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笹の川酒造 ピュアモルトウイスキー 山桜15年 レビュー

ジャパニーズ・ウイスキーの隆盛華やかなりし昨今。
しかし以前には、長く苦しい冬の時代が在りました。
多くの蒸溜所がこの時代に淘汰されていったのです。

そんな中、閉鎖された東亜酒造・羽生蒸留所の庇護者として活躍したのが福島県の酒蔵「笹の川酒造」。
笹の川酒造の庇護のもと、旧東亜酒造の原酒は「イチローズモルト」として世に出ることになります。
その笹の川酒造も、かつては蒸溜所を有していました。

笹の川酒造の旧名「山桜酒造」をモチーフに。
付けられた名は「チェリーウイスキー」。
さくらんぼを用いた訳ではなく、歴とした麦芽原料のウイスキーです。

ピュアモルトウィスキー「チェリーウイスキーXXV」を頂点としたその製品群は、奥羽随一の地ウイスキーとして、東北地方の人々を中心に愛されました。
しかし、長い歴史を持つチェリーウイスキーも蒸留所が稼働停止。
ⅩⅩⅤをはじめとしたラインナップが減少するなか、平成27年早春、新商品が登場しました。

その名は「ピュアモルトジャパニーズウイスキー 山桜YAMAZAKURA 15年」。
総貯蔵年数20年を超える長期熟成酒です。
入手致しましたので、レビュー致しましょう。




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「15年」と謳っているのに総貯蔵20年超とは如何なることか。
ラベルの説明書きによると、貯蔵初期の15年間を樽で熟成した上、タンクで再貯蔵し、最低でも総計20年を経た原酒を用いているとのことでした。
さらに、これを混合(ヴァッテイング)したものを、バーボン樽及びワイン樽に入れて再熟成(マリッジ)。
三段階に渡る長期貯蔵を施して出荷したとのこと。
相当な手間がかかっております。

笹の川酒造 ピュアモルトウイスキー 山桜15年 レビュー_c0124076_214105.jpg

さて、その味はというと。
長期熟成酒らしい深い香りが特徴的です。
上立ち香は香木の伽羅に近く、ほのかにクッキーの甘味とバラの芳香を感じます。
紅茶葉でいえば「アリヤ・ローズ・ド・ヒマラヤ」に似ている。

アルコール度数は43°。
含んでみると、爽やかな酒精分が鼻へと抜けて行き、一拍置いて、口内を満たす芳醇な旨味に圧倒されます。

バーボン樽のトロリとした甘味と、赤ワイン樽のコシの強い香味。
シェリーカスクらしきコクのある舌触りと、ミズナラ樽と思わしき引き締まった辛さ。
これらが渾然一体となって芳醇な旨味を形成しており、長期熟成酒らしい風格があります。
複雑でありながらも統一されている、優れたヴァッテイング・モルトです。
どんな味わいが眠っているのか、舌で転がす喜びに満ちています。

何よりも印象深いのは、その余韻。
吐く息にまで残る「モルティ」と表現するほかない、甘く柔らかい穀物(麦芽)の香り。
それが、鼻を抜け、口を抜け、しばらく滞留してフェードアウト(溶暗)してゆく。
若干水を加えて、トワイスアップにすると、いよいよ持続時間が増して行きます。
私はニコチンを摂取しませんが、おそらく葉巻などとも好相性なのでしょう。
エグミの無い複雑さと円熟味。

これだけのクオリティを持ちながら、700ml・4,320円という価格は驚異的です。
方向性は違うものの、ニッカのピュアモルトウイスキー「竹鶴17年」やサントリーのシングルモルトウイスキー「山崎18年」とも対置しうる味わいに思われます。
限定本数には諸説ありますが、2,400本から3,000本の間くらいだとか。
既に完売しておりますが、バーなどで見かける機会も御座いましょう。
地ウイスキーの底力。
一度は飲んでみて損のないお酒に思われました。
by katukiemusubu | 2015-03-05 21:41 | 生活一般・酒類・ウイスキー
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