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ポタ研2019冬 感想レポート

フジヤエービック主催「ポタ研2019冬」の会場レポート。
訪問した各社のブースについて、感想・試聴レビュー等を書き置きます。




2019年2月2日(土)開催、ポタ研 2019冬へ行ってきました。
ヘッドフォン祭へは時々行っておりましたが、ポタ研へ行くのは大雪に見舞われた2014冬以来の5年ぶり。
こうして記事を書くのは2013年の冬以来、6年ぶりです。

<Dita>
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シンガポールのDita Audioからは設立71周年記念モデル Project 71 が出展。
新開発のダイナミック型ドライバーユニットを搭載し、真鍮と縞黒檀の筐体が印象的なイヤホンです。
製造は日本で行われているそうで、いつの間にか拡大していた日星間の賃金格差を思い知らされます。

空間表現に優れており、暖色系で少し粘りのある音色が特徴的。
どっしりとした低音域が粘りを感じさせるのですが、Ditaらしい鮮やかな高音域も健在です。
縞黒檀(マカッサルエボニー)ということで乾いた音なのかな、という先入観を持っていたのですが、
真鍮との組み合わせがよく決まっており、適度に瑞々しさのある音が楽しめました。

インピーダンスは16Ωとのことでしたが、直挿しでは少し鳴らしづらく、ヘッドホンアンプを用いると丁度よい感じ。
ある程度の駆動力を必要とするイヤホンに思われました。予価は13万円前後とのこと。

<Final>
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日本のファイナルからは平面磁界型ヘッドホンの新作プロトタイプが出展。
型番はD6000とのことで、市価40万円のフラグシップモデルD8000の弟分となるそうです。
一部に3Dプリンタを利用しており、マグネシウム合金を用いた筐体デザインに目を惹かれます。

発売時期や価格は未定とのことでしたが、密閉型のD8000とは異なり、開放型の予定とのこと。
00年代初頭に一世を風靡した耳掛け型のリバイバルを企図しており、目標は「究極のながら聴き」だとか。

径32mmという新開発の平面駆動型ドライバーユニットを採用。
良い意味で平面ユニットらしい鳴り方をしており、音の量感と開放感が両立されています。
帯域のバランスも偏りが感じられず、サイズにとらわれない音場の広さを持ち得ていました。

D8000の弟分らしく、しっかりと低音域が沈み込み、朗々と中音域が唄い、繊細な高音域へと架橋されています。
音色の濃さもD8000ほどでは無いにしろ、存在感抜群。静電型とは異なる"ダイナミック型らしい"濃度です。
価格にもよりますが、製品化されればヤマハ YH-5M以来のマイ平面駆動型として購入を検討したい処。

<Sound Potion>
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東京のガレージメーカー サウンドポーションからは光・同軸入力のDACアンプ FluXiaMが出展。
入力は1端子2系統、デジタルのみという割り切った仕様で、24bit/192kHzまで対応。
出力は3.5mmアンバランス1系統のみで、機能もりもりのヘッドホンアンプとは一線を画しています。

DACチップはテキサス・インスツルメンツのPCM5122。
ヘッドホンアンプ部はディスクリート構成とのことでした。

その出音は非常に澄んでおり、夏の夜を思わせるノスタルジックな涼やかさを湛えています。
低域から高域までバランスよく出ていますが、磨き上げたような高音域が印象に残りました。
その仕様と言い、音色と言い、枯山水のようなヘッドホンアンプです。

<KOJO>
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青森の電源設計・開発メーカー 光城精工からは同社初となるイヤホン KEYAGU KJB-01が出展。
"けやぐ"とは津軽弁で親友という意味。ユーザーに長く寄り添えますように、との願いが込められているとか。
金属加工を得意とする同社らしく、真鍮製の筐体が特徴的です。

広帯域に対応したスーパーエンプラ振動板を採用しており、ダイナミック型1発でハイレゾ対応。
ハウジング素材と振動板ユニットの相性が素晴らしく、超高音域までしっかりと出力されるのにサ行が刺さりません。
密閉型にしては重低音(二桁ヘルツ)の力感は控えめなのですが、中低音から超高音までストレスフリーに伸びています。
かろやかに響きが付加され、空間表現が上手い。モニター系というよりは美音系の仕上がりです。

MMCX方式のリケーブルにも対応。
出荷状態でアセンブリされているケーブルもこだわりの仕様で調達に時間を要していましたが、
4月頃に発売できそうということでした。予価6〜7万円とのこと。

<PROCOM Dr.TAMURA>
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埼玉の中古部品ショップ兼DIYメーカー プロコム パーツドットコムからはお弁当箱を用いたポータブルアンプが出展。
サブミニチュア管やニュービスタ管がモジュール化され、自由に"球転がし"が楽しめる脅威のハイブリッドアンプでした。

その構造は、初段が真空管で、後段(増幅段)がオペアンプ。
構造そのものはよくあるハイブリッドアンプですが、話を伺って驚いたのは初段の動作電圧です。
YAHAアンプなどによく見られる12Vではなく、37Vまで昇圧した上での駆動。

サブミニチュア管であれば十分"美味しいところ"までもって行けそうな真空管の動作電圧です。
ビンテージのTubeでありますので、聴覚上の歪みやマイクロフォニックノイズは当然あるのですが、
優れて真空管アンプらしい、コシのある音色と暖かさ、柔らかさを持ち得ています。

お弁当箱をくり抜いた簡素なモデル(オールドタイム)のほかにも、
深セン製のエンクロージャーを備え、マイコンで電源投入タイミングを制御するモデル(OLD TIME)も存在。
ノリタケの新世代真空管Ntubeを積んだものを聴かせてもらいましたが、繊細な音の質感が感じられ、好感触でした。

<その他>
JVCケンウッドのブースでは、三種の試作品(内部構造はシークレット)が出展。
それぞれは筐体構造の時点で異なっており、とくに木製A・Bの音色の違いが興味深い展示でした。

Oriolus(オリオラス:深センに本拠を置く日本・中国のジョイントブランド)からは静電型ハイブリッドイヤホンが出展。
静電型らしく高音域の繊細さは圧巻の出来栄えでしたが、すこし曲を選ぶ印象です。
中〜低音にストンと落ちている部分があり、多段ドライバ(BA型?)とのつながりが今ひとつでした。

香港のカスタムIEMメーカー FAudioからも静電型ハイブリッドイヤホン Model Yの投入が予告されていますが、
この"専用アンプを要しない静電型ユニット"は相当値段が張るらしく、Oriolus静電型の予価は30万円前後とのことでした。

FitEar ESTや上記の2機種などの静電型ハイブリッドが登場する一方、
ソニーはシグニチャーシリーズ IER-Z1Rにおいて仮想同軸&ダイナミック型ツィーターを採用。

BAドライバーの数ばかりを競ってきた感のあるハイエンドIEMの世界も、
00年代前半のポータブルオーディオ黎明期を思わせる混沌と創造性が戻りつつあり、喜ばしい限りです。

by katukiemusubu | 2019-02-03 02:33 | Ecouteur(ヘッドホン)
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