前回の続き。
富士急ぼっち旅第二弾。 <ええじゃないか> さて、四大コースター最後の一角「ええじゃないか」です。 レールの回転、レールのひねり、そして座席自体の回転。 三種の回転要素を併せ持ち、総回転数14回。世界一を誇る回転型ローラーコースターです。 2012年の事故以降、コースの真下を抜けて駅舎へ向かうルート(鳥居ルート)が閉鎖されたため、コースを東に回りこんで駅舎へと向かいます。 他の三大コースターとは離れた位置にあり、その分、壮大なコースレイアウト。 全長は1,153mと富士急としては平均的(全国的に見ればかなり長い)ですが、最高部はFUJIYAMAに次ぐ76m、最高時速は126km(国内6位)とかなりのハイスペックです。 特筆すべきは車両の大きさ。 1列4人乗りで幅6m、これが5列連なっており車両長さは16mもあります。 あまりに巨大なため、単一ホームではなく左右両側に搭乗ホームが設けられており、待機列も途中から左右に分岐します。 座席自体の回転機構があるため、安全確保は非常に厳重。 腰のベルト、頭部のクッション、上半身全体を支える観音開き方式のハーネス。 シート自体も身体の収まりを考えて作られており、大腿部までしっかりと固定されます。 万が一にも事故があってはなりませんので、これをトリプルチェック。 三重の安全確認を経て、出発と相成ります。 ええじゃないかの一回の搭乗人数は20人。 比較的多い搭乗者数ですが、この安全確認の為、他のアトラクションに比べて待ち時間が長めです。 この日も1時間待ち。安全あっての絶叫マシンですから、致し方ない事と申せましょう。 待ち時間の英語アナウンスで「most dangerous roller-coaster」という下りがあり、 さっきまで談笑していた外国人の一団が「Oh.....」と深刻な表情になったのが印象的でした。 実際、ええじゃないかは世界の絶叫マシンランキングで二位に選出されたことがある実力派です(2010年、cheapflights.com)。 ホームの様子。 狩野探幽の龍図(妙心寺)を思わせる天井画(アレンジの効いた双龍図)を眺めながら、荷物をロッカーへ入れ、靴を脱ぐ。 そう、ローラーコースターに置いて手荷物をロッカーに預けるのは普通ですが、ええじゃないかでは脱落防止のため靴を脱ぐことも義務付けられているのです。 ゲートが開き、搭乗開始。 丁寧な安全確認を経て、出発進行です。 私が乗っていたのは第一列(写真の札番号1の列)。 向かって前方に第二列、第三列と続いており、第五列が先頭にあります。 てっきり最後尾かと思っていましたが、予想に反し、コースターは後ろ向きに出発。 番号通り、第一列こそが最前列だったのです。 「ええじゃないか!ええじゃないか!」のお囃子に送られて外に出た直後、早速座席が半回転。 足が頭より上に来ます。 「うわぉ!」と驚いていると席は仰向けに復元。とはいえ方向は後ろ向きのままです。 吊るされたまま、高さ76mまで巻き上げられていきます。 河口湖方面の展望が望まれ、風光明媚。梅雨時とは思えぬすっきりとした青空。 富士急ハイランドのアトラクションとして過去最高の建造額(36億円)なだけあってか、巻き上げ機の性能も良く、するすると登っていきます。 遠ざかっていく駅舎。ところでわたしは後ろ向き。 進行方向(向かって後ろ)を見ようにもヘッドレストが邪魔をして見ることが出来ません。 つまり、どこが最高到達点なのか分からない。 しかも、ええじゃないかはパークの北西角につくられており、観覧車など高さの参考に出来るものは全て視界から遮断されています。 いつ落ちるか分からない、図ることすら出来ない。絶妙な設計です。 高度が上がる度ににじむ脂汗。 まだかまだか、と思っていたとき、それは来ました。 ファーストドロップ。後ろ向きのまま落下します。 しかし、比高は精々2m。ほんの少し落ちただけです。 あとの74mはどうしたのか、と思っていたら登り返し。 上向きに身体が引っ張られていきます。 その直後、座席がその本性を明らかにしました。 登り返す直前で、座席はくるりと3分の2回転。 仰向けから3分の2回転したら、そう、見えるのは地面です。 ええじゃないかライドの構造上、座席はレールの上ではなく、空中に露出しており、いわば高さ76mに宙吊り状態。 ライドはそのままに89度(ほぼ垂直)の坂へと突入し、時速126kmでセカンドドロップを駆け下ります。 あっという間に迫る地面。真下を向いたまま固定されている座席。 バンジージャンプを思わせる重力落下の迫力に思わず声が上がります。 「おおぉおおお、ぶつかる!ぶつかる!」 あわや地面に激突、という場面で座席は前方に一回転。 またもや後ろ向きになりながらループ区間突入です。 瞬く間に遠ざかっていく地面。 ループの頂上に達した途端に、座席が後方に回転。 今度は空しか見えません。しかし、ここはループの頂上。 頂上にあるものも、いつかは動く。 ループのレールは内側にねじられており、頭から地面へと落ちていきます。 「やっぱりぃぃぃぃいいい!」 あわや地面に頭突き、という直前、レールの傾斜が緩み、水平方向の直進区間へ。 然り、進行方向そのものは水平なのです。 しかし、レール自体にひねりがないという訳ではない。 レールは綺麗に360度ねじれながら直進していたのでした。 つまりは錐揉み走行。座席まで前方に回転をはじめ、目まぐるしく上下が入れ替わっていきます。 目の前にレールがあると思ったら、次の瞬間には地面、その次の瞬間には空。 ぶるんぶるんと振り回されます。 ここまで来ると意味を持った悲鳴を発することは出来ず、ひたすらに「うひゃあああああああ!」と叫ぶのみ。 いつの間にかレールと車体の位置は逆転しており、車体はレールの上になく、レールに吊り下げられています。 座席は仰向けに回転し、進行方向に足を向けて寝そべるような形。 その状態のまま、180度ターンに突入です。 視線は前向き。大きくバンクしながら風を切って進み、コックピットにでも居る様な爽快感です。 凄まじい加速度の中、カーブを駆け抜けていきます。 駅舎に肉薄し、ホップアップ。 空に放り上げられた直後、座席が後ろ回転し、後ろ向き方向へ。 レールのねじれに従い、今度は背中から落下していきます。 コースは二度目のループに突入。 地面から打ち上げられる様な形でループの頂上へ。 「あぁぁぁれぇぇぇえええええ!」と声が漏れるのもお構いなく、ループの頂上では座席が前回転。 今度は足から地面に突入です。 地面に最接近。再びのホップアップ。そしてレールのツイスト(ひねり)。 座席もぐるんぐるんと一回転半。 ついに停止軌道に入りました。 地上76mからの落下、二つのループ。衝撃的なターンとツイスト。 人間の身体が木の葉のように宙を舞います。 落下・ループ・ひねりの三元素に加えて座席の回転を取り入れた4次元コースター「ええじゃないか」。 その名に違わぬ、かつてない開放感とスリル、爽快感を併せ持った乗り物に仕上がっていました。 <昼食> 時刻は12時30分。 目的通り四大コースター+富士飛行社に乗り終わりましたので、ランチと致します。 園内で食べようかとも思いましたが、富士急ハイランドは入退場自由との事。 北側ゲートで再入場用スタンプを押してもらい、一旦外に出ました。 富士急行・富士急ハイランド駅からフジヤマ特急に乗って、富士山駅へ。 お値段170円也。 通常ならば特急料金がとられるのですが、河口湖駅〜富士山駅の乗車に限り、特急料金は無料なのです。 座れる席は自由席のみである為、展望席(指定席)には座れませんが、それでも十分。 特急の座り心地良い椅子に腰掛けて、5分間の列車旅を楽しみます。 富士山駅で下車後、駅に程近いうどん屋「研考練」へ。 富士吉田の名物・吉田うどんのお店です。 強いコシと濃厚なスープ、馬肉のトッピングで有名な吉田うどんですが、 このお店ではオーソドックスな吉田うどんの他、このお店でしか味わえないオリジナリティ溢れるウドンが食べられます。 それが、これ。 揚げ出しうどん、520円也。 手打ちの麺を軽く油で揚げ出し、それを熱々のスープに入れて、大根おろしと季節の青菜と共にいただくという斬新なメニュー。 サクッとした麺の食感に、ジュワーッと滲み出る出汁と油の旨味。 内側はもちもちとした感触で、これまで味わった事のない美味しさがあります。 揚げ出し豆腐好きならば、一度は食べたい品物です。 あまりの美味しさに猛然と食べ進み、スープまで完飲完食いたしました。 「秀逸なうどんでした」女将の長田さんに御礼を言って、店を出ます。 研考練の営業時間は11時から14時半、不定休のため事前の確認がお勧めです。 再び徒歩で富士山駅へ。 ハイランドへ戻る鉄道電車が出るまで、10分ばかり。 おみやげコーナーを覗くことにします。 表地はシンプル、たくし上げると富士山が見える「3776 Tシャツ」。 一体どういうシチュエーションでたくし上げると言うのですかねぇ・・・。 復路もフジサン特急です。 往路は富士急行2000系(旧JR東日本165系「パノラマエクスプレスアルプス」)でしたが、 復路は富士急行8000系(旧小田急20000系「ロマンスカーRSE」)でした。 行きと同じく河口湖線のみの乗車のため特急料金は不要。 8000系の場合、河口湖側の最前列も自由席として乗車できますので、前面展望を楽しみます。 カーテンまで富士山仕様。 富士急のコーポレート・アイデンティティ戦略は徹底しています。 普通車両、富士急行6000系(旧国鉄205系)ですら、「ななつ星in九州」で高名な水戸岡鋭治氏にデザインを依頼しており、熱心な観光需要の取込み振りです。 さて、富士急ハイランドへ戻ってきました。 残念ながら、巻き上げ型ラフティングライド「ナガシマスカ」は整備点検の為、終日運休とのこと。 しかしながら、混雑状況をみると他のアトラクションもそれほど混んではおりません。 そこで、富士急ハイランド内で動いている全ての絶叫マシンをはしごする事にしました。 13時30分、出発です。 <クールジャッパーン> 気温も上がってきたため、まずは涼むことにしました。 30mの高さから滑り降りるウォーターライド「クール・ジャッパーン」へ。 ポンチョ(雨合羽)を100円で購入できます。 だが、ポンチョすらも無効化する圧倒的な水しぶきが襲いかかる。 その高さ、実に18m。 これだけの水が一斉に降りかかって来ます。 爽快感と水圧が体感できるライドです。 登って、落ちる、という単純なコースレイアウト。 それが故に特大の水柱が上がります。 ポンチョの隙間から入り込む水、ライドの内側に落ちて跳ね返る水。 搭乗して2分、降車した時には全身びしょ濡れでした。 暑い時分には良いのですが、肌寒い時には辛いかも知れません。 現に凍えを訴えている人がいました。 <レッドタワー> さて、濡れたからには衣類を乾かさねばなりません。 これに適しているのはやはり温風乾燥。 フリーフォール「RED TOWER」へ参ります。 高さ52m、時速65km、最大荷重4.0G。 足をぶらぶらさせながら富士山の見える天上へ。 ゆっくりと登り、空中に静止する十数秒のスリル。 生殺しに「もう勘弁してくれ」と思い始めた頃に重力落下。 そして上昇。再落下。 無重力状態で風が吹き抜け、随分と服も乾きました。 ハーネスをおろし、次のライドへ。 <鉄骨番長> もう少し服を乾かしたいな、と歩いていると在るではないですか、目の前に。 天空の回転ブランコ「鉄骨番長」。 最高到達点47m、最高時速51km。 高さ59mにも達する鉄塔の周りを高速で回転する空中ブランコです。 座席は磁石固定式の二重ハーネスでなかなか堅牢。 腰までしっかりと包む座面で安定感があります。 キャスト(スタッフ)も鳶職人の格好で、ダボダボのズボン(ニッカポッカ)が効いています。 ブランコは空中へ5mばかり浮き上がった後、回転開始。 中央の回転軸が上昇し、徐々に高度も上がってゆきます。 そして回転数も上昇し、ブランコに遠心力が加わる。 地面との角度は30度くらいでしょうか。 なかなかの傾きです。 午後からは梅雨曇り。 曇天の中、見え隠れする富士山を眺めながら、空中に投げ出される爽快感。 足下には賑やかな遊園地。 素晴らしいの一言です。 回転ブランコとしては日本最大規模となる59mの鉄塔。 「第三の男」で有名なウィーンのプラーター公園には世界最大(117m)の回転ブランコがあるそうで、これにも乗ってみたいところです。 あまりに気に入ったもので、そのまま連続で乗車。 キャストの方に「お好きですねぇ!」と言われつつ。 気に入ったらすぐに連続乗車。 こういった可塑性は一人旅ならではの魅力でしょうか。 <トンデミーナ> 続いて、トンデミーナへ。 見ての通り、スポンサー企業はピザーラです。 回転する50人乗り円盤、これが25mのアームで左右に振られ、最大角120度まで傾斜します。 最高時速は100kmを越え、ぶわんぶわんと揺さぶられる。 ただし、座席は外向きで景色を見ながら搭乗できるため、見た目ほど怖くはありません。 これがもし内向きの座席だったら。 50人まとめて宙吊りになっているのを見ながら回転。 搭乗客の悲鳴と表情が常に見えるため、相乗効果でさぞかし怖いアトラクションとなるでしょう。 そんな事を思いつつ降車。 <マッドマウス> 二人乗りの小型コースター「マッド・マウス」。 極小形であるがゆえの小回りの利きが魅力的なコースターです。 身長制限が110cmと低く、お子様にも大人気。 逆に大の大人が乗ると、線形とあいまってコースから放り出されそうな恐怖感が味わえます。 まあ実際に、そういう事故もありました。 見た目に反して、結構ハードなコースレイアウト。 キャメルバッグに直角カーブ。 意外とやるもんだ、と感心して降車しました。 <パニッククロック> 最後に残った絶叫マシン「パニック・クロック」。 その名の通り、狂った時計の様に二つのライドが360°縦回転を繰り返します。 はじめは時計回り、その後に反時計回り、そしてランダムに時計・反時計回りを連発。 その激しい動きに追随するため、座席・ハーネスともに大変堅牢。 富士Qでも「ええじゃないか」に次ぐ規模の緻密さではないでしょうか。 ハーネスは遊びを持たせることも可能ですが、ぴったりと身体にくっ付ける方がオススメです。 タテ回転中に余計なストレスが掛からず、痛みも最小限で済みます。 ライドの最下降点と地面との距離が大変に近く、スリル満点。 正面から地面に近づきスイングバイ。空中へと急上昇。 今度は背中からドロップし、急速に遠ざかる地面を見晴かす。 宇宙飛行士か航空機パイロットの養成設備の様です。 迫力で言えば、四大コースターに匹敵する満足度でした。 搭乗時は断然、最前列がお勧めです。 これにて、稼働全絶叫マシンの搭乗を達成しました。 <EVANGERION:WORLD> まだ時間もあります。 近くのウォークスルー型アトラクション「エヴァンゲリヲンワールド」へ。 その名の通り新世紀エヴァンゲリオンをモチーフにした歩行型アトラクションです。 新劇場版準拠の構成となっており、NERV(ネルフ)本部を再現した館内を自由に散策することが出来ます。 碇ゲンドウ氏の執務室(ゼーレの会議中)だとか、ヤシマ作戦立案中の戦術作戦部作戦局第一課とか、自由撮影スポットもたっぷり。 正直、一人旅よりも多数人で訪れた方が楽しめるアトラクションです。 それでもNERV富士Q支部掲示板に仕込まれた小ネタなど見どころは盛り沢山。 エヴァンゲリヲン初号機の発進シーケンスを再現したプロジェクションマッピングなど抜群の迫力です。 また、出口で500円を支払うと、自分の写真入のNERV身分証が発行して貰えます。 他の探索型アトラクション「絶望要塞2」や「絶凶・戦慄迷宮」、「血に飢えた病棟」といったホラー系は、設備更新期間であった為にそもそも閉館中。 そこで「ええじゃないか」「鉄骨番長」「パニッククロック」の3アトラクションにもう一度乗ってから、帰ることにしました。 お腹いっぱい乗って、大満足。 <シャイニングフラワー> なお、絶叫マシンではありませんが、大観覧車「シャイニング・フラワー」にも富士急らしい仕掛けが御座います。 天井から床まで、フレーム以外が全て透明なゴンドラ「スケルちゃん」と「スクムくん」です。 こちらは4台限定の透明観覧車で、通常とは並び列が異なることに留意が必要です。 時刻は17時。 パークの閉園時間です。 帰路につくことにします。 途中、ハイランドリゾート「リサとガスパールタウン」でクロワッサンを買い求める。 バターの香り豊かな仕上がりで、食感も繊細。 ゲートをくぐり、バスターミナルへ。 天気が回復し、バスターミナルからは富士山が望まれました。 帰りのバスの時間までは余裕があるため、軽く夕食を取ることにしました。 バスターミナルより徒歩15分の有名店「天作」へ向かう。 写真右側の人物は店主の奥脇さん。 山椒や紫蘇、桜や薔薇の変わりうどんで高名な「天作」ですが、実は郡内(山梨県東部)最古の蕎麦屋さんでもあります。 という事で「田舎そば」を注文。お値段650円也。 粗挽きのそば粉が生む重層的な香りに、優れた喉越し。 つけダレもコク深く、実に美味しい。ご馳走様でした。 店の外に出ると、雲一つない空。 富士山がよく見えています。 つい一ヶ月前に登ったところなので感慨もひとしお。 炭酸水素塩泉が売りの「ふじやま温泉」の立ち寄り湯はまたの課題にする事に。 19時、新宿行き高速バスの車上の人となりました。
by katukiemusubu
| 2015-07-12 00:40
| 生活一般・酒類・ウイスキー
|
カテゴリ
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