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【レビュー】THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY 2019 スパニッシュオークシリーズ 3種

2019年(平成31年)2月26日発売。
数量限定商品「ザ・エッセンス・オブ・サントリーウイスキー 第二弾(スパニッシュオークシリーズ)」全三種の感想と評価を書き置きます。

Review:THE ESSENCE of SUNTORY WHISKY 2nd Release(2019)





レビュー対象の商品名は以下の通りです。
・シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 スパニッシュオーク (YAMAZAKI Distillery Spanish Oak 9yo)
・シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 リフィルシェリーカスク(YAMAZAKI Distillery Refill Sherry Cask 10yo)
・シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 モンティージャワインカスク (YAMAZAKI Distillery Montilla Wine Cask 9yo)
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山崎・白州・知多の三蒸溜所からそれぞれ一品が発売された第一弾とは異なり、
今回のザ・エッセンスは山崎蒸溜所をフィーチャーした品揃えとなっています。

副題「スパニッシュオーク・シリーズ」の通り、
山崎蒸溜所の創業当初から使用しているスパニッシュオーク製の樽による樽熟成をフィチャーしたシリーズです。

ウイスキー樽に用いられる木材は、大きく分けて3つの系統が存在します。
すなわち北米産のオーク、欧州産のオーク、日本産のオークです。

北米産はバーボン樽の材料として知られるアメリカンホワイトオークが代表格。
日本産は香木調のアロマがつく事で知られるミズナラ(ジャパニーズオーク)が代表格。

一方、ヨーロピアンオークですが、これは更に3つに細分化出来ます。
北欧産のオーク、フランス産のオーク(フレンチオーク)、そしてスペイン産のオーク(スパニッシュオーク)です。
このうち、最も利用量が多いのがスパニッシュオークで、ヨーロピアンオークの代表格と言えます。

北欧産はもっぱら家具用で、あまりお酒の熟成に用いられることははありませんが、
フレンチオーク(別名:セシルオーク)はコニャックを始めとしたブランデーの熟成に多用され、
スパニッシュオークは、酒精強化ワインの熟成()のほか、これを転用してウイスキーの熟成に多用されています。

今回のシリーズは、このスパニッシュオークをフィーチャーしたシリーズです。
それでは、一つずつ、そのスペックと味わいをみていきましょう。

1.シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 スパニッシュオーク
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【スペック】
・アルコール度数56%、500ml、税抜価格8,000円。
・ラベルは「情」をイメージした墨アート。スペイン国旗の赤を思わせる躍動的なデザイン。
・ボトルの表記は2009年蒸留、2019年瓶詰の9年熟成。
・サントリーが木材の選定段階から関わったスパニッシュオーク材を使用。
・これを社内のクーパーレッジで自社製樽しています。
・ファーストフィルの新樽からの樽出し、カスクストレングスです。

【テイスティングノート】
・ウッディでスパイシーな香り、真っ直ぐな甘さが訴求ポイント。

・茶褐色の水色。焦げを思わせる薄暗闇のニュアンス。
・モンティージャカスクの色調の濃さを10とすると8くらいの濃さ。
・上立ち香はウッディ。焦がした木を思わせるスパイシーさがある。
・口当たりはすっきりしており、するりと入ってくる。
・ほのかにカラメルな基調香。卵黄を連想させるトロンとした芳香もある。
・味わいはイチローズモルトと誤認しそうになるほどにトーンが明瞭で、中でも甘さが印象的。
・とはいえ、甘さ一辺倒ではなくタンニンの苦味が心地よく縁取っている。
・削りたての鉛筆、ラングドックの熟成赤ワイン。炭火。
・余韻は密やかに続く。短く力強いフォルテシモのあとの長い残響。
・含み香はウッドとブドウ。キレがある。
・加水をすると柑橘のニュアンスが現れる。


2.シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 リフィルシェリーカスク
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【スペック】
・アルコール度数53%、500ml、税抜価格8,000円。
・ラベルは「情」をイメージした墨アート。白地に炭色とボルドーレッドが映える。
・ボトルの表記は2008年蒸留、2019年瓶詰の10年熟成。
・一度ウイスキーの熟成に使用したシェリー樽に再度ニューポットを詰めて熟成させたリフィルシェリー樽。
・リフィル樽熟成はファーストフィル樽熟成に比べて、軽やかな味わいに仕上がると言われています。

【テイスティングノート】
・なめらかな味わい、すっきりとした余韻が訴求ポイント。

・うっすらとした黄褐色の水色。非常に淡い。
・モンティージャカスクの色調の濃さを10とすると3くらいの濃さ。
・上立ち香はクリーミーで甘く、カスタードクリームやハチミツを思わせる。
・ねっとりと芳香の中に、ほのかなレーズンのニュアンスが潜んでいる。
・上立ち香の期待を裏切らない、非常になめらかな口当たり。
・口に含むと、中南米産チョコレートを思わせる華やかな基調香が立ち上がる。
・麦の旨味とクリーミーな甘味がメインの味わい。
・これに爽やかな酸とゴマを煎った様な香ばしさが加わり、ゆったりと協奏する。
・余韻はすらりとしており長い。
・含み香はアモンティリャードを連想させる。
・上品な甘味と酸があり、実に山崎らしい。
・加水するとサルファリーなニュアンスが現れる。

3.シングルモルトウイスキー 山崎蒸溜所 モンティージャワインカスク
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【スペック】
・アルコール度数55%、500ml、税抜価格8,000円。
・ラベルは「情」をイメージした墨アート。南欧の日差しを思わせる鮮やかなオレンジ色。
・ボトルの表記は2009年蒸留、2019年瓶詰の9年熟成。
・モンティージャ(モンティーリャ)とはスペイン南部・アンダルシア地方 モンティージャ・モリレス地区の一部酒精強化ワインのこと。
・シェリー酒の親戚的な存在で、製法もほぼ同じくソレラシステムも行われるが、使用されるぶどうの性質が異なっています。
・イベリア半島でも最南部にあるモンティージャでは、糖度が非常に高いペドロ・ヒメネス種がメインの品種となるのです。
・糖度の高さはアルコールの高さに比例するため、辛口酒については酒精強化を行わなくても高アルコールが得られる利点があります。
・今回は酒精強化のモンティージャ樽を使用したとのことだったので、オロロソ、あるいはP.X.を詰めていた樽と思しい。

【テイスティングノート】
・濃厚な甘さ、最後に残る複雑な余韻が訴求ポイント。

・じっとりとした黒褐色の水色。濃ゆい色調。
・上立ち香はミネラル感と甘さが同居しており含蜜糖、とりわけ黒糖を連想させる。
・ドライフルーツ、プルーンやマンゴーの風味も感じられる。
・口当たりは濃厚で躍動的。口に含むと多層的な香りと味わいが弾けてゆく。
・モルトと樽熟成がよく結合しており、煮詰めたメープルシロップを思わせる豊潤な甘さが基調香となる。
・味わいはフルボディ。樽由来の焙煎感、貴腐ブドウを思わせるねっとりした甘味と軽やかな酸味の調和が楽しめる。
・単に甘いだけでなく、タンニン由来の深い苦さも存在する。
・10年熟成だが攻撃的な若さは少なく、よく纏まっている。むしろ老成した様な側面も。
・余韻は長くどっしりしている。重心が低い。
・含み香というより返り香があり、それはバルサミコ酢を思わせる。
・酸味と嫌味にならない程度のエグミ。モルティな旨味も健在。
・加水するとフラワリー。白ぶどうのニュアンスも出てくる。


【総評】
・料飲店向けの数量限定商品として登場した「The Essence of SUNTORY WHISKY」シリーズも第二弾となりました。
・全3種の全てがカスクストレングス(樽出し無加水の熟成原酒)という尖った仕様は健在。
・新樽、リフィルに超濃厚甘口。山崎蒸溜所の多彩なつくり分け、樽の個性が際立つ、興味深い商品群となっておりました。
・蒸留所での有料試飲価格はいずれも300円。数量限定とのことです。
・これら三種類を飲んだ後にぜひオススメしたいのは「山崎12年」を飲むこと。
・今回リリースされた個性派揃いのウイスキーの特徴がありながら、美しいまでにバランスが取れていることに驚くはずです。
・あらためてブレンダーの重要さを認識させられる、そういう意味でも面白い商品でした。
・2020年、第三弾が出てくれば喜ばしく思います。今度は白州蒸溜所のみ三種(例えばピーテッド縛り)でどうかしらん。

by katukiemusubu | 2019-03-03 18:52 | 生活一般・酒類・ウイスキー
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