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東京大福紀行15 「群林堂(護国寺)」の豆大福・鹿の子(かのこ)

護国寺・講談社前「群林堂」にて購入。
お値段税込み180円(豆大福)、190円(かのこ)。
感想レビューを書き置きます。





誰が呼んだか「東京三大福」。
東京 三大豆大福とも言われますが、和菓子の名店のなかでも、特に大福の美味しさで知られたお店です。
一般には、明治神宮前原宿の「瑞穂」、品川泉岳寺の「松島屋」、音羽護国寺の「群林堂」の三店であると言われています。

大福は、和菓子の中でも生菓子の代表格。
生であるため日持ちがせず、賞味期限はその日限りのものが殆どです。
今回ご紹介する「群林堂」の豆大福もその日かぎり。

そのため作り置きは一切なく、売り切り次第の終了です。

お店そのものは朝9時半から営業しており、
営業時間は夕方17時まで(日曜日と月曜日定休)とされておりますが、
実際には午後の早い時間に売り切れてしまうことが多く、
しかも三大大福の他の二店とは異なり「予約不可」であるため、
入手困難度の高さでも知られております。

群林堂は大正5年(1917年)の創業。
場所は創業当時と変わらず、現在は二代目が代表を務めておられます。

平日でも老若男女、カジュアルな出で立ちの方から、スーツ姿の方まで、
列をなして菓子舗へひしめく様は特異なもの。
でも実際、その価値ある美味しさなのです。

東京大福紀行15 「群林堂(護国寺)」の豆大福・鹿の子(かのこ)_c0124076_21542116.jpg
できたてホヤホヤの柔らかな餅の食感、とろけるような豆の感じも良いのですが、
特に印象的なのは、すこし時間を置いた夕方のお味。

空気中の水分を吸って、餅が歯ごたえを持つようになり、つぶ餡はずっしりとしたコクを持つようになります。
水気を含んだつぶあんは、こしあんとの中間的な感触です。

そして何より、赤エン豆(富良野産)の塩梅が群を抜いて素晴らしい。
カリッとした表皮をかじると、確かな食感とともに表皮が弾け、解けるように中の実が姿をあらわします。
実はしっとりとしており、豆固有の甘味がジワリと広がりますが、これに加えて適度な塩味がかぶさります。
まさに「塩梅」としか言いようの無い絶妙な塩加減。塩が香りと味とを引き立てます。

それそのままに北海道産の小豆、東北米の餅が渾然一体となり、
あずきの濃厚で余韻のある甘さ、噛みしめるほどに美味しい米の旨味が立ち現れる。
それぞれがしっかりとした個性を主張しながらも、しかし全体としてまとまりを帯びており、ここならではの味が楽しめます。

ただ、時間が経過しすぎると餅が固くなりすぎてしまうため、良い加減に出会えるかは悩ましいところ。
可能なら三個ほど買って、一つは出来たてを、一つは夕方あたりまで置き、一つは任意の時間に食べる様な方法がおすすめです。
こんなに時間で変わるのか、という驚きがあります。

東京大福紀行15 「群林堂(護国寺)」の豆大福・鹿の子(かのこ)_c0124076_21545150.jpg
一方、かのこ。
鹿の子餅とも呼ばれる本品ですが、写真でご覧いただけますように、
第一層に餡、第二層に鹿の子豆という多層構造になっております。
あんこ玉をさらにアズキで覆った様な仕上がりです。

外にびっしりと張り巡らされた鹿の子豆は光沢感が有り、非常に美しい見た目です。
こちらの豆は、豆大福の赤えんどう豆とは異なり、小豆でも大振りなもの。
すなわち、大納言小豆です。ふと思い立って数えて見ましたが、一個あたり70粒ほどの小豆が施されておりました。

外身もあずき、中身もあずき。
豆大福とはことなり、中身はこしあんで、ねっとりとした密度感のある味わいが楽しめます。
では、甘さ一辺倒かというとさにあらず。

こちらも豆大福に負けず劣らず、外身の豆が良い仕事をしております。
噛みしめる度にコリッと弾ける豆の香味。えんどう豆とは異なる重心の低い香味で、馥郁とした香りがひろがります。
これに続くのが中の実の深い甘みで、それが餡の密度ある甘さへと、しっかりと架橋される。

あずき豆のポテンシャルも「これでもか」と引き出した重層的な味わいです。
まるでミルフィーユのような積層感。

豆大福、かのこ、それぞれに素材の良さもさることながら、その良さを引き出す菓子職人の腕が光る傑作でした。

総合点 95点/100点(豆大福)、89点/100点(かのこ)。
日持ちは一日(当日限り)。

by katukiemusubu | 2017-10-04 21:55 | 東京大福紀行
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