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晩秋の奥武蔵をゆく! 伊豆ヶ岳から武甲山ロングトレイル(正丸駅発、横瀬駅着)

平成26年(2014年)11月も後半に差し掛かろうという頃。
奥武蔵から秩父まで、21kmばかり歩いて参りました。
伊豆ヶ岳から武甲山へと至るロングトレイルです。

水平距離21km、累計標高差1700m超のロングトレイル。
通常であれば2日に分けて行うルートを1日で行う。
奥武蔵から秩父まで、一つで足るはずの往還の峠を三つ経由して行く旅は如何なるものか、ご覧いただければ幸いです。




【登山計画】
正丸駅から伊豆ヶ岳・武川岳を経由して、武甲山へ至り、横瀬・武甲温泉まで達するという今回のプラン。
山と高原地図(エアリアマップ)による標準タイムは12時間5分です。

問題は晩秋という時期。
仮に7時に正丸駅を出たとしても、19時に横瀬ではもう真っ暗、確実に秩父山中で夜を迎えてしまいます。
ただでさえ冬至の近い晩秋は日の入りが早く、16時半には日没となってしまいます。
それに加えて秩父は盆地。山々が日光を遮り、体感的にはより早く日が暮れることが予想されます。
どんなに遅くとも16時には文明圏内に帰還を果たしていなければ、日帰りは困難です。

もちろんヘッドランプを用いての夜間山行も可能ですが、熊など野生動物の活動が活発化しているこの時期、あまり賢い選択とは言いがたいでしょう。

今回のルートにおける文明圏内(=舗装道)への到達地点は、生川集落周辺。
標準コースタイムでは10時間20分かかる場所にあります。
私の在住している四ツ谷界隈を始発で出たとして、正丸駅に至るのは、最速で7時18分。
つまりは8時間42分以内に、休憩や昼食を含めて、標準移動時間10時間20分の道を踏破しなければならない。
端的に言ってしまえば「9時間以内に下山できなければ詰む」のです。

しかも、今回は奥武蔵・秩父往還の峠を三つも経由するコース取り。
通常、峠はその山域で最も通り易い=標高の低い場所に設定されますから、相当のアップダウンが予想されます。
現に地図を眺めると、最初の取り付きの他、山伏峠から武川岳へ至る比高446mの登り、妻坂峠から大持山へ至る比高455mの登り、シラジクボから武甲山へ至る比高216mの登りが見受けられました。
これら三つの登りにかなりの体力を消耗することを考えると、コースタイムの短縮は厳しいかも知れません。

そこで今回は、山伏峠11時、武川岳12時、妻坂峠12時半、大持山13時、シラジクボ14時、武甲山14時半の関門閉鎖時間を設けて、この時間を1分でも超過したら、すぐさまエスケープルートへと移行を図ることにしました。
安全な山行のための保険をかけておくのです。

私は平成26年の7月、北アルプス槍ヶ岳を日帰りし、18時間30分を要する道を15時間で踏破していますが、これは標準タイム比で1.23倍の速度でした。
今回必要とする速度は最低でも1.19倍。
槍ヶ岳日帰り時とほとんど変わりのない速度が要求されています。

【出発】
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ともかくも、一定の速力確保と閉鎖時間の堅守。
この二つを胸に、いざ出発です。
時刻は午前5時。まだ空は暗く、星が瞬いています。
四ツ谷駅から乗車。
無事、目的の列車に乗り込むことが出来ました。
池袋で乗り換え、西武線へ。
西武池袋線で飯能へ至り、飯能で西武秩父線へ乗り換え、7時18分に正丸駅到着予定です。
車窓を見ると、次第に空は明るくなってゆき、雲ひとつ無い快晴となりました。

しかし、ここでトラブル発生。
腹痛に襲われたのです。
槍ヶ岳日帰りの時もそうでしたが、長距離登山へ赴こうとすると何故か見舞われる雉撃ちの機運。
池袋線の車両はトイレ付きではありませんので、所沢駅で一旦、電車を降りました。
トイレを出て、次発の正丸駅到着時を調べると7時47分。
30分のロスです。ううむ、幸先芳しからず。
ともあれ飯能駅まで進み、同駅7時13分発の西武秩父行きで正丸へ向かいます。
秩父線の車両はトイレ付きですので、こういう時、安心感があります。
古風なクロスシートの内装も旅情を掻き立てて宜し。
時間通り、7時47分に正丸駅着。
駅前のポストに登山届を提出し、登山装備を整えて、8時ちょうど山行を開始しました。
あと8時間以内に10時間20分の道を踏破せねばなりません。

【伊豆ヶ岳まで】
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さて参ります。
正丸駅名物・傾斜階段を下りて、高架を抜け、しばらくの車道歩きです。
温度計を見ると気温は5度。肌寒く、ウィンドブレーカーを羽織って歩き出しました。
身体が暖まっていないため、意識的にゆっくりと身体を動かしつつ、歩みを進めます。

25分ほどで正丸峠分岐に到着。ここからは山道です。
身体も暖まって来ました。分岐に坐す馬頭尊に参拝して、さあギアチェンジです。
分岐は三叉路ですが、大蔵山コースを選択。
しばらく沢沿いに登り、再び三叉路に遭遇。
直登コースでも良いのですが、急坂で落葉に足を取られるのも悩ましいので、長岩峠方面のコースを進みます。

ふたご岩やかめ岩などの巨石群を眺めながら、尾根への取り付きとなる急登を上り詰め、稜線上へ。
長岩峠に立ち寄った後、稜線を南へ、伊豆ヶ岳を目指します。
稜線上は風速5~10mほどの南風が吹いておりました。
広葉樹林があるものの、流石は晩秋、葉が散っており、思ったほど風を防いではくれません。
凍えても困るので、意識的に身体を動かしながら、伊豆ヶ岳手前のピーク、五輪山へと進みます。
五輪山山頂の広場でストックを収納し、男坂へ。

男坂は上記の写真の通りの岩壁です。
写真は中程にあるテラスから上部を見上げたものですが、基部から上部への標高差は50m、斜度は40度程ありましょうか。
鎖もありますが、補助にとどめて、自分でホールドを見つけつつ登った方が安定する様に思われます。
平成24年(2012年)には転落による死亡事故も発生しました。
男坂界隈の岩質はもろく、落石が起きやすい地形です。
この日は岩壁の上部からふり落ちてくる風が激しく、落葉や小石が絶え間なく降り注いでおりました。
あまり良いコンディションではありません。
岩壁東側に点在するテラスを用いて、落下物を回避し、5分ほどで男坂を通過しました。

9時38分、伊豆ヶ岳山頂(851m)に到着。
標準タイム2時間に対し、1時間38分。
身体の調子はというと、もう少し増速出来そうです。

【山伏峠へ】
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伊豆ヶ岳山頂で水分補給をした後に出発。
山伏峠(606m)まで一気に245m、標高を下げます。
植林された杉林、針葉樹林帯の中を下へ、下へ。
途中、風の影響か、倒木が多数あり通行が困難な箇所がありました。
「キィー、キィー」という音に、何か獣かな、と思ってあたりを見渡すと、今にも折れそうな樹木があり、それが登山道方面に傾きかけているのを発見して、あわてて通過したり。スリルあふれる道です。
しばらくして、後方から聞こえてきた「バキバキッ・・・ズドーン!」という轟音は、おそらくその木が折れたものなのでしょう。
周辺警戒を厳にして進みます。
そのため、山伏峠の車道に出た時はホッとしました。

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山伏峠にある武川岳登山道入り口へ。
車道を北へ、少し進みます。
午前10時ちょうど、山伏峠に到着。
第一関門(11時迄の到着)クリアです。
これからの登りについて地図を片手に検討していると、車道をツーリングバイクの一団が走ってきました。
見るともなしに眺めていると、先頭のライダーが片手を挙げて、こちらに挨拶を送ってくれます。
これに応えて、こちらも片手を振って返礼。すると、続く十数人のライダー方も一斉に片手を挙げて、挨拶を返してくれました。
北海道ツーリングを思わせるエール交換で、思わず頬がゆるみます。
ジャンルは違えど旅人同士。こうした交歓は嬉しいものです。

【武川岳へ】
十分に休んだところで、武川岳へと取り付きます。
しばらく峠道沿いの小径を歩いた後、道は東へと方向転換し、広い尾根が見えてきました。
ここからの標高差446m。スカイツリー最上部の展望台にも匹敵する高さを稼ぐまで、この尾根を登るのです。
尾根道はといえば笑ってしまう程の直登。
ジグザグすら最小限に押さえられており、ひたすらに高度を挙げていきます。
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標高を240m程上げた頃。
建造工事の進む新しい林道に突き当たりました。
ここから眺める伊豆ヶ岳の山容はなかなかに美しい。
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五輪山のピークを経て、男坂の強烈な立ち上がり、なだらかな山頂の様子も見て取れます。
あの山頂から降りて、再び同じ高度まで登ってきたのです。

林道をまたぐと、ふたたび直登が待ち構えています。
標高差120m程を登りきり、前武川岳(1,003m)へ。
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たおやかな山頂で、ベンチもありました。
冬枯れの木立の中をゆるやかに登り、北東にある武川岳へ向けて進みます。

10時53分、武川岳(1,052m)に到着。
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第二関門もクリア。
しばし山頂のベンチに腰掛けて、スニッカーズを食べたりと栄養補給に努めます。
地図を広げてみると、ここからの問題は妻坂峠へ下ったあと、再び現れる400mの上りです。
大持山西尾根。
武川岳から大持山までの標準所要時間は2時間。
大持山から武甲山まで更に2時間10分かかりますから、少なくとも標準タイム通りに動かなければ予定通りの下山は難しそうです。
余裕をもって行動するためには今少しペースを上げたい処。
体力的には疲労が色濃いわけではなく、ペースアップも可能そうです。

そんな検討をしてると、同じ様に休憩しておられる方に話しかけられました。
北海道の山岳会の方だそうで、これから武甲山へ向かうとの事。
目的地は同じという事で、しばらくご一緒することにしました。

【大持山へ】
11時ちょうどに武川岳を出発。
強風も止み、紅葉の降り積もった急な下りをテンポよくこなしていきます。
臨時に二人パーティーとなった訳ですが、流石は山岳会所属で十年来の経験を持つお方、早めのペースでも、まったく問題なくトレースしてくれます。
11時18分妻坂峠(839m)に到着です。
第三関門をクリア。

さて、ここからが本日最大の核心部、比高455mの上りです。
登山道はというと、またもや直登。直登パラダイスです。
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写真は妻坂峠への下りの最中、大持山への登りを撮ったものですが、中央部の尾根の立ち上がり振りはなかなかのものです。
既に獲得標高差は+1000mばかり。その状態でこの傾斜を登らねばならない。
乾いた笑いがもれます。

しばし同行者と相談。
登りは各々のペースで登ることにして、大持山の山頂で合流することにしました。
さて、アタックです。
私は速攻でいくことにしました。
木の根の張り出した尾根道を、時にはストックを用い、時には樹の幹を掴んで進んでいきます。
切れる息、貯まる乳酸。
しかし急な登り坂において、立ち止まったとしても身体は楽になりません。
一度ペースを構築したら、これを崩さない。
ただ黙々と登って行くことが、もっとも疲労の少ない登り方と言えます。
ときおり現れる緩傾斜地で息を整え、水を飲み、これを繰り返して急坂を登っていく。
一度、展望の良い偽ピークを経た後、稜線へと合流しました。

11時58分、大持山(1,294m)に到着。
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通常コースタイム1時間半の登りを40分。倍以上の速度です。
速攻にした甲斐があります。
最も狭めに設定していた第四関門の閉鎖時間(13時)もクリアし、ホッと一息つきました。
山頂は狭めで、ベンチなどもありませんが、近くの倒木に腰掛けて同行者を待つことにします。
ザックからおにぎりを取り出し、昼食タイム。
12時10分ごろ、同行者も合流しました。
登り52分。これまた良い進行速度です。
しばし休憩をした後、12時20分、ザックを背負い直します。
シラジクボまで一緒に行動をした後、そこからの登りは各人で。
武甲山山頂直下の御嶽神社前で再合流することを打合せました。

【武甲山へ】
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大持山から望む武甲山。
秩父側から見る白い岩肌の露出したピラミダルな山容とは異なり、両翼を大きく広げた優美な風貌です。
緑の針葉樹林帯と紅の広葉樹林帯のコントラストが印象的。

隣の小持山(1,273m)まではあまり標高を下げず、岩場の多い稜線を越えてゆきます。
小さなアップダウンの連続です。
アルプスを思わせる岩場もあり、これぞ縦走といった具合。

衝撃的だったのは、巨岩が真っ二つに割れた岩場です。
左右の岩場が共にオーバーハングしていて、回避困難。
トラバース路はついていません。
どう通るのかと言えば真ん中の割れ目を行くほかなく、赤テープの貼られた残置石を慎重に通過していきました。
ある岩場は直登、またある岩場はトラバース。
岩場の規模は大きくても10m前後ですが、変化に富み、飽きのこない縦走路です。
晩秋においては落ち葉に注意。ときおり足を持って行かれます。

12時51分、小持山(1,273m)着。
小休止の後、シラジクボに向けて200mの下降です。
大持山・小持山間の縦走路に比べて尾根が広く、急坂ながら快適な道が続きます。
とはいえ、折角稼いだ標高を一旦吐き出さねばならぬと思うと、少々しんどいところです。
小持山・シラジクボ間の縦走路は、大きく標高を下げた後、少し登り、また大きく標高を下げて、少し登るという上下運動の激しい道です。
植生が深い部分があり、実際の距離より長く感じられました。

13時8分、シラジクボ(1,088m)着。
第五関門クリアです。
閉鎖時間(14時)的にも問題はなく、このまま登ることにしました。
武甲山の方を見ると、遠くから見た通りで、東側は植林の行き届いた針葉樹林帯、西側は野性味有る広葉樹林帯ときれいに分かれています。
この東西の樹林帯の間に開拓された日当たりの良い尾根道が、山頂への登山道です。
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写真は南側を振り返ったもの。
この様な広い尾根道を登っていきます。
ススキ野原となっており、気持ちのよい登高路です。
流石に疲れもありペースは緩めになりがち。一度ストレッチをした後、ペースを上げました。
斜度はなかなかのもので、一歩一歩の間隔を縮めて、安定的な足場作りに腐心する必要があります。

13時30分ころ、山頂肩の分岐に到着。
発破時刻の警告表示が「ここは石灰石鉱山である」ことを思い起こさせてくれました。
武甲山の採掘について、山岳界隈では批判的な意見が多々見受けられます。
しかし、この一大鉱山の開削なくして秩父の発展はなく、またここで生産されたセメントこそが高度成長の、文字通りの意味での地盤となったことを考えますと、一概に批判することも難しいところです。
そんな事を考えているうちに、同行者と合流。

山頂直下の御嶽神社に参拝した後、神社の西側を巻き、第一展望台(山頂)へ向かいました。

13時40分、武甲山山頂(1,304m)に到着。
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天気は晴れ。
北側に開けた展望台からは、遠く赤城山や榛名山までも望まれ、西側(左奥)には浅間山も見受けられます。
眼下には秩父盆地が広がり、直下を覗きこむと白く切れ落ちた大断崖。
人間はここまで山を削ることができるのか。
人類の営為の凄みと脅威を感じる瞬間です。
南側は樹林があり、あまり展望が効きませんが、奥多摩の山々を望むことが出来ました。

【生川・一の鳥居へ】
山頂の武甲山御嶽神社。
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ご覧のとおり、武甲山は信仰の山でもあります。
村社(蔵王権現→御嶽神社)として尊崇を集めた他、秩父神社(主神:八意思兼命)の神奈備山として、秩父全体の信仰のシンボルでもありました。
そのためでしょうか、削られる前の山頂(1,336m)からは古代の磐座も確認されております。
出土品は横瀬町歴史民俗資料館に保存されており、磐座(巨石群)のレプリカも含め、往時の姿を見聞することが可能です。

武甲山の信仰登山には表参道と裏参道があり、表は生川(いくかわ)集落の一の鳥居に、裏は浦山口の橋立堂に端を発します。
特に表参道には、一の鳥居を一丁目、山頂・御嶽神社を五十二丁目とした丁目石が設置されており、往時の賑わいを偲ばせるものがあります。
表参道は山の東側斜面にあり、日没の早い晩秋には日当たりが悪く不利な道です。
しかし、時刻は13時40分。
裏参道(西側斜面)へのエスケープを決める第六関門閉鎖時刻(14時30分)に比べて1時間近く余裕があります。
日没までには山を降りられそうです。
しかも、表参道を下った先、横瀬町には温泉が湧いています。
同行者にお話しすると、温泉にいたく興味を惹かれた様子で、共に表参道を行くことにしました。

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13時53分出発。
石標を目印に、整備のしっかりした杉林を進んでいきます。
流石は表参道というべきでしょう。
道は快適で、広いところでは三人並んで歩ける程。
ところどころに露出する石灰石に足を滑らさない様注意しながら下っていきます。
傾斜もゆるく、広大な尾根のため、道迷いを防ぐためのロープが貼られている箇所もありました。

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大杉の広場(三十二丁目)。
杉はこの辺りの原生種ではなく、人が植林したものです。
それでもこの巨木は樹齢700年にならんとする。
かつて植えた人は鎌倉時代の人であったのでしょう。
人と武甲山の長い関わり合いを感じる事物です。

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不動滝(十八丁目)。
35m4段の滝で、水を飲むこともできます。
流石は平成の名水百選(環境省)に選定された武甲山の伏流水。
天然のフィルターに濾過された、優れて柔らかな軟水です。
口当たり良し。
麓にある湧き水・大山ノ神の延命水に比べるとミネラルが若干多めでした。

そして生川集落に到着。久々の舗装道の感触を味わいます。
そのまま舗装道を行き、15時3分一の鳥居(一丁目、標高520m)に到着しました。
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一の鳥居界隈には駐車場があり、武甲山や武川岳へゆく登山者の基地となっている様です。
ここで表参道は終わり、今度はセメント工場の中を抜けて行きます。

【横瀬町・武甲温泉へ】
地形図をみると、武甲山の石灰岩採掘場は山の北面及び東西両面にびっしり配置。
南を除いた全方位に展開されています。
特に規模の大きいのが北東面です。
山頂直下の採掘場から麓へと石灰石を運ぶ、巨大な輸送用ケーブルや軌道、斜路がいくつも存在しています。
輸送された石灰石は山麓にあるセメント工場群で破砕され、セメントとして商品化されるのです。
そして水などと和えられ、コンクリートとなって機能する。
一の鳥居からの下山道は、武甲山山麓を南東から北東へ、3km以上にわたり続く山麓セメント工場群の中を通り抜けていくルートになっています。

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概ね景色はこんな感じ。
工場のなかを3kmばかり抜けて行きます。
時刻は15時半ほどですが、山の東面で、しかも生川谷の底ですので、日照が遮られて夕方の様相を呈しています。
響く破砕音。道の左右に展開される工場群に次々と入っていき、また吐き出されていく輸送トラックの群々。
山の静けさとは一転し、かしましいこと限りなし。
しかし、これが文明の音。
巨大トラックがすれ違える様、大きく作られた舗装道をゆったり下っていきます。
目には見えませんが粉塵物が飛んでいるのでしょう、近くの草木は薄っすらと白色に色付いておりました。
マスク必携の道路です。

工場群を抜け、根古屋地区へ出ると一気に視界が開け、日照も届く様になりました。
東側には夕日に当たって紅葉の輝く二子山が、西側にはピラミダルな山容を見せる武甲山が望めます。
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写真は武甲山。
南側とは打って変わった男性的な風貌です。

横瀬駅前にある三菱マテリアルの高架下をくぐり、横瀬地区へ。
根古屋地区から15分ほどの距離ですが、二子山を振り返ってみると、もう暗くなっています。
秋の日は釣瓶落とし、とはよく言ったものです。
そして西武秩父線の高架をくぐり、更に15分ほど。
せっかくの12年に一度の総開帳シーズンですので、秩父札所にも参拝しつつ、進んでいきます。
16時30分、横瀬川のたもとにある温浴施設「武甲温泉 武甲の湯」(225m)に到着しました。
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これにて本日のトレイル完遂です。
武甲の湯は単純硫黄泉。
pH10.59という強いアルカリ泉なのですが、湯船をみるに循環式なのでしょう、そこまで泉質を感じられませんでした。
しかし、露天風呂の佇まいがよく、長湯していても飽きることがありません。
60分ほどゆったり浸かって、湯から上がりました。

流石は盆地というべきか、夜は冷え込みます。
外套を引っ張りだして被り、武甲の湯から横瀬駅までは徒歩10分ほど。
横瀬駅発18時台の特急「ちちぶ」に乗り込み、秩父を後にしました。
本日の旅、終了です。

【山行を終えて】
水平距離21km、累計標高差1700m超のロングトレイル。
標準タイム12時間5分の道を、8時間30分で踏破致しましたので、速度は1.42倍ということになります。
槍ヶ岳日帰り時を上回る速度となり、快調な山行となりました。

晩秋の山は人も少なく、静かな落葉の世界です。
奥武蔵から秩父をつないだ今回の縦走路。
往還を巡り、信仰の山を訪ね、現代文明の地盤へと至る。
アップダウンが厳しく、また直登続きであり、相当の体力を要しますが、充実感ある道と申せましょう。
日没に急かされるのも昔の旅人らしくて面白い。
もちろん日没対策にエスケープルートの設定は必須ですが、自然の移ろいを感じられる良い舞台設定とも捉えられます。
こんなトレイル、如何でしょうか。
by katukiemusubu | 2014-11-26 14:29 | 登山・トレッキング・温泉
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