フジヤエービック主催・秋のヘッドフォン祭り2014へ行って参りました。
今回のイベントは出色の製品が多く、数回に分けて感想レポートを書いていきます。 第二弾はヘッドフォンアンプ界隈。 新興ブランドの登場や、新機軸アンプの出現、老舗オーディオブランドのHPA投入など話題は尽きません。 自由闊達なるヘッドホンアンプ市場をどうぞ。 今回のヘッドホン祭。 どこが一番、良い音でしたか?と問われれば、私の答えは一つです。 6階⑩「RE・LEAF」のブース。 DAC搭載のバランス出力対応ヘッドホンアンプ「E1」です。 この音は絶品でした。 アルミニウムブロック削り出しの剛性感ある筐体に、テキサス・インスツルメンツ社のハイエンドDACチップPCM1792Aを採用。 2.8MHzまでのDSD、24bit/192kHzまでのPCMに対応しています。 ヘッドホンアンプの信号増幅回路は電流駆動型(Current Drive)を構成。 電流駆動というと他にはバクーンプロダクツのSATRIアンプリファイアでしか見たことがない珍しい方式です。 電流駆動は通常の電圧駆動に比べて、信号の立ち上がりが圧倒的に速く、正確な再現が期待できますが、 その反面、音が柔らかくなり過ぎ、電圧駆動のような線の太い表現は苦手な印象がありました。 特に低域の制動がうまく行かず、ボヤつく様な音が出がちです。 しかしRE・LEAF(リリーフ)E1はその様なことはありませんでした。 試みにカラヤン指揮ベルリン・フィルによる交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」(ヨハン・シュトラウス)を聴かせてもらいました。 冒頭1分「自然の動機」は映画「2001年宇宙の旅」にも用いられた有名な部分(ドー・ソー・ドー)ですが、よく知られる主旋律の裏で、8人のコントラバス奏者による最低音の副旋律が奏でられています。 E1は主旋律はおろか、この副旋律までも非常に高い解像感を持って描き出してくれました。 しかも重低音まで量感たっぷりで、全体の制動も行き届いています。 ウェルバランス!文句のつけようの無い出来栄えです。 しかも、電流駆動特有の音の柔らかさは保持されており、耳当たりが非常によく、どこかの帯域が飛び出す様なディップもありません。 大規模交響楽における低音、高音の重なりあいも余裕をもって活写され、ホールにおける空間表現も広々としており好感が持てます。 かなり繊細な音まで拾い、クリアな印象ですが、芯が通った音が印象的です。 青竹のようなしなやかさ。 このしなやかさが一番の魅力で、躍動感がありながらも暴れすぎず、端正でありながらも静かすぎず、聞きたい音を聞きたいタイミングで聴かせてくれます。 心ばえある音の仕上りです。 重量は2.5kgとサイズに比しては軽量ですが、独自のスパイク脚やポリカーボネイト製のスタンドなど、制振にも注意を払っています。 削り出し筐体というだけあって、塊感のあるデザインです。 オプションでフランス「Devialetデビアレ」の様なクローム加工も可能とのことでした。 150万円(税別)という価格は非常に高価ですが、ぜひ一聴していただきたい製品です。 フジヤエービック店頭への試聴機設置も検討中とのこと。 続いては、三重県鈴鹿市のガレージメーカー「Analog Squared Paper」。 今年中に発売を予定している新型ポータブルアンプ「TR-07hp」が展示されておりました。 TR-07は世界ではじめてS.I.Tを採用したポータブルヘッドホンアンプで、電圧駆動版と電流駆動版が選択できます。 さきにE1の電流駆動を指して「珍しい」と申しましたが、さっそく電流駆動式の登場です。 SIT(静電誘導電界効果トランジスタ)は真空管に近い特性を示す、大変に低損失でかつ高速に動作するトランジスタです。 東北大学総長を務めた西澤潤一博士によって開発されました。 オーディオ業界では70年代に一世を風靡しましたが、その単価の高さや風評などによって徐々に姿を消してゆき、2014年現在では秋葉原のオーディオメーカー「FAL」のみがSITを用いたアンプを制作しています。 TR-07は非常になめらかな音を持っており、特に電流構成では駆動方式特有の柔らかさと相俟って、ポータブルアンプらしからぬ艶めいた音響再現を実現しています。 若干、低音のフォーカスがゆるい気もしますが、それはTR-07の魅力をそぐものではありません。 電圧構成では、線がはっきりとした音となり、高い解像感が得られます。 こちらは高音が少々刺激的ですが、痛いほどではありません。 どちらの方式にも共通して空間表現が上手く、表現力に定評のある真空管アンプ、TU-05と同じ製作者の手になる製品であることがよく感じられました。 剛性感抜群の筐体も魅力的です。 006P電池で駆動し、10時間駆動が見込まれるとのこと。 そして、もう一つ。 印象的な音を奏でていたのが、スイス「ゴールドムンド」の「Telos Headphone Amplifier」です。 DACを搭載しており5.6MHzまでのDSDおよび32bit/384kHzまでのPCMに対応。 ゴールドムンド(GOLDMUND)というと、2011年に日本から撤退し、翌年に「トライオード」の手で再上陸を果たしたブランドです。 機器の価格が最低でも100万円を越える高級オーディオブランドとして知られていますが、メディアプレイヤーEIDOSシリーズの中身にパイオニアの2万円程度のメディアプレイヤーの部品を使用していたことがネットで話題になったりと、色々と毀誉褒貶のはげしいブランドでもあります。 とはいえ、ゴールドムンドの音についてはネットの風評に左右されず、一度、自分の耳で聴いてみるべきです。 私が聴いたのは、風評華やかなりし頃。マイナス評価からのスタートでした。 しかし、その出音は風評をものともしない、透明感ある鮮烈なものでした。 スピード感もあり、何より上質なのは空間表現。 立体感があり、もはや実存感と言い換えても良いほどに自然な空間表現です。 クリアでシャープながら艶めいており、冬の月光の様な存在感。 玲瓏、という言葉が似合う音でした。 そんなゴールドムンドがはじめて発売するヘッドホンアンプが、本機、テロス・ヘッドフォンアンプリファイアです。 ゴールドムンドは2008年にアナログ出力を有したipod用「iEIDOS Player」プロトタイプを発表しましたが、結局発売はなされず、今回が待望のヘッドフォンアンプとなりました。 その音はというと、まさにゴールドムンドの音。 非常に精緻でありながら、音域バランスに優れており、耳障りな音はありません。 クリアでシャープ、しかし艶めいた冬の月光の音。 特筆すべきは空間表現の上手さでしょう。 大規模交響楽もさることながら、ボーカル曲におけるボーカルの実存感は並ぶもののない素晴らしさです。 まさにボーカルが眼前に居るかの様。 ボーカルの後方に楽器群が居並び、その臨場感、堪らない魅力があります。 テロス(TELOS)とは古代ギリシャ語で「終極、完成」を意味する言葉で、Goldmundにおいては同社の超高級アンプに対してこの名前が冠されます。 てっきりMetisくらいの中級ラインで出してくると思っていたので、Telosのラインで出してきた時には驚きましたが、音を聴いて納得。 165万円(税別)という価格は、90年代にゼンハイザーが発売したオルフェウス(Sennheiser Orpheus System:280万円)に次ぐ価格かと思いますが、DACまで装備した全部入りの構成でこの価格。 ゴールドムンドの相場から言えば、そこまで法外なものではありますまい。 LR各チャンネルにそれぞれ二基のパワーアンプを搭載し、差動(プッシュプル?)回路構成とのこと。 筐体を持ってみましたが12kgと重量感があり、制振にも配慮している様です。 なお、中身はしっかり入っています。 リンク先最初の二枚がテロス・ヘッドホンアンプの中身です。
by katukiemusubu
| 2014-10-26 22:42
| Ecouteur(ヘッドホン)
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