穂高岳 西奥縦走 敗退記

平成26年7月15日(火)から16日(水)にかけての山行記録。

H26.7.15-16登山リンク
前編:本記事
後編:湯めぐり 卜伝ノ湯、平湯民俗館、ひらゆの森




国内最高難易度を誇る一般登山道、西穂高岳・奥穂高岳間縦走路。
通称、西奥縦走。
これを歩いてみようと思い立ち、新穂高温泉へ向かいました。

2014年7月15日、朝。
勤務先を出て、8時新宿発の「スーパーあずさ」に飛び乗る。
天気は快晴。
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松本・高山を結ぶバスの車窓も景色良し。

平日であるためか、好天に恵まれた日にも関わらず人出は少なめ。
スムースに乗り換えを行い、14時ころには新穂高ロープウェイに搭乗できました。
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笠ヶ岳方面の展望も宜し。
画像右、穴毛谷の砂防ダム(堰堤群)の広大さに目を見張る。

14時30分、西穂高口(ロープウェイ山頂駅)に到着。
展望テラスで風景を楽しみます。
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奥穂高・槍ヶ岳方面。
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活火山、焼岳方面。

空は高く、強い日差し。
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いかにも夏って感じです。

登山口へ。
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主稜線にある西穂山荘(本日の宿泊先)までは、標準タイム1時間半ほどの道のりです。
今シーズン初めてのアルプスであるので、肺活量を鍛えたく、小走りで進みます。

すたこらさっさ。
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ものの40分ほどで西穂山荘に到着。
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宿泊手続きをして、西穂丸山まで偵察に向かいます。

15時30分、西穂丸山(標高2,452m)。
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南西を見下ろすと、そこには上高地・大正池が。
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赤い屋根は上高地帝国ホテルでしょうか。
深い原生林が広がります。

北西を見上げると、そこには主稜線・西穂高岳へ至る道が。
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独標、ピラミッドピーク。明日はここを行くのか、と思うとワクワクしてきます。

16時ころ山小屋へ戻り、指定された部屋へ。
同部屋の方は4名で、定員の半分ほどの客入り。
自己紹介がてらお互いの山話をしたり、ルート情報を交換したりと、のんびり過ごします。

こういう時、最も話題に上るのが天気のこと。
15日朝の天気予報によれば、17日までは晴天が続くとのことでした。
ただ西から低気圧が接近しつつあり。
もしこれが勢力を強めるとなると、明日にも暴風雨が予想されるとの懸念がありました。

17時ころ、西穂山荘の夕食(食事)。
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豚汁とご飯がおかわり可能です。
大鍋で仕込む豚汁は絶品。

そして近き山に日は落ちる。
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20時ころ、就寝。

夜、なんだか眩しいなと思って目を覚ますと、月の光が差し込んでいました。
外を見ると満天の空。
「これは晴れそうだな」とほくそ笑んで、再びに寝床に潜ります。

7月16日午前4時、起床。
同室者を起こさぬように、廊下へ出て身支度を整えます。
4時20分ころ、出立。
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外はというと、薄ぼんやりとしています。
「朝露かな」と思いつつ、ヘッドライトをON。
まずは西穂丸山へ向かいます。

4時30分、西穂丸山着。
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朝露にしては妙に見通しが悪い。
有効視界は10m程でしょうか。
濃厚な霧に隠されています。
そして心なしか風が出始めているような・・・。

ともあれ、進むことにします。
4時50分、独標前のピークを通過。
ここからは本格的な岩場の連続です。

5時、独標直下の岩場。
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有効視界は変わりませんが、風が強くなっています。
降雨によるものか、岩がじっとりと湿っている。

5時10分、西穂独標(標高2,701m)。
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有効視界が5mまで低下。
風は強くなる一方。
そして強風に雨が混ざり始めている。

これはもしや、例の低気圧では・・・。
疑問が脳裏をよぎります。
独標を越え、一旦進んでみますが、辺りは乳白色の世界。
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視界は狭くなる一方で、ホワイトアウトの危険が出てきました。
独標へと登り返し、ザックからツエルトを引っ張りだす。

ツエルトを頭からかぶって、独標頂上で待機。
簡易ビバークをしながら、天候の変化を観望することにします。
岩に腰掛け、カロリーメイトを一本食べる。

そうこうする間にも強くなる風。狭くなる視界。
容赦なくツエルトを強打する大粒の雨。
・・・これは、認めるしかありますまい。
間違いなくアカンやつだ。
低気圧の只中にいるのです。

低気圧の中にあって、岩稜帯に居続けるのは逃げ場も少なく、百害あって一利なしです。
命あっての物種。
現山域からの撤退を決意しました。
既にして最大風速は20m/秒超。
成人男性でも、気を抜けば吹き飛ばされる威力です。

慎重に足場を見定めながら、岩場を通過していきます。
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トラバース箇所では、崖側でなく山肌側に身を寄せながら通行。
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下から吹き上げてきたかと思ったら、今度は上からの吹き下し。
更には前から後ろから。
風の方向が不規則で、予測可能性がありません。
そして視界を奪う雨と嵐。
全方位から押し寄せる小規模な雲。

まさに暴風雨の只中。
洗濯機に放り込まれたかの様に身体が揺さぶられます。
「いや、とんでもない事になったものだ」と自嘲しながら、岩を掴み、草を掴み、下山を継続。
ベキベキッ!と音がしたかと思ったら、樹の枝が折れて、こちらに飛んでくる始末。
間髪をおかず、地面に這いつくばって難を避けます。
いやはや、困ったものです。

そのせいか、標高2,500mを下った辺り、ハイマツ帯に到達した際は安心しました。
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腰の高さまで生えたハイマツのお陰で、幾分か、風が遮断されています。

そうして気を抜いた直後、風速30m/秒もあろうかという烈風に襲われたのは苦い思い出。
足を掬われ、斜面を5mほど吹き飛ばされる。
しかしハイマツをよすがに、早期の復帰を果たせました。
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ハイマツのクッション性とハードシェルの堅牢性の相乗効果でしょう。
とりたてて怪我もなし。

西穂丸山を抜け、西穂山荘に至る下りへ。
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それにしても極限の状況下でケルンの石積みを見ると、別のものを連想してしまいます。
そう、賽の河原とか。

6時40分、西穂山荘を見下ろせる地点まで戻ってきました。
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ビバークが20分ほどですから、西穂独標までの所要時間は登り50分、下り1時間半。
本来とは逆のコースタイムで、暴風雨の脅威を思い知らされます。
防水透湿のハードシェルを脱ぎ、靴の汚れを払って、山荘内に入る。

中に入ると、天気を伺っている登山者の方々が10人ほど。
口々に「外はどうでしたか?」と尋ねられます。
「強風に大雨です。独標辺りの岩場は通過困難かと思われます」と返答。
山小屋に届いた最新の天気予報によれば、
やはり低気圧が発達してきており、しかも穂高連峰の上空で停滞しているとのこと。
「これでは今日の山行は無理ですね」と皆で残念がりました。

小屋への停滞(連泊)を決める人、上高地への下山を決める人、新穂高への下山を決める人。
三々五々に分かれていきます。
私はもう少し休憩を取ることにして、食堂でお汁粉を注文しました。
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ハイカロリーの熱い液体が、活力を取り戻させてくれます。

一先ず、低気圧が停滞している以上、穂高連峰での登山の中止は不可避。
問題は上高地と新穂高、どちらへ降りるかですが、新穂高へ降りることにしました。
せっかくですから温泉めぐりをしつつ、東京へ戻ろうというのです。

西穂高口駅へ、霧煙る森を行く。
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途中、折れたてホヤホヤと思しき木が道を塞いでいますが、気にしてはいけない。
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8時20分、千石平園地(西穂高口駅)に到着しました。
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下り便の始発は8時45分。
同じく西穂山荘から降ってきた方々と話などしつつ、駅のシャッターが開くのを待ちました。
8時半、シャッターがオープン。
早速改札口へ向かい、下り始発の乗客となります。
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映画「ミスト」ちっくな光景。

→後編「上高地周辺の温泉 湯めぐり 卜伝の湯、平湯民俗館、ひらゆの森」へ続く。
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by katukiemusubu | 2015-05-18 17:57 | 登山・トレッキング・温泉 | Comments(0)
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