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【レビュー】イチローズモルト 秩父10年(2008-2018、シングルカスク #180)

感想と評価。
Ichiro's Malt CHICHIBU / Malt Dream Cask For BAR Te・Airigh




【レビュー】イチローズモルト 秩父10年(2008-2018、シングルカスク #180)_c0124076_19071801.jpg
<スペック>
・2008年12月蒸留、2018年12月瓶詰。
・正真正銘、イチローズモルト初となる10年物のシングルモルトウイスキーです。
・「モルトドリームカスク・フォー・バーチェアリー」の名前の通り、秩父のバー「チェアリー」のプライベートボトル。
・「チェアリー」の店主であり秩父ウイスキー祭の実行委員長でもある横田武志氏が、肥土社長と共に仕込んだ一作です。
・ボトリング数は183本。個人所有のオーナーズカスク(MDC)ですので一般流通はありません。
・アルコール度数は60.8%のカスクストレングス。バーボン樽で熟成されており、熟成期間はジャスト10年。
・特徴的なパッケージングに目を引かれますが、横田氏いわく、これは「チェアリー」の外観を描いたものだとか。

・2019年1月現在、秩父蒸溜所の10年物の長期熟成シングルモルトは2つ存在しています。
・一つがこの「チェ・アリー」ボトルで、もう一つが千駄木の老舗酒屋「伊勢五」のボトルです。
・いずれも操業初年度の2008年12月に蒸留されたウイスキーであり、バーボン樽熟成、大麦の品種も同じOptic。
・カスクナンバーで言えば「チェ・アリー」が180番、「伊勢五」が212番ですので、「チェ・アリー」の方がちょっぴり古参です。
・「伊勢五」ボトルは、アルコール度数62.8%、ボトリング数は150本。お店での販売もされましたが、もちろん完売しております。
(※なお「伊勢五」のボトリングは2018年11月ですので、正確には「10年熟成」ではなく「9年11ヶ月熟成」。初の10年熟成は「チェアリー」となります)

・操業初年度のイチローズモルトは、これまでにも何度かリリースされておりますが、それらは比較的「固め」のあじわいが印象的でした。
・現在知られているイチローズモルトの流麗なあじわいとは少し異なる印象で、初年度らしい緊張感と試行錯誤が伺えるものでしたが、では、10年寝かしたものはどうか。
・テイスティングノートへ参りましょう。


<テイスティング・ノート>
・シードルを思わせる綺麗な黄金色。
・こっくりした上立ち香を持っており、まろやか。穀物のミルク粥を思わせる。
・そこに刺激的な酒精感が乗り、雨に濡れた野原の様な青さが加わる。
・かすかにオレンジピール、オリーブオイルの予感。
・口当たりはすっきりしているが、すぐに複雑な味の洪水が押し寄せる。
・基調香はモルティ。ただし樽の影響が強いのかバーボンめいた雑穀感もある。
・味わいは、穀物の旨味にあふれ、焦がした木の苦味へ続く。
・それぞれの主張が強く、若干とっちらかった印象。
・そこにアルコールの刺激が合わさり、ミントを思わせる清涼感に変わる。
・漢方薬、浅田飴、そしてシロップへ。甘さと苦味、香味が入り乱れる。
・余韻は比較的短い。ほのかにオイリーな含み香。
・少し(3分の1程度)加水するとオイリーさが出てくる。
・加水時はフルーティで柔らかな味わい。しかし漢方薬は健在。


<飲み終えて>
・ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所、初の10年熟成。意外にもアルコールの刺激がパワフルで、比較的若やいだ感じでした。
ウイスキー祭記念ボトル(レビュー記事リンク)に用いられている2010年以降蒸留のものと比べると、熟成感が控えめなのです。
・ブラインドティスティングをしたら、蒸留年を取り違えてしまうかも知れません。
・上のティスティングノートでは何度か「漢方薬」という言葉を用いていますが、ご存知の通り、一口に「漢方薬」といってもその種類は何百種もあります。
・その種類を利き分けられる味わいであればより良いのですが、残念ながら現時点では「漢方薬めいた感じ」があるのみで、味わいは未分化に思われました。
・つまり10年熟成ではありますが、まだまだ発展途上であり、比較的「固め」の印象なのです。
・しかし、これまでの初年度蒸留では感じられなかった、甜菜シロップ的な「円やかさ」を持ち始めていることにも注目すべきでしょう。
・この「円やかさ」に、味わいの芽となる「漢方薬めいた感じ」。優れた熟成ポテンシャルを有していることも間違いありません。
・これらの芽吹きが期待されるのは15年目あたりかと想像しますが、初年度蒸留原酒の成長が楽しみです。

by katukiemusubu | 2019-01-22 19:15 | 生活一般・酒類・ウイスキー
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