平成24年8月末から9月末にかけてのオーディオ雑記です。
取り留めもなく。 その1:MDR-1Rシリーズ 試聴レビュー(別ページに分筆しました) その2:ファイナルオーディオデザイン Heaven Ⅵ 試聴レビュー Final Audio Design社の新型イヤホン HeavenⅥを聴く機会がありましたので、少し感想を記します。 ファイナルの製品群は大きく分けてダイナミック型のPiano Forte(大口径)・Adagio(中小口径)シリーズ、バランスド・アーマチュア型のHeavenシリーズに分類できますが、今回、BA型において孤高の地位を占めていたFI-BA-SSに続くクラスの新型イヤフォンが発表されました。 それがHeaven Ⅵ(ヘブンシックス)です。Heaven Ⅵは今年(平成24年)春に発売されたBA型シングルドライバー機Heaven Ⅳ(ヘブンフォー)の上位機種に当たるモデルで、筐体には削り出しのクロム銅(イオンプレーティング仕上げ)が採用されています。市場価格は4万円前後。BA型としてもかなりの高級機です。 最上位機種FI-BA-SSにしてシングルドライバーを採用し、マルチウェイ花ざかりのBAイヤホン界のなかで異色の存在感を放つファイナルBA型イヤホン群ですが、今回のHeaven Ⅵでもシングルドライバーを採用。 同社独自の空気循環技術BAM(Balanced Air Movement)を搭載する辺りは、Heaven Ⅳと同じ、というよりⅣ(4)とⅥ(6)は筐体のデザインといい、そっくりです。 異なるのは、筐体素材(ステンレス・クロム銅)。カラーリングは違うもののフラットケーブルも同じで、特に線材が違うだとかいう告知もありません。 すると、違いは筐体素材のみ。それで価格差2万5千円(Heaven Ⅳの市場価格が1万5千円程、Heaven Ⅵは4万円程)の価値はあるのか、比較試聴をしてみました。 結論から言ってしまいますが、価格差はありと思われます。 Heaven Ⅳは端正という言葉が似合うイヤホンで、綺麗な高音と充実した中低音を細か過ぎない解像感でもって鳴らす、非常に費用対効果に優れたイヤホンでした。 一方、Heaven Ⅵは言葉でまとめれば艶容とでも称すべきイヤホンで、 Heaven Ⅳで見られた音のキャラクターをそのままに、音の粒の一つ一つを磨き上げた様な印象です。 大変あでやかで美しい音の鳴り方であり、ともすれば優等生的な音になりやすいBA型では殆ど見られない艶っぽい鳴り方をしています。 特にボーカルに厚みがあり、歌い手の個性をよく引き出してくれます。 またHeaven ⅥがHeaven Ⅳより優れた点として音場の広さが挙げられます。 流石にPiano Forte Ⅷ~Ⅹほどの広さは無いものの、かなり見通しが明確になり、耳元を中心に広がる半球状のサウンドフィールドに音が満たされます。広さの程度で言えばBA型最上位FI-BA-SSとほぼ並んでいる印象です。 解像感の程度で言えばFI-BA-SSが勝り、FI-BA-SSの精緻かつ広大な音場には一歩譲る印象ですが、Heaven ⅣやHeaven Sよりも精細な印象です。 Heaven S(FI-BA-SB)と比べてみますと、Heaven Sの綺羅びやかな音に対するHeaven Ⅵの艶の乗ったしっとりめの音、といった具合にキャラクターの差異が感じ取られます。それは特に高音域において特に顕著でした。 Heavenシリーズの例にもれず、BA型では珍しいほどに低域の量が稼がれており、迫力もあります。 マルチウェイ機のウーファーの量感には劣りますが、しかしシングルドライバーの利点を活かして、濁りのない高解像の低域再生が為されるのが魅力的です。特にコントラバスの唸りの表現などは弦の揺れがよく分かり大変良好でした。 BA型において、艶めいた音を機種を奏でるイヤホンはあまり見かけず、しかも音場が広いと来ればかなりの希少種です。 Heaven Ⅵはこうした音を求める方には唯一無二の訴求力を持つ機種と言えましょう。 その3:G Ride Audio GEM-1 試聴レビュー 8月末、ダイナミックオーディオ5555にてGEM-1(GRA-GEM1)の試聴が出来るという事で、同店に行って参りました。 GEM-1は米国G Ride Audio によるヘッドホンアンプで価格は88万8千円、ヘッドホンアンプの価格帯としては最も高い部類に入ります。再生周波数帯域は5Hz~55kHz。アンプ部と電源部を分ける、セパレート構成を採用しています。 同機について、5月のヘッドホン祭りの機会に一度試聴した事が有ります。 その際、ゼンハイザーHD600との組み合わせにおいては、演出的であるものの、この機種でしか出せまいという絢爛豪華な表現をしており、なかなかに印象深い鳴り方をしておりました。 一方、手持ちのATH-W2002との組み合わせでは、物凄い勢いで高音が刺さり、残念ながらこれでは絢爛豪華を通り越して音域バランスが崩れた厚化粧だと結論せざるを得ず、ヘッドホンを選ぶ機種であるらしいと思われました。 聞くところによれば、ヘッドホン祭り当時のGEM-1は試作段階のもので、基板をテフロン素材にしたり各種パーツを見直したものが最終仕様(製品版)であるとのこと。その製品版が5555にて試聴できるとの事で、再度の試聴に出かけました。 試聴曲には大河ドラマ「琉球の風」サウンドトラックより「海の王国」を使用。 まずは備え付けのHD600で試聴しました。試作段階の全帯域に渡る押し出しの強さは鳴りを潜め、試作版に比べて幾分か落ち着いた印象。 押し出しの強さが生んでいたと思われる音の全てに残響をつける様な鳴り方は姿を消し、低域をベースに高音が際立つメリハリある音になっています。特に重低音の出方は安定しており、解像感も豊か。扁平に感じられたヘッドホン祭り当時に比べて進化しておりました。 同時に高音は賑やかな鳴りを保っており、音のバランスとしては低音域と高音域にピークを持つ所謂ドンシャリにも近しい音色。 中音域は量的に欠ける印象でしたが、これは音源次第では化けるかも知れません。中音域が過多な音源などでは、全音域がきれいに繋がり、ちょうど良いバランスになるものが有りましょう。 ただ今回の試聴曲のように、全帯域のバランスが重視される交響楽の再生には微妙であるかと思われました。 続いてATH-W2002で試聴。試作段階にあった押し出しの強さが無くなった為か、聴きだした当初から視聴困難になるという程の高域の刺さりは有りませんでした。ただし、どうにも高域のピークが気になります。ビブラートの際には鮮明さよりもザクザクと刺さる高音に意識がいってしまい、やはり接続するヘッドホンを選ぶ印象です。 解像感はそれなりに高く、楽器の分離も明確です。HD600でも感じられましたが、試作版に比べて音場が広くなっているのが印象的でした。 個人的にはヘッドホン祭りの際の、暴れ馬の様な音を保ちつつもう少しピークを押さえてくれれば望ましいなと思っていましたが、結構別傾向の音に変わっており、驚きました。 GEM-1はその音響バランスやヘッドホンを選ぶ事から、ユーティリティ・プレーヤーとは言い難い製品ですが、ポテンシャルそのものはそこまで悪いものではなく、金銭的要件をクリアし、かつこれに合った音源、これに合ったヘッドホンで聞くことが出来るのならば、嵌り役となるのかも知れません。 ただ、それは良くも悪くも代替が効かないものです。つまり一種、ガラパゴス島かイースター島の如き、他と隔絶したシステムとしては在りうる選択肢なのではないかと思われました。
by katukiemusubu
| 2012-10-04 04:23
| Ecouteur(ヘッドホン)
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