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秩父ウイスキー祭2018④ 第5回秩父ウイスキー祭2018 レポート本編

第5回秩父ウイスキー祭りへ行って来ました。
前日の秩父周遊をふくめ、2018年(平成30年)2月17日・18日の旅行記を書き置きます。
第四弾はレポート本編。各社ブースの状況や試飲品種の簡易的な感想など。

秩父グルメ周遊は第一弾、秩父蒸溜所見学記は第二弾、祭限定ボトルのレビューは第三弾を御覧ください。

<秩父旅行記2018 リンク>
第四弾:秩父ウイスキー祭2018 レポート本編←本記事




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2月18日(日)午前10時50分。
11時からの開場を前に、秩父ウイスキー祭会場限定ボトルの抽選販売に向かいました。
列形成が配慮されたのか、予定を早めて10時45分に開場。抽選はすでに始まっています。
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今年の記念ボトル。限定本数は285本。
前日に試飲しておりましたので、その際のレビューを転記いたします。
上記リンク先(旅行記③)では、2016年、2017年分記念ボトルのレビューもご覧いただけます。

<レビュー> イチローズモルト 秩父ウイスキー祭限定ボトル 2018

【スペック】
・樽番号 #2633、クリームシェリーホグスヘッド樽。
・クリームシェリー(Cream Sherry)とは甘口のシェリー酒のこと。一般的なオロロソ・シェリーは辛口。
・2010年6月製造、2018年1月ボトリングの7年熟成。
・使用大麦は英国Braemar(ブレイマー)種。
・アルコール度数59.6%。
・限定数285本。

【テイスティングコメント】
・黄金の午後を思わせる琥珀の水色。
・上立ち香は、豊満で甘い芳香。焦がした砂糖菓子。
・口に含むと、よく熟したストロベリーを連想させる甘さと果実感のハーモニー。
・フルーツポンチというよりも、半生のドライフルーツにシロップを掛けた様な凝縮感。
・一見バーボン樽熟成に思われるが、加水すると厚みが増し、こってりと旨口。
・含み程度に硫化水素感、硫黄臭があり、シェリーだと気付かされる。
・余韻は長く同一方向。イースト香がふわりと香る。

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まあ当然というべきか、抽選はあえなく外れ。
前売り券の販売総数が3,500枚とのことでしたので、抽選倍率は約12倍(当選確率8%)。
致し方ありますまい。

後刻、どなたか当選者が出ないか眺めていたのですが、
秩父市商店連盟連合会の島田憲一会長((株)清水金物社長)が颯爽と引き当てていたのが印象的でした。
島田会長の名誉のために申し添えて置きますと、別にヤラセや仕込みではなく、本当に運良く引き当てられた結果です。羨ましい。
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さて、抽選会場の平成殿を後に、秩父神社参集殿へと向かいます。
試飲会場は、神社境内の参集殿と秩父駅直上の秩父地場産センターに分かれており、
それぞれ2フロア・27ブース、1フロア・23ブース、合計3フロア・50ブースの出展が御座いました。

神社の境内での開催は唯一無二のものでしょう。
厳かながら賑やかな、そんな雰囲気があります。

基本的には、都内のイベントでも飲める外国産ウイスキーよりも、
秩父ウイスキー祭ならではのジャパニーズウイスキー、特にクラフトウイスキーをメインに試飲していくことに致しました。

それでは参集殿の中へGo。
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・・・・・・。

人が多すぎて立錐の余地もありません。
通勤時間帯の山手線を思わせる混雑ぶり。
人にぶつからずに移動することは殆ど不可能です。

来場者からは「去年以上の混み具合だ…」「いや、こんなウイスキーイベント見たこと無いぞ」「そもそもブースに近づけない…」と悲鳴の様な声が上がっておりました。
イチローズモルト(ベンチャーウイスキー)のブースは部屋をまたいで待機列が形成されており、最後尾札を持ったスタッフの方に伺うと「一時間は待っていただくと思います」とのこと。
待ち時間1時間超。いつここは東京ビックサイトのシャッター前になったのか、凄まじい混雑です。

考えてみると秩父市の人口6.5万人に対し、今回の祭参加者は3,500人以上。
市域の人口の5%以上に相当する人間が一箇所に押しかけているのであり、キャパシティオーバーとなるのも当然といえます。
なるほど前売券の完売時点で当日券の販売が中止となる訳です。

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…と言い続けていても仕方がないので、大手三社のブースから並び始めます。
そもそも人の数が多すぎて、各社が何を出展しているかは分からないままで並ぶこととなり、若干くじ引きめいています。

<サントリー酒類(株)>
サントリーは洋酒のみという割り切った形での出展。
山崎や白州、知多などの国産ウイスキーは一切無し。
メーカーズマーク3種とメーカーズマークを用いたカクテル2種を出品しておりました。
シナモンを用いたカクテルが柔らかな口当たりで、なかなか美味。
レモンを用いたものはそれなりのお味。
Maker's Mark 通常品・ミントジュレップ・46も試飲でき、46のコク深さが印象的でした。

参集殿内の「ウイスキー文化研究所」や「ザ スコッチモルトウイスキー ソサエティ」にも立ち寄りたかったのですが、人が多すぎて見送る。
ニッカやキリン、多くの地ウイスキーメーカーが出展している地場産業センターへ参ります。
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外から見ると空いていそうですが・・・・・。
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・・・・まあ、そうなるな。

4階の会場へ向かう階段が、あまりの人の多さに離合困難になっていた時点で察して余りある事態でした。
嘆いていても仕方がないので進みます。

<アサヒビール(株)・ニッカウイスキー>
ニッカはサントリーとは異なり、国産の現行ラインナップを揃えての参戦。
ブラックニッカなどの普及品は置かず、上級ライン、シングルモルト余市やシングルモルト宮城峡を中心に展示されていました。
一方で、最近の限定品「モスカテルフィニッシュ」などは無かったのですが、完売品ですので致し方ないことでしょう。
「ザ・ニッカ 12年」と「カフェモルト」、「カフェグレーン」をいただく。
「ザ・ニッカ 12年」は余市と宮城峡、そしてカフェグレーンをかけ合わせた商品です。
余市のスパイシーな加減、宮城峡の華やかな広がり、カフェグレーンの伸びやかな余韻が三位一体、相互に補完しあって味わいを形成しており好印象でした。

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<キリンビール(株)・キリンディアジオ(株)>
キリンのブースは、I.W.ハーパーやフォアローゼスといったバーボンウイスキーを中心に据えた出展です。
スコッチウイスキーの代表格ジョニー・ウォーカーも「プラチナム」まで試飲可能という太っ腹な配置でした。
国産では富士御殿場蒸溜所の直販および通販限定の「Blender's Choice シングルモルト」や「Blender's Choice シングルグレーン」、「シグネチャーブレンド」をラインナップ。
「富士山麓 Signature Blend」は初めて飲んだのですが、度数の高さ(50度)を感じさせない優しいタッチが印象的。
フルーティな甘味に始まり、バタークッキーの様な存在感有る味わいが広がり、最後に仄かなピートが香る。
計算されつくされた仕上がりで、熟成のピーク(マチュレーションピーク)を狙ったという謳い文句にも頷ける重層的な味わいでした。

続いては日本の地ウイスキー各社へ。

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<本坊酒造(株) マルス信州蒸溜所&津貫蒸溜所>
「クラフト」と呼ぶには大きな会社ですが、挑戦的なウイスキーを発表し続けている本坊酒造・マルスウイスキー。
Icons of Whisky 2017では「クラフトプロデューサー・オブ・ザ・イヤー」賞を受賞しました。
完売品・限定品を含めた豊富なラインナップでの参戦です。

まず「シングルモルト駒ケ岳 津貫エイジング」(59%、2274本限定、8640円、完売品)をいただく。
中央アルプス山麓・長野県駒ヶ根の信州蒸留所で生産した原酒を、鹿児島の津貫へ移動させて3年間熟成させた一品です。
津貫の熟成ポテンシャルを図る良い指標となりそうですが、これは面白い味わい。
バナナやレーズンバターサンドを思わせるこってりとした甘味を持ちながらも、後味は軽く、すこしピーティ。
若さはあるのですが、特異な熟成感を持ち得ており、この重心の低い甘さは鮮烈です。
Kavalanなど、タイワニーズウイスキーにも似た仕上がり。

続いて「シングルモルト駒ヶ岳 ダブルセラーズ Bottled in 2018」(46%、3800本限定、8100円、完売品)をいただく。
こちらは信州蒸留所の原酒を、信州と津貫それぞれで熟成させた上、かけ合わせた(ヴァッティングした)もの。
津貫エイジングに比べると若さが際立ち、軽やかで華やかな味わいです。
ちょっと樽材の香り(木香)が付きすぎている嫌いがあります。
もう少し加水を控えめにして度数を高めに設定した方が好ましく思われました。

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後程、本坊酒造のブースを再訪すると見慣れぬ焼酎瓶が二本ありました。
これは何だろうかと思い、お尋ねすると「津貫のニューポット」と「それを屋久島へ送ったもの」だとか。
熟成は2年も無いはずですが、しっかりと色づきが進んでおり、もう少しすれば味わいも追いつくのではないかと思われます。

そういえば鹿児島の日置市に新たな蒸溜所・嘉之助蒸溜所(かのすけじょうりゅうしょ 小正醸造)が誕生したそうです。
津貫蒸溜所の開所からわずか1年。既に操業ははじまっており、公開は2018年夏に予定されています。
鹿児島県は、全国でも珍しい複数のモルトウイスキー蒸溜所を持つ都道府県となりました。
2010年代以降では、北海道(余市・厚岸)・静岡県(御殿場・静岡)に次いでのことと申せましょう。
(※2018年初頭現在。モンデ酒造が稼働していれば山梨県も複数、東亜酒造が再開すれば埼玉県も複数となります。)

次はそんな北海道二つ目の蒸溜所のブースへ。
(※札幌酒精・サッポロウイスキーが自社蒸溜を行っていれば三つ目かもしれません)

イチローズモルトと隣接した配置で、どちらも長蛇の列が出来ていました。
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<厚展実業(株)厚岸蒸溜所>
余市蒸溜所に次ぐ、北海道第二の蒸溜所・厚岸蒸溜所(あっけしじょうりゅうじょ)。
ついにニューボーンの発売が開始されようとしています。
上の写真に映っている眼鏡の人物が蒸溜所長の立崎勝幸氏です。
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試飲品目は4点。
ニューメイク(アンピーテッド、63.5%)、ニューボーン(ノンピーテッド、バーボン樽熟成、60%)、
ピーテッドニューメイク(63.5%)、カスクサンプル(ピーテッド、バーボン樽熟成1年2ヶ月、62.7%)です。
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全体的にアルコール度数が高く、香り立つ酒精感にふらりとしますが、口に含んでみると味の骨格がくっきりした骨太系です。
しっかり一本筋の通った味わい。なるほどアイラ島をイメージしたという謳い文句もうなずけます。
特にピートは興味深く、ニューメイクの時点だと若干生臭くエグみを感じますが、
カスクサンプルを飲むとヨード香が出てきており「アイラっぽい」妖艶な仕上がり。
非常に重心の低い味わいで重厚、バスウーファーの様です。

ニューボーン「厚岸NEW BORN FOUNDATIONS1」は現在出荷中で200ml、3300円を予定。
発売開始は2018年2月27日(火)とアナウンスされています。
惜しいかなこのニューボーンの味にはあまり関心を惹かれなかったのですが、3年、5年、10年と熟成が楽しみな商品群です。

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<(株)ベンチャーウイスキー 秩父蒸溜所>
ベンチャーウイスキーのブースは、17時の閉会時刻まで一度も列の途絶えない人気ぶり。
スタッフの方々の労苦が忍ばれます。

写真真ん中のパッケージは2月下旬に発売予定の「Malt&Grain Limited Edition(モルト&グレーン リミテッドエディション)」。
アルコール度数48%、9000円前後での発売が予定されています。
いわゆるホワイトラベル、モルトアンドグレーンの限定版です。
以前、ブラックラベルが出ておりましたがその後継となりましょうか。

この商品のほかに、3月までにもう一つの限定版「Japanese Blended」が発売予定とか。
こちらも出荷前ではありますが品評会には出展されています。
WWA2018日本予選では、富山県の若鶴酒造「Moon Grow 1st」やキリンの出品を抑えて、
ベストジャパニーズ・ブレンデッドウイスキー(カテゴリ:リミテッドリリース)に輝きました。
出荷前から同社のブレンド技術を見せつけた格好です。
→追記:その後、WWA2018で世界一を受賞しました。レビュー記事リンク

残念ながら訪問時には、6本用意したという「LimitedEdition」試飲用ボトルは全て品切れ。
代わりにニューポット2種と「秩父 IPA」・「カスクサンプル(ブレンデッドウイスキー)」を試飲させてもらいました。

ニューポットはピーテッドのものとフロアモルティングのもの。
特にフロアモルティングの香り立ちは素晴らしく、すらりと伸びゆくスミレの様な上立ち香が印象的でした。
含み香は蜜を思わせる甘い感触で、流石に酒精感に舌を刺激されますが、これなら短期熟成でも美味しそうに思われました。

「秩父 イチローズモルト IPA カスクフィニッシュ 2017」57.5%は、6700本の限定品。
インディアペールエール(IPA、上面発酵のビール。アルコール度数が高く、ホップの使用量が多い)を用いた樽でフィニッシュされており、
ボトラーズ「e-Power」やイベント「福岡ウイスキートーク」ではシングルカスクものが出展されました。
飲んで分かる圧倒的なホップの旨味。苦味と香味が同時に立ち上がり、迫力のある味わいです。
ただしそのハイプルーフにも関わらず、非常に麦感が強く、ともすれば麦焼酎ライクな味とも評し得ます。
ある意味、ウイスキーらしい蒸溜と熟成の魔術(麦という穀物が全く別の味わいに変化する面白み)とは別個の美味しさとも思われ、すこし悩ましい商品でした。

最近ではアイルランドの「ジェムソン」がスタウト樽熟成のビアバレルエイジド・ウイスキー「Caskmates(カスクメイツ)」を出荷。
アイリッシュ、ジャパニーズと新たな流行になるかも知れないビール樽熟成(またはフィニッシュ)。
麦×麦という組み合わせがどういった反応を生むのか、今後も注目したい存在です。

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<笹の川酒造(株)安積蒸溜所>
イチローズモルトの母、福島県郡山市の笹の川酒造では2016年にウイスキー製造を再開。
安積蒸溜所(あさかじょうりゅうしょ)産の半年熟成ニューボーンなどが出品されておりました。
写真真ん中の三点はそれぞれ左から、バーボン樽、アメリカンホワイトオーク新樽、ミズナラ新樽。
いずれも定価6000円で、アルコール度数は60度前後。

ミズナラ新樽を試飲させてもらいましたが、流石に若く、いわゆるミズナラの風味といったものはあまり出ていない様子でした。
東洋的な風味や白檀調の香り。そうしたミズナラの勝負どころはこれからの長期熟成にあるものと申せましょう。
一方でバーボン樽は既に甘味が出てきており、樽ごとの熟成具合の違いが分かりやすい優れたサンプルボトルシリーズと言えそうです。

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<ガイアフロー(株) 静岡蒸溜所>
静岡蒸溜所はニューメイク2種、ニューボーン(約200日熟成)1種が出品されていましたが、残念ながら全て完売。
静岡クラフトビール&ウイスキーフェア2018を楽しみに待ちましょう。

ところで同社取扱のインドのウイスキー「アムルット フュージョン」をいただきました。
最近は国分グループ本社もゴアに本拠をおく「ポール・ジョン」の取扱を開始し、存在感を増しつつあるインディアン・ウイスキー。
樽香がありつつもハイカカオチョコレートを思わせる深い味わいが感じられ、かなり洗練された味でした。

インドでは二条大麦ではなく六条大麦の使用が主流だとか。
ウイスキーの世界シェアでトップを走るインド勢。その動向は興味深いところです。

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さて、これで国内クラフト系の出展は廻り終えたかな、と思ったのですが、出口近辺で今一つの蒸溜所の出展に気が付きました。
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<(株)都光酒販 & 長濱蒸溜所>
「謎のアイラ島ウイスキー」グレンジストンや台湾の南投蒸溜所のウイスキーを輸入する都光酒販(台東区)のブースの隅っこに滋賀県の長濱蒸溜所が出展していました。
よくみると清井崇社長本人が立っておられ、ニューポットの他、ニューメイクの試飲が出品されています。
後から調べてみると、都光酒販も長濱蒸溜所も株式会社リカーマウンテンのグループ会社だったのですね。

長濱蒸溜所は、地ビールの醸造所「長濱浪漫ビール」が手掛ける蒸溜所。
ビールの文脈を汲み取った蒸溜をされており、ローストモルト原酒(真っ黒なウォッシュで仕込む)など世界でも類を見ない事に挑戦しているディスティラリーです。
マイクロディスティラリーならではの小回りの効いた展開が特徴的。

リカーマウンテン銀座777店限定で展開されているプロトタイプ原酒(現状のところミズナラ・バーボンの2種)などについてお話しつつ、ニューメイクをいただく。
ブーケの様に花の香りが咲き乱れるNon-Peated(バーボン樽、1年熟成)が印象的でした。
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会場ではオープンセミナー「ういすきー、たのしい、だいすきー」と題して、
ウイスキー文化研究所の土屋守先生や、秩父蒸溜所の吉川由美さんが「転売」「(昨今の)ウイスキーブーム」などについて刺激的なトークを展開。
思わずウイスキー片手に聞き入ってしまいました。

5年前に比べて3倍近い値上がりが生じているプレミアム市場。
その一因である「ブーム」やネガティブ要素である「転売」は、製作者・愛好家の双方にとって非常に悩ましい問題です。
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16時30分からは、ウイスキー祭スタッフ有志によるバンドライブがサプライズ開催。
吉川氏がボーカリストを務め、会場も大盛り上がりでした。
良くも悪くもアマチュアリズムが通底した秩父ウイスキー祭ですが、こうした手作り感あるサプライズは嬉しいものです。

喫煙所では葉巻が炊かれ、歩行者天国では車座になってお酒を飲み交わす人々もいる。
なんとも大らかな祭りで、都市部の大規模イベントとは違った風情があります。
その素敵な「敷居の低さ」こそが秩父ウイスキー祭の魅力ではないかと思われました。
人はもう、お酒に酔う以前に人に酔いそうな位に多くいらっしゃいますが・・・。

16時45分、ゲリラライブが大盛況を迎え、まさに宴もたけなわです。
最後に有料試飲で〆ることにしました。
せっかくだから秩父らしいお酒を探します。
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< Highlander inn Craigellachie & Highlander inn Tokyo >
スペイサイドにある「世界最高のモルトバー」ハイランダー・インのブースでは数多くの有料試飲が出品。
普段なかなか手が出ない高級モルト(例えば50年物)でも、こうした機会ならば飲用でき有り難い事です。

短期熟成のものばかり飲んでいたので長期熟成物に手が伸びそうでしたが、初志貫徹。
Whisky Festival 10周年記念ボトル「Ichiro's Malt 秩父 2011」(写真中央)をいただきます。

1ショット1000円也。
オーナーの皆川達也氏とお話しつつ、お酒をいただきました。
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<レビュー> イチローズモルト 秩父2011 (ウイスキーフェスティバル 開催記念ボトル)

【スペック】
・樽番号 #1435、Ex-Hanyu Hogshead
・羽生蒸溜所のホッグスヘッド樽、中にはかつて羽生の原酒が詰められていた。
・秩父蒸溜所にて2011年7月に蒸溜した原酒を樽詰め、2017年10月に瓶詰めの6年熟成品。
・ノンピート原酒を使用している。
・アルコール度数59.9%。
・限定200本(フェス当日150本、ウェブ抽選50本)。
・価格17,280円。

【テイスティングノート】
・温泉の析出物を思わせる鮮やかな鬱金の水色。
・上立ち香は、しっとりと甘く、柿やカラメルナッツを思わせる。
・口に含むと、非常にスムースな口当たり。ジューシー。
・甘栗の様な香ばしさが現れ、ほくほくとした柔らかい甘味が広がる。
・舌で転がすと、円やかな性質が際立ちシナモン、蜂蜜、焼き林檎の様。
・余韻は長く、甘くクリーミー。穏やかな木の香りがふわりと香る。

なるほど、確かに羽生蒸溜所ライクな味わいです。
以前、東亜酒造のシングルモルトウイスキー「秩父8年」(年間生産2000本)を飲んでいたのですが、
ピート系とノンピートという違いはあれど、柔らかな口当たりと甘い余韻にその面影を思い起こしました。

父から子、そして孫へ。
どこかの高級腕時計ではありませんが、そうして確かに紡がれてきた酒造りの歴史。
祖父の起こした会社の原酒樽。それを孫が引き継ぎ、再び用いるという秩父蒸溜所の物語。
「秩父2011」はその歴史が明確に表現されたボトルと言えます。

お酒という飲み物は年齢制限のある大人の飲み物です。
そうである以上、物自体の味わいと同時に、その来歴を楽しむというストーリー消費的な喜びがあると思います。
特にウイスキーは、長期の熟成によって様々な人の思いが掛け合わされ、消費者のもとへと届きますが、
そうした来歴やコンテクストに思いを馳せるのもまた一興。そんな事を考えさせられる一杯でした。

時刻は17時。
6時間の会期は終わり、祭りは次の祭りへと動き出しました。

会場を後にして、街へと向かいます。
ほろ酔い頭を抱えて、また新たなる祝祭へ。

→ See You, Next Festival!

by katukiemusubu | 2018-02-20 19:00 | 登山・トレッキング・温泉
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