うとき、その設定条件がモニターに円弧を描いて表示されるのも心憎い演出です。 お次に試したのはズーム機能。 DSC-RX100は35mm換算で28mm〜100mmと光学三倍ズームが可能なのですが、これに加えて、2倍のデジタルズームが可能です。 デジタルズームと言いますと画素数を犠牲にしてボケボケの拡大をする、といった印象を持ちますが、DSC-RX100は異なります。 DSC-RX100の搭載するのは「全画素超解像ズーム」。画素数を損なわないままに、ズームを実現するという新技術です。 私は以前バリオ・ゾナーTを搭載したDSC-F828を使っており、同レンズの光学ズーム性能には信頼を寄せていたので、取るも取り敢えず全画素超解像ズーム機能をオンにして、展示会場外に置いてあったαを撮りました。デジタルズームの実力拝見です。 プログラムモードでお任せ撮影。屋内ズームであるのに存外速いシャッタースピードにも驚きましたが、何より驚いたのは撮影した写真を表示させてみた時のこと。 モニターで最大限に拡大してみても、焦点が外れているようには見えません。確かに画素数を損なっていないようでした。 ただ、こればかりは解像度の高いデスクトップモニターで確認してみないことには正確なことは分かりません。 仮に、私が機器のモニターでみた時に感じたのと同じく、画質も画素数も損なわない拡大が出来ていたとすると、DSC-RX100は実効28mm〜200mmのレンズを積んでいるも同然という事になりますから、7.0倍相当、実に驚異的な性能です。 全体的なレスポンスも良く、少なくとも使った限りでは動作が遅いとやきもきする事は有りませんでした。 写真撮影後も簡単なレタッチが可能で、写真を弄りたい方にも便利そうです。 少し面白みを感じたのは背景のぼかし度合いを調節する機能で、ボケ味を出せるバリオ・ゾナーTとは良い相性の機能かも知れません。 機器の質感もかなり良く、しっとりとした黒色の質感が目を惹きます。 240gという軽量なアルミボディは、しかし、剛性に優れており、強めに握ってもたわみと言ったものを感じさせませんでした。 成る程、良い作りをしています。 最後に用いたのは動画撮影機能。 DSC-RX100は写真機ですが、同時にフルハイビジョン1080p、秒間フレーム60の動画撮影も可能なのです。 まぁ、この機能だけでしたら最近の上級機は大概が積んでおりますし、特筆すべき事では有りません。 使用時に吃驚させられたのは、DRC-RX100が「マニュアル」での動画撮影が可能という点でした。 ビデオにシフトした際、モード設定として「おまかせ」に加え「絞り優先」「シャッタースピード優先」「マニュアル」が表示されたときには、思わず「あっ」と声を出すほどに驚いたものです。 映画などでは明るいレンズのボケ味を上手く生かして、抒情的な映像を撮ることがありますが、DRC-RX100はこれを小規模ながらも再現することが出来るわけです。 では、再現しようという事で、はじめに使った造花のサンプルを用い、「絞り優先」モードにした上で絞りきった(F4.9)後に徐々に開放して行きました。 すると被写界深度の変化が実によく分かる具合に合焦部分が変化していき、最終的には一輪の花のみに焦点が合い、他は淡々としていく様がスムースに映し出さます。 この「マニュアル」動画撮影機能は、レンズ交換式一眼では比較的よく見かけますが、コンパクトカメラではあまり例が無いように思います。 使いようによっては相当面白い機能で有ろうと思われました。 ということで、瞬く間に10分の体験時間が終了。 DSC-RX100は、確かに優秀なレンズ性能を活かしきっています。 その意味でソニー・サイバーショットのフラッグシップに違わない「R」でした。 ところで、先程型番の話をしておりましたが、実は「X」にも意味が有ります。 その意味するところは「Extreme」。尖った、最先端の技術を詰め込んだ製品に与えられる型番です。 最近の例ですと、有機ELテレビXEL-1などが有名でしょうか。 DSC-RX100は、CMOSセンサーやバリオ・ゾナーTレンズ等コンパクトカメラとしての性能を練りこんだ型番「R」であり、 それと同時に、超解像や動画撮影など最新技術を詰め込んだ型番「X」としての素質を持っている。 その型番に恥じることのない写真機だと思われました。 それでは、また。
by katukiemusubu
| 2012-06-09 23:57
| 生活一般・酒類・ウイスキー
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