【イヤホンレビュー】 INAIR(インエアー)M360

感想と評価。



c0124076_23443048.jpg
新感覚のイヤホン、IN AIR(インエアー)を聴いて参りました。
「世界初!耳に入るスピーカー」をうたい、2018年6月末の出荷開始を目指して準備が進んでいる製品です。

謳い文句通り、イヤフォンというよりはスピーカーに近い音を奏でる野心的な一品。

非常に面白く思いましたので、
ヘッドフォン祭の記事とは別立てで製品試聴レビューをアップいたします。

発売はもう少し先ですが、既にクラウドファンディングサイトGREEN FUNDING by T-SITEで出資が募られており、
この記事を書いている時点(2018年4月29日)で目標金額100万円を大きく上回る1450万円の出資を集めることに成功しています。
出資ページへのリンクはこちら。早期支援特典で予定価格(11000円)よりも安く製品を得ることが可能です。

メーカーは日本のアンドカラー社(& COLOR INC.)
オーディオ機器の輸入や商品企画を手がけている会社です。

ヘッドホン祭にて代表の佐川大介氏のお話を伺うと、元々はスピーカー畑の出身とか。
Western Electric社の大型ホーンスピーカーのメンテナンスやレプリカ作成に携わって来られたとの事でした。

INAIRを手に取ってみると、ところどころにスピーカーライクな仕掛けが施されており、「なるほどスピーカー畑出身…」と得心する所しきりです。
「インエアーエルゴノミクス方式(インエアー方式)イヤースピーカー」と称されるこの製品は、ハイエンドスピーカーを思わせる独自技術の塊になっています。

最大の特徴は、音道管(音響管)を廃しドライバーユニットそのものを外耳道に入れるというコンセプトを採用したこと。
カナル型イヤホンの場合、発音体であるドライバーユニットは筐体の内部に収まっており、筐体内部から出た音は音道管を通じて耳の穴へ導かれるのが通常です。
一方、INAIRの場合は振動板直径6mmという超小型のドライバーユニットを用いることで、ドライバーユニットそのものを筐体の外部に配置しています。
発音体が主筐体から飛び出した形になっているのです。
その発音体本体が外耳道内に入り込むため鼓膜との距離は極小です。

6mmのドライバーユニットを用いて発音体と鼓膜との距離の極小化を狙ったモデルとしては、
他にもYAMAHAのEPH-200がありますが、INAIRはその狙いを更に突き詰めた様な印象があります。
なにしろEPH-200には存在していた耳栓型のイヤーチップすら無く、発音体そのものが耳の中に入ってしまうのですから。

発音体本体が耳の中にあるお陰でINAIRの遮音性は実に良好です。
ことさら音量を上げること無く音楽を楽しむことが出来る事は本機の魅力の一つと申せましょう。

c0124076_23443124.jpg
円筒形の主筐体の外側に球形のドライバーユニットが位置するデザインはアポロ宇宙船の様(写真下)。
しかし、このSFライクな意匠は単に特徴的なだけでなく、音響的な意味をも併せ持っています。

主筐体とドライバーユニットをつなぐチューブ。
このチューブを通じてドライバーユニットの背面側にも音(空気圧)が抜ける様になっているのです。
そのためドライバーユニットは背面の圧力や回析する音に影響されずスムースな駆動が可能になっています。
B&Wのチューブローディングを思わせる設計であり、難聴予防にも好適。実に興味をそそられました。

振動板直径6mmというとサイズが非常に小さく「果たして低音は出るのだろうか」と心配になりますが、そのあたりの対応もしっかりとしています。
球状に形成されたドライバーユニットとそのグリルは後半分をAIR TUBE(エアーチューブ)と称されるシリコン部品で包まれていますが、これが後面に放射される音をしっかり確保(写真上)。
放射音を拾って音漏れを防止すると共に、音の振動を皮膚表面や骨まで伝える役割を担っており、その機能はさながらウーハーです。

グリルは前方・後方を貫通しているため、エアーチューブに確保された音は耳道に対しても反射。
ホーン式のスピーカーめいた仕組みで音に量感を与えています。

周波数特性は10Hzから20kHzであり、スペックシートからも低域の沈み込みの深さが伺えます。
重厚な低音域から繊細な高音域へ。もちろん中音域もしっかりと出力されるオーディオ機器に仕上がっておりました。
キレがよく、鮮やかな音色です。

実際に使用する時の構造は「三段重ね」です(はじめの写真のディスプレイ参照)。
まず球状のドライバーユニットがあり、それをAIR TUBEで包みこみ、更にその上からエアーキャップ・スポンジをかぶせる。
この異種素材 三段重ねの構造により、ドライバーユニットは外耳道内に浮いた様な形で配置されることになります。
高級スピーカーに見られるフリーエッジ構造みたいな構成です。

フリーエッジ構造の利点は歪みの少ない音を狙いやすいという点にありますが、INAIRの音も歪みが少なく高解像。
解像感に優れており、微細な音まで聞き逃すことがありません。

それと同時に驚かされるのは音場の広さ。
フリーエッジ的な構造によるものか、鼓膜との近さが奏功するのか、開放型のヘッドホンを思わせる広大な音場表現が鮮烈です。
頭内定位の極北といった具合で、頭のなかにコンサートホールが出来た様な立体感のある音響表現が楽しめます。

三段重ねのそれぞれの層が空気を含んでおり、装着感も比較的良好。
なにしろ軽いため、付けていることを忘れそうになります。

通常のイヤホンの様に軽く外耳道の入り口に当てる様な使い方も可能ですが、その場合はAIR TUBEが効果を発揮せず高音が際立つ癖の強い音になります。
グッと外耳道側へ押し込んで密着させると音のバランスが良く、広大なサウンドフィールドを楽しむことが出来るため、こちらがお勧めと申せましょう。
アルミ無垢材削り出し筐体の材質やスポンジその他の精度も高く、痛みの原因となるバリなども見受けられませんでした。

全体として見てバスレフ型スピーカーやホーンスピーカーを連想させる作りになっており、音そのものも(頭外定位と頭内定位という違いはあるにせよ)スピーカーライク。
オープンエアー型イヤホンよりも音源との距離が近く、音を伝える空気の流れがよくよく考え抜かれたオーディオプロダクトでした。
これで販売価格1万円台前半(無線モデルは後半)というのですから驚異的なコストパフォーマンスです。

現在発売予定のモデルは、有線モデルのM-360と無線モデルのM-360bt(Bluetooth接続、apt-X対応)の二種類。
連続再生時間が5時間と電池の持ちが短めであることが気がかりですが、無線モデルが初めからラインナップされている事も嬉しいポイントです。

欲を言えば、将来的には極限までインエアー方式の音質を追い込んだ「高級モデル」も欲しい所。
現状でも素敵な音なのですが、実際に聞いてみると、他方でまだまだ高音質化の伸びしろがある様に思えました。

例えばの話ですが、
・有線モデルのマイクを廃止し
・リケーブルが可能となり(現在は不可能)
・ヤマハが使用している様なハイレゾ対応の(40kHzまで出る)6mmドライバーユニットが採用されれば
これほど嬉しいことはありません。

そんな「高級モデル」が開発されたならば即座に購入することでしょう。

通常のクラウドファンディングでは製品化がサクセスし、リターンが届けばそれでバイバイですが、
INAIRの場合、製品化の今後もその先も楽しみになる新感覚の音響機器です。

まずは製品化を楽しみに待ち、そして更なる展開を待望したいと思います。

関連リンク:メーカー公式Twitter

[PR]
by katukiemusubu | 2018-04-29 23:47 | Ecouteur(ヘッドホン) | Comments(0)
<< 【レビュー】イチローズモルト ... 【レビュー】ロッテ 生チョコパ... >>