護国寺・講談社前「群林堂」にて購入。
お値段税込み180円(豆大福)、190円(かのこ)。 感想レビューを書き置きます。 誰が呼んだか「東京三大福」。 東京 三大豆大福とも言われますが、和菓子の名店のなかでも、特に大福の美味しさで知られたお店です。 一般には、明治神宮前原宿の「瑞穂」、品川泉岳寺の「松島屋」、音羽護国寺の「群林堂」の三店であると言われています。 大福は、和菓子の中でも生菓子の代表格。 生であるため日持ちがせず、賞味期限はその日限りのものが殆どです。 今回ご紹介する「群林堂」の豆大福もその日かぎり。 そのため作り置きは一切なく、売り切り次第の終了です。 お店そのものは朝9時半から営業しており、 営業時間は夕方17時まで(日曜日と月曜日定休)とされておりますが、 実際には午後の早い時間に売り切れてしまうことが多く、 しかも三大大福の他の二店とは異なり「予約不可」であるため、 入手困難度の高さでも知られております。 群林堂は大正5年(1917年)の創業。 場所は創業当時と変わらず、現在は二代目が代表を務めておられます。 平日でも老若男女、カジュアルな出で立ちの方から、スーツ姿の方まで、 列をなして菓子舗へひしめく様は特異なもの。 でも実際、その価値ある美味しさなのです。 できたてホヤホヤの柔らかな餅の食感、とろけるような豆の感じも良いのですが、 特に印象的なのは、すこし時間を置いた夕方のお味。 空気中の水分を吸って、餅が歯ごたえを持つようになり、つぶ餡はずっしりとしたコクを持つようになります。 水気を含んだつぶあんは、こしあんとの中間的な感触です。 そして何より、赤エン豆(富良野産)の塩梅が群を抜いて素晴らしい。 カリッとした表皮をかじると、確かな食感とともに表皮が弾け、解けるように中の実が姿をあらわします。 実はしっとりとしており、豆固有の甘味がジワリと広がりますが、これに加えて適度な塩味がかぶさります。 まさに「塩梅」としか言いようの無い絶妙な塩加減。塩が香りと味とを引き立てます。 それそのままに北海道産の小豆、東北米の餅が渾然一体となり、 あずきの濃厚で余韻のある甘さ、噛みしめるほどに美味しい米の旨味が立ち現れる。 それぞれがしっかりとした個性を主張しながらも、しかし全体としてまとまりを帯びており、ここならではの味が楽しめます。 ただ、時間が経過しすぎると餅が固くなりすぎてしまうため、良い加減に出会えるかは悩ましいところ。 可能なら三個ほど買って、一つは出来たてを、一つは夕方あたりまで置き、一つは任意の時間に食べる様な方法がおすすめです。 こんなに時間で変わるのか、という驚きがあります。 一方、かのこ。 鹿の子餅とも呼ばれる本品ですが、写真でご覧いただけますように、 第一層に餡、第二層に鹿の子豆という多層構造になっております。 あんこ玉をさらにアズキで覆った様な仕上がりです。 外にびっしりと張り巡らされた鹿の子豆は光沢感が有り、非常に美しい見た目です。 こちらの豆は、豆大福の赤えんどう豆とは異なり、小豆でも大振りなもの。 すなわち、大納言小豆です。ふと思い立って数えて見ましたが、一個あたり70粒ほどの小豆が施されておりました。 外身もあずき、中身もあずき。 豆大福とはことなり、中身はこしあんで、ねっとりとした密度感のある味わいが楽しめます。 では、甘さ一辺倒かというとさにあらず。 こちらも豆大福に負けず劣らず、外身の豆が良い仕事をしております。 噛みしめる度にコリッと弾ける豆の香味。えんどう豆とは異なる重心の低い香味で、馥郁とした香りがひろがります。 これに続くのが中の実の深い甘みで、それが餡の密度ある甘さへと、しっかりと架橋される。 あずき豆のポテンシャルも「これでもか」と引き出した重層的な味わいです。 まるでミルフィーユのような積層感。 豆大福、かのこ、それぞれに素材の良さもさることながら、その良さを引き出す菓子職人の腕が光る傑作でした。 総合点 95点/100点(豆大福)、89点/100点(かのこ)。 日持ちは一日(当日限り)。
by katukiemusubu
| 2017-10-04 21:55
| 東京大福紀行
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