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優れた資質Chord Hugo:ポタフェス2013 in 秋葉原 雑感(感想レポート)

eイヤホン(株式会社タイムマシン)主催の携帯オーディオイベント・ポタフェスin秋葉原 2013へ行って参りました。
ライブありトークあり、会場面積も倍近くに増加と、昨年までのポタフェスとは大きく変わった様相となっておりました。
会期はちょうど連休中。秋葉原で歩行者天国が実施されているという事もあり、会場への人の入りも上々。
親子連れなども見かけ、携帯オーディオ市場の新規開拓にも役立っていそうです。

それでは、今回訪問した各ブースについて所感や試聴レビューを記してまいります。
別記なき限り、使用イヤフォンはPiano Forte Ⅸ、使用プレーヤーはD-E01です。
アンプの試聴はアンバランス出力を基本としております。



〈Chord コード〉
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株式会社タイムロードのブースでは英国Chord社の新型DAC兼ヘッドホンアンプ「Hugo」のプロトタイプが出展。
正式発表はCES2014(1月7日からラスベガスで開催)で行われる予定との事です。
その後、2月8日のポタ研2014冬(フジヤエービック主催)で製品版の展示公開が行われるスケジュールとの事でした。
もちろん、予定は変更になる可能性もあるとのこと。

さて「HUGO ヒューゴ」ですが、デジタル入力に特化しており、その内容はオプティカル(光)1系統、S/PDIF同軸1系統、USB2系統、Bluetooth1系統です。
5.6MHzまでのDSD入力の他、PCMも384kHzまで対応と全部入り。
ブルートゥースがある辺り、実にコードらしく、規格成立時からワイヤレスオーディオを探求してきた同社の矜持が現れています。
今回はD-E01がオプティカル出力に対応していることもあり、D-E01(ポータブルCDプレーヤー)との接続で試聴しました。

その音はといえば、透明感があり壮大。一聴するだけでその素質の良さが感得される出来具合でした。
音域バランスの偏りもなく中庸、解像感も非常に高いものがあります。
左右のセパレーションも見事なもので、流石にポータブルヘッドホンアンプBialberoのそれには敵わないものの優れたステレオ感、音場感を獲得しています。
マッシブな量感はありませんが、大型ヘッドフォンをドライブするに足るだけの力を持ちあわせており、実に英国的。
スコットランドLinnのアンプリファイアにみられる様な、端正でかつ芯の通ったドライブ力を持っています。

筐体は思ったよりも小型で、片手で持てる程度のサイズ。
Choral Range(コーラルシリーズ)の影響を感じさせるデザインです。
左側の窓はChordのコーポレート・アイデンティティとでもいうべきDAC回路の覗き窓。
右側の球体はボリュームコントロール用のホイールです。
Hugoはデジタルボリュームを採用している為、ボリュームのガリとも物理的に無縁で安心感があります。

ただしプロトタイプらしい荒削りな点もあり、それが最も現れているのが端子部分です。
部分によっては削りが浅すぎ、部分に寄っては削りが深すぎ、世に千万とある各種端子・ケーブルとの接続を考えると汎用性が低きに過ぎます。
改善を待ちたいところです。
またこれは個人的な見解ですが、どうにも筐体の塗装が安っぽい。
おそらくポータブル機であるという事で、つや消しのシルバーを採用しているのだと思われますが、折角のCNC切削アルミ筐体であるのですし、普段のChord製品と同じく、素材の質感を活かしたポリッシュド・シルバーを望みたいところです。
多少の指紋もまた味のうち。B&O BeoSound2の様な実例もあることですし、ぜひ艶有りで。
つや消しで行くならば、せめてシボ加工、またはDAC64mkⅡの様な黒色があれば嬉しく思います。

DAC回路の性能だけでいうのならば、フラッグシップ機QBD76(714,000円)すら凌駕する性能を有するポータブルDAC「Hugo」(予想価格200,000円前後)。
さすがにアナログ回路の点においては、QBD76に劣る様ですが、それでもRCA出力時にはデジタルボリュームをスルーする機能がついており、スピーカーオーディオでの使用に際しても気を配られています。
いずれにせよ今後の正式発表が楽しみなモデルです。

〈Denon デノン〉
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株式会社D&Mホールディングスのブースでは本邦デノン社の新型DAC・DA-300USBが出展。
DSD(5.6MHzまで)・PCM(192kHz/24bitまで)に対応した据え置きDAC兼ヘッドホンアンプです。
希望小売価格は60,375円。市場売価は5万円ほどとなりましょうか。

世界ではじめてPCM方式を実用化したDENONらしく、PCMに対しては「Advanced AL32 Processing」という独自技術でもってアナログ波形のより精密な再現を狙っています。
据え置き型ですが、筐体内で電源を再構成、DAC部とアナログ回路に別々の電源を供給するなど、凝った設計です。
Hugoと同じく、RCA接続時にはボリュームをスルーしての出力が可能であるとのことでした。
操作系は有機ELディスプレイのタッチパネル。
44.1kHz系と48kHz系のそれぞれに専用クロックを設けているのも好感です。

USBの他、光や同軸入力にも対応しており、D-E01からの光接続で試聴しました。

その音はといえば、暖色系でこじんまりとした具合。
超絶の解像感だとか、超絶の音場感だとか、そういった一聴してわかるすごさはありませんが、それぞれのパラメーターのバランスが良く纏まっています。
音域バランスは低域基調のピラミッドバランス。
暖色系の音色は、アコースティックギターや男性独唱などによく合い、ジャズなどにも相性が良さそうです。
流石に価格差もあるHugoと比べるのは適切ではありませんが、性能差はともかく「この音色が好き!」という方もいらっしゃるであろう音作りでした。
スピーカー用のDACとして使用するならば、アルニコマグネット採用のJBLあたりと相性が良さそうです。

〈Fostex フォステクス〉
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フォスター電機株式会社のブースではついに完成なったポータブル真空管ヘッドホンアンプ「HP-V1」が出展。
電池式で10時間程の駆動が可能との事です。

その音はといえば、真空管らしいウォームな質感を残しつつも、同時にキレのある音響再現が印象的。
音場はそこまで広がりませんが、逆に凝縮感が高まり、密度の高い音が得られます。
小規模のアンサンブルやポップスなどに相性が良さそうです。

〈Audio Technica オーディオテクニカ〉
オーディオテクニカブースは特に新作はありませんでしたが、ロットアップした木のヘッドホンが5種ほど展示されており、比較試聴をすることが出来ました。
以下はその短感。

ATH-W100:軽やかな音。高音よりのバランス。解像感というよりは響き重視。
ATH-W1000:軽やかだが芯のある音。高音よりのバランス。解像感も響きも良い塩梅。
ATH-W2002:艶めいた芯のある音。高音よりのバランス。解像感も高いが響きが美しい。
ATH-L3000:芯があり濃厚な音。比較的フラットなバランス。高い解像感と濃厚な響き。
ATH-W3000ANV:芯があり元気な音。低音寄りのバランス。高い解像感と軽快な響き。

それぞれにキャラクターが異なり、おもしろい試聴ができました。
こうした取り組みは技術の変遷が感じられて興味深く、今後共に続けて欲しいところです。

〈Ultrasone ウルトラゾーン〉
ドイツ・ウルトラゾネの最新作Edition5がタイムロード社ブースに展示されていたため試聴しました。
ヘッドホン祭以来の試聴で2回目です。

ヘッドホン祭で聴いた時は、どうにもわざとらしい高音や音響バランスの不一致が気になり、「現状で聴いたところでは、音響バランス的にも価格的にも、つりあいを欠いたアンバランスな製品に思われました」と評しました。
しかし今回、エージング済みというものを聴いたところ、高域の不自然さも落ち着き、音響バランスもとれ、ウルトラゾーンらしい彫りが深く豪奢な音に変貌しておりました。
しかもS-logic EXのためか、その音が広めの空間に展開されます。
Edition8的な高い解像感に加え、色濃い描写をしており、音場も広がるため、なかなか他では得ることの難しい音に仕上がっています。
50万円という価格はともかく、この音の個性ならば、一つの製品としてアリなのではないかと思われました。

〈その他〉
・neuの新作ヘッドホンHX1を試聴しましたが、このコストパフォーマンスは素晴らしい。1万円以下でありながら、解像感が高く、低域基調で色濃い描写をします。聴いた際には1.5万円くらいのものだと思いました。
・ポタフェス会場となったベルサール入り口にはONKYO提供の巨大ヘッドホン型スピーカーが設置されていたのですが、存外に抜けが良い音であるのが印象的でした。
・とまれ今回のポタフェスには屋台さえも出店しており、ちょっとしたお祭りの様相を呈していました。フジヤエービック主催のヘッドフォン祭と比べるとより催事色が強まっており、ヘッドフォン祭の後追いにとどまらない、独自の魅力を持ちはじめた様に思います。今後の更なるブラッシュアップに期待です。
by katukiemusubu | 2013-12-22 22:45 | Ecouteur(ヘッドホン)
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