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【レビュー】ザ・ニッカ40年 (ニッカウヰスキー)

感想と評価。
THE NIKKA 40yo Premium Blended Whisky 。




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<スペック>
・2014年(平成26年)9月30日発売。
・アルコール度数43%、容量700ml。参考小売価格50万円(税抜)。
・ニッカウイスキーの創業80周年を記念して発売された「ニッカ史上最高傑作(販売当時のプレスリリース)」を自らもって任ずるするウイスキーです。
・ザニッカ40年の総生産本数は1,000本。うち700本が限定商品として日本国内で販売されました。

・このウイスキーの最大の特徴は、最低熟成年数40年というニッカの歴史上でも類例のない超長期熟成原酒の使用にあります。
・使用されている最も若い原酒でさえ1970年代生産のものなのです。

・代表的な使用原酒は、1945年の余市蒸溜所原酒(69年熟成、現存最古のニッカウイスキー)、1969年の宮城峡蒸溜所原酒(45年熟成、蒸溜所開設初年の品)など。
・ほとんど伝説的なモルトウイスキーが使用されており、サントリーの「響35年」や「山崎50年」と同様、ジャパニーズ・ウイスキーの歴史を語る上で欠かせない、記念碑的な商品と言えます。
BNBS(レビュー記事リンク)の60年熟成モルト使用にも驚かされましたが、こちらはエイジドでこのラインナップ。ニッカの並々ならぬ決意が伺えます。

・中でも1945年の余市モルトは、竹鶴政孝が陣頭指揮にあたっていた当時のウイスキーであり「マッサンのつくったウイスキー」そのものが飲めるという点でも希少な一品です。
・ニッカにしては珍しく、長期熟成のミズナラ樽原酒も用いられており「ニッカのミズナラ」が味わえるという点も嬉しいところです。

・ブレンダーは佐久間正(ニッカウヰスキー社・チーフブレンダー)氏。
・ニッカのリリースしてきた中で最長のエイジ物ということで、装いも丹念に作られています。
・サンドブラスト(江戸彫り)が施されたクリスタルガラスのボトルに、積層木笠のコルク栓。
・化粧箱に専用グラス、専用ブックレットまで付属しており、豪奢なつくりです。


<短評>
・その味は、ブレンデッドウイスキーの醍醐味そのもの。
・数々のシングルモルト/シングルグレーンの個性を表現しつつも、全体として鮮やかな調和を持ち得ています。
・複雑ながらも軽妙、軽妙ながらも洒脱。鮮やかで穏やか。
イチローズモルトJBWと同様、超熟のブレンデッドでしか味わえない地平に達しており、機会があればぜひ一飲をお勧めしたい一品です。

・味わいそのものも素晴らしいのですが、より印象的であったのはその余韻。
・幾重にも含み香が広がり、一口飲むだけでも驚くほどに長く余韻が続きます。
・グラスと向かい合い、時間をかけてじっくりと味わいたいお酒です。


<テイスティングノート>
・茜色の水色。まさに琥珀と言うにふさわしく、ほのかに淡紅色の光沢を湛えている。
・濃厚ながらも甘く、甘いけれども奥深い、纏まりのあるクリーンな上立ち香。
・一呼吸するとシンプルで纏まりのある香りの中に、数多くの要素が含まれていることが感じられる。

・はじめに感じられるのは白檀を思わせる香木調の香り。とても心地の良い酒精感。
・それが樽香を伴ってバニラの香りに変じ、洋梨、ミルクチョコレートへと移り変わっていく。
・纏まりがありながらも甘く色鮮やか。十二単の様に折り重なっている。
・そして、その重なり合いは口に含むことでミルフィーユの様に優しくほどけてゆく。

・力強くなめらかな口当たり。フローラルで蜂蜜の様に濃密な基調香が立ち上る。
・凝縮感は静かにほどけていき、多層的な味わいが展開される。
・味わいは、大きく分けて三段に感じられた。

・一段目の味わいは黒糖を思わせる濃厚な甘さ、ポタージュのねっとりとした旨味。
・これがチーズの様な発酵感を挟み、貴腐ぶどうや巨峰のレーズン、ドライフィグを思わせる老成した味わいへとつながる。
・しかし、この熟成感はそこに立ち止まることなく徐々に若やいで広がっていく。
・二段目の味わいは若く瑞々しく、メロン、ライチ、マスカット、うり、スイカ、枇杷のニュアンスが有る。
・舌で転がしながらそのフルーティーな瑞々しさを味わっていると、ミントを思わせる香味が立ち上がってくる。
・三段目の味わいは深い北の森を思わせる。ほのかな潮気と奥深い森の香り。
・胡椒などのスパイス、温めたミルクのコクや、焚き火で弾ける木とその暖かさも感じられる。

・余韻は素晴らしく長い。どこまでも連綿と続いていく。
・含み香はほのかにピーティ。細いけれどもはっきりとしており、筆で描いた様な印象がある。
・餡のこってりとした甘さと蜂蜜の朗らかな甘さ、それがピーティな煙香とハーブを思わせる香味に縁取られている。
・香味にはハーブの他、クローブや硫黄を連想させる一段深いニュアンスも存在している。
・一瞬のガラムマサラの辛さの後、伽羅やラベンダーを思わせる芳香へと架橋されていく。
・暖色と寒色とが、組紐のように長く精細に編まれていく。

・加水するとスモーキーフレーバーの線が太くなり、同時に一層フルーティーで華やいだ印象になる。
・レモンの弾ける様な酸、煎りたてのピスタチオの香味、あんずや龍眼を思わせる濃醇な甘さが印象的。

・超長期熟成酒ならではというべきか、非常に多くの香気成分や風味が含まれている。
・しかし、その味はゴチャゴチャにこんがらがっている訳ではない。
・むしろ、非常によく整理されている。
・多層的な段階に分かれており、最後は、寄せては返す波の様に相互にリフレインする。
・春夏秋冬、巡る季節と続く時間そのものが表現されている様な珠玉のブレンド。

by katukiemusubu | 2018-06-16 23:38 | 生活一般・酒類・ウイスキー
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