2013年2月9日(土)、フジヤエービック主催のポタ研こと、ポータブルオーディオ研究会2013冬 に行って来ました。
訪問した各社のブースについて、感想・レビュー等を記し置きます。 別記なき限り、使用プレイヤーはD-E01、使用イヤホンはER-4Sです。 〈KOJO TECHNOLOGY 光城精工〉 ![]() 青森・津軽地方の電機メーカーで、クリーン電源で知られる光城精工は初のポータブルヘッドホンアンプKM01-BRASSを出展。 Brass(ブラス)の名の通り、真鍮製の筐体をもったアンプです。価格は57,100円。 真鍮パネルそのものも大変肉厚、重量は300g超という、重量級ポータブルヘッドホンアンプに仕上がっていました。 こちらは秋のヘッドホン祭り2012でも聴きましたが、仕様に大きな変動はない様子。 低域に重心を置いた鳴り方で、音の明暗をはっきりと描き分ける性質をもった迫力あるアンプです。 メーカー自身が「重厚かつ煌びやか」と謳うだけのことはあります。 解像感自体はそこまで高くは感じませんでしたが、狭めの音場にぎっちりと音を詰め込んだ密度感が感じ取られます。 しかし、ブーミーになり過ぎず事はなく、適度な量感をもった中低音が魅力的でした。 特に、どっかりと根を下ろしたような低音表現は、この機種特有の魅力と言えましょう。 一方、参考出品がなされていたのが、KM01の漆(津軽塗り)モデル。 型番はKM01-TSUGARUというそうです。 このTSUGARUと、先のBRASS、それぞれの回路そのものは全く同じものだそうですが、この筐体の性質によるものでしょう、大きく出音が変わって来ました。 Brassではどちらかと言えば低音寄りの音域バランスでしたが、Tsugaruでは打って変わって、高域もよく抜けるフラットな音域バランスになっています。 Brassでの根を下ろしたような音域表現は鳴りを潜め、それぞれの音が浮遊感をもってつながる軽やかな音域表現が感じ取られます。 Brassが「重厚かつ煌びやか」ならば、TSUGARUは「軽妙かつ華やか」とでも言うべきか。 ふわり、と広がった音場感も魅力的で、漆華つがる塗りの外装同様、変幻自在の音の様相。軽やかで彩り豊かな音の印象です。 心なしか解像感も向上しているように見受けられます。 KM-01 TSUGARUの方はまだ発売未定だそうですが、BRASSより少し高い程度の価格帯での発売を検討中だとか。 KM01専用ケースのKM01-OP2も滑らか質感で良い塩梅でした。 〈maxell マクセル〉 ![]() オーディオテープなど、メディアの生産で知られるマクセルからは、同社初の高級イヤホンMXH-DBA700とMXH-DD600が出展。 同社は中価格帯のイヤホンにおいてもパッシブラジエーターを搭載したイヤホンMXH-DR300など意欲的な製品を出し続けていますが、初の1万円超クラスに挑戦ということで期待も高まります。 それぞれドライバーを二基搭載しており、MXH-DD600はダイナミックドライバー二基、MXH-DBA700はバランスド・アーマチュア(BA)ドライバー1基とダイナミックドライバー1基を搭載しています。 現在のところ最上級機に位置づけられている、DBA700は、高域に強いBAと低域に強いダイナミック双方の特質を活かした、低音と高音に重点をおいた音域バランスを持っていました。 いわゆるドンシャリサウンドです。 ドンシャリサウンドは中域の沈み具合如何によって大きくその評価を変じるものですが、DBA700は中域が少し沈みすぎる嫌いがあり、ボーカルなどでは声が遠く感じられました。 しかし、BAドライバーの恩恵か、高域の解像感には優れた面があり、再生楽曲によっては、その辺りが生きる場合も有り得ましょう。 一方、次席の地位にあるDD600は、音響バランスが比較的フラットです。 ダイナミックドライバー二つという構成の恩恵か、音の量感もたっぷりあり、かなり厚めの音が楽しめます。 DBA700とDD600、どちらがオールマイティに近いかと尋ねられれば、DD600を選ぶことになりましょうか。 ただDBA700でみられた細やかな音の再現性、解像感という点ではDD600はDBA700に先んじられている印象があり、あっちを立てればこっちが立たずとでも言うのか、なかなか悩ましいものがあります。 今後も新しいモデル開発を行われるそうなので、上級機の投入などに期待したい処です。 〈ONKYO オンキヨー〉 ![]() 最近ではe-onkyoを開設し、国内で最もハイレゾリューション音源の配信に熱心な企業であると思われるオンキヨーは、今回、CES2013でも展示したオーバーヘッド型ヘッドホンを出展。 ハイレゾリューション音源に対応したデジタルオーディオプレーヤーAK100と共に、二種類のヘッドホンが出展されておりました。 二つのヘッドホンの違いはケーブルの線材の品質で、ヘッドホンの本体そのもののスペックはどちらも同じであるそうです。 カラーリングは黒(上級機)、バイオレットが出展。他にホワイトも予定されているとの事でした。 アルミを多用した筐体のデザインには軽快感があり、ケーブルの取り外し・交換が可能である等、見た目に加えて使い勝手もスマートなヘッドホンです。 音もまた見た目に違わず、粗つのない印象。 中低域から超高域までバランスよく出力されており、特に上級機は精細感も兼ね備えている具合でした。 バイオレットの中級機も音響バランスが整っており、上級機にくらべると小さく纏まっているものの端正な印象があります。 シャープな印象の為でしょうか、音の迫力、量感という面ではあまり強さが感じられず、迫力重視の向きには不向きなのかも知れません。 CESで発表された米国内での予価は、日本円に換算して、だいたい2万円程度でしたが、価格に見劣りしない出来栄えでした。 〈SoundPotion サウンドポーション〉 ![]() アンプキットの販売などで知られるSound Potionは、新型ポータブルヘッドホンアンプ・Monolith(モノリス)を出展。 ディスクリート構成のアンプだそうで、サンプルとしてアルマイト加工が施された5色のモデルが展示されておりました。 製品版は1色展開との事。 ディスクリートアンプというと、兎角、解像感の高さに目が行きがちですが、同時に逐一パーツを組み合わせて回路を作り上げるという性質上、製作者の個性が出易く、製作者の理想とする音響はどういうものなのか、推し量れるという面白味があります。 Monolithは、リスニングに十分な解像感と、比較的フラットな音響バランスを兼ね備えており、分かりやすくアンプによる音質向上を提示したモデルに思われました。 澄んだ音を持っており、特に高域の表現力は魅力的です。ただ少しだけですが、低域の量感を欠く様にも思われました。 音場感はそれなりで、物凄く広いわけではないのですが、まぁ余裕が出て来たかなといった印象。 解像感もディスクリート構成でよく見受けられる超高解像、という程ではないものの、長く聞いていても聴き疲れのしない程度の精細さを持っています。 Monolithアンプは、取立てて「これがスゴイ!」というポイントは無いのですが、押し並べて「音が良くなった」という印象を感じさせられる製品でした。 中途半端と取るか、はたまた如才ないと取るか、判断が分かれるところではありますが、個人的にはこういった全方位で適度な音質向上を図る製品も良いな、と思われました。 〈aedle エイデル〉 ![]() 輸入商社トップウィングのブースでは、フランスの新鋭メーカー、aedleのデビュー作にして初のヘッドホンVK-1(フランスでの予価、約3万円)が展示されておりました。 フランスの国内生産ヘッドホンという珍しい代物で、昨年12月にファーストロット300台の予約受付が開始されたのですが、たった一ヶ月も保たない間に予約受付は終了、製品完成前に全ての予約枠が埋まったという欧米で大変期待値の高い製品です。 VK-1のVKとはValkyrie(ワルキューレ)の意、北欧神話の最高神オーディンに仕える武装した乙女たちのことですが、やはりワルキューレというとワグナーの「ニーベルングの指環」第一日第三幕の序奏、いわゆる「ワルキューレの騎行」を思い起こします。 かの勇壮な曲に影響を受けたのか、アエデルVK-1は猪突猛進的な性格を強く有したヘッドホンでした。 まず感覚されるのは音場の狭さ。密閉型とは言え、通常のヘッドホンはそれなりに音に広がりがあるものですが、VK-1はそういった余裕を全く感じさせず、一音一音が真っ直ぐに飛び込んできます。 欧州製ということで、交響楽向きかなと期待していたのですが、これには面食らいました。 交響曲は音数が多く、ある程度の音場が無いと全体像をつかむことが困難になりますが、VK-1は残念ながら不向きなヘッドホンと思われます。 チタン製の振動板によるものか、解像感そのものは高い印象です。 ただ音響バランスにも癖があり、中音域がすっぽり落ち込んでいます。 ボーカル曲ではこれが顕著で、ベースや管楽器が際立つものの、声の部分が落ち込んで、微妙に聞き取りづらく思われました。 装着感も悪くなく、製品デザイン自体はレトロフューチャー風味で良い塩梅なのですが、音を聴いてみると、相当なじゃじゃ馬ヘッドホンでした。 ただし、今回展示されたモデルは試作機で、まだまだ改善される可能性もあるとのことでしたので、今後に期待したいと思います。 VK-1は今回来日したclassicモデル以外にも、カーボンモデルの展開がaedleの本国サイトで告知されておりますので、この展開にも期待したい処です。 〈FULTECH フルテック〉 ![]() プラグメーカーとして世界的にも高名なフルテックは、そのサブブランドADL(アルファ デザインラボ)名義で出展。 従来からの製品であるポータブルDAC兼ヘッドホンアンプ「Cruise」や「Stride」に加えて、CES2013で初公開された同社初のヘッドホンADL-H118や新型ポータブルDAC兼ヘッドホンアンプADL X1が展示されておりました。 ADL-H118は今春発売予定で予価2万円前後のヘッドホンです。 ケーブル交換(プラグはminiXLR)にも対応しており、耳朶の下に行くにつれて鋭角的になる六角形のイヤーパッドが目を惹きます。 音はと言えば、非常にフラットな音響バランスで、適度な解像感も持ちあわせておりました。 内部配線に用いたというCCAW(銅クラッドアルミ線)の恩恵か、メリハリのついた音調で低域の量感、中域の張り出し、高域の伸び、それぞれが良い塩梅で纏められています。 密閉型にしては広い音場を持ち、大規模交響楽もそつ無くこなしていました。 価格帯的にも音質的にも、SONY MDR-1Rシリーズやゼンハイザー MOMENTUMに対する有力な競合相手となりそうで、楽しみです。 ADL X1はiPodやWalkman、一部のアンドロイド携帯にも対応したDACを搭載したポータブルヘッドホンアンプです。 Cruiseでは96kHz/24bit迄であったサンプリングレートも192kHz/24bitにまで向上しており、ハイレゾリューション音源への対応も十分といえましょう。 価格帯的にはCruiseと同じ辺り(4万円台?)を想定されているそうで、カーボンメッシュが印象的であったCruiseに続き、ADLのロゴマークがあしらわれたボリュームツマミなど、デザイン性豊かな製品です。 今回はデジタル出力対応機器を持っていなかった為、アナログアンプ部分のみ試聴させてもらいましたが、Cruiseのフラットでウォームな音調と比べるとX1はフラットであることはそのままに、ソリッドな音調を持っている様に思われました。 〈総じて〉 今回のポタ研は来場者が500人を越えたそうで、前回に比べても、明らかに盛況な様子でした。 一番混み合っていた時分には、すれ違うのに気を使うほどの混雑ぶり。 流石に「研究会」と言うべきか、来場者もヘッドホン祭りに比べて業の深い向き(多段持ちの方など)の比率が高く、濃いイベントだった様に思われます。 来場者と出展者のやりとりも丁々発止で、大変興味深く思われました。 こうした興味深く、また発展性の有るイベントを企画・実行下さるフジヤエービック様には頭が下がる思いです。
by katukiemusubu
| 2013-02-10 03:34
| Ecouteur(ヘッドホン)
|
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