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【レビュー】木内酒造 常陸野ハイボール

感想と評価。

Review:Hitachino Highball(Hitachino Whisky/Kiuchi Brewery)





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【スペック】
・2019年(平成31年)4月1日発売。
・常陸野ネストビールや日本酒「菊盛」で知られる茨城県・木内酒造合資会社の新商品です。

・木内酒造は2016年1月よりネストビールブルワリーの一角で額田蒸溜所を操業し、スピリッツ事業に本格参入。
・以来、ネストビールを蒸留したクラフトビール・スピリッツ「木内の雫」などを商品化して来ましたが、ウイスキー系の商品としては「常陸野ハイボール」が初めての出荷となります。

・自社蒸留のウイスキー原酒のみを使用したクラフトハイボールであり、容量は355ml、アルコール度数は9%、価格は350円(税抜)です。
・その味わいは、というと・・・。

【レビュー】木内酒造 常陸野ハイボール_c0124076_16311620.jpg
【ティスティングノート】
・光沢感のある飴色の水色。
・繊細な泡立ちがあり、ゆるやかに解けていく。
・ハイボールとしては高めのアルコール度数もあってか、上立ち香はしっかりとウイスキーをしている。
・シェリー樽熟成原酒を思わせる華やかな香りが立ち上り、カラメルを思わせる甘い芳香もある。
・口に含んでみると炭酸は比較的強めで、すこし刺激的な口当たり。
・とはいえ辛いほどではなく、程良いアクセントとなっている。
・基調香は樽由来の熟成木香。これが猛然と、勢いよく口中に広がっていく。
・味わいの基調は、麦由来のモルティな甘味。
・これが上述の基調香と結合して、樹液を思わせる濃醇な味わいを形成している。
・スモーキーな香味とタールを思わせる苦味のヒントが濃醇な味わいを縁取っている。
・濃厚な味わいであるが、喉越しは爽快でキレがある。
・余韻は長い。じんわりと長く続く。
・含み香は、和三盆を思わせる甘い芳香。控えめとなった木香も継続する。
・プルーンを連想させる果実感、鼻を抜けてゆくバニラ香。
・しかし、あくまでも主役は麦の旨味。モルティな味わいが静かに回帰し、たおやかに続いていく。

・正直言って、ごくごく飲めるお酒、という訳ではありません。
・上立ち、基調、含みのそれぞれに強烈な個性があります。
・一気に飲むというより、各々の個性を含味しつつ、じっくりと味わいたいハイボールです。
・その個性の際立ちぶりから、万人向けというよりは人を選ぶ味わいではあるのですが、クラフトビールの愛好家やウイスキーラバーには好適の味わいとも言い得ます。
・クラフトビールで名を馳せた酒造会社の贈るクラフトハイボール。正しくクラフトな味わいと申せましょう。


【余話】
・直営店で購入したため、購入ついでに色々とお話を伺うことが出来たのですが、このハイボールは国際基準に準拠し、全量3年以上の熟成を経た原酒を使用しているとの事です。
・つまりはヨーロッパにおける定義(3年以上の熟成を経たものをウイスキーと言う)に基づいた、紛う方なき「ウイスキー」のみを使用しています。

・ウイスキーの熟成には主としてオーク樽を使用しており、新樽のほか(同社のバレルエイジビールにも用いていた)バーボン樽やワイン樽、シェリー樽で寝かせた原酒をブレンドして仕上げているそうです。

・缶入りハイボールにしては高めの「9%」というアルコール度数に目を引かれますが、これは「ウイスキーそのものの味わいを訴求したい」という意図によるものだとか。

・炭酸水で割る前のウイスキーのアルコール度数を45%と考えると、ウイスキーの使用量は一缶あたり71ml。
・バーなどの標準的な提供量(シングル:30ml)の2倍以上となる使用量です。
・缶入りハイボールの代表格、サントリー 角ハイボール缶のウイスキー使用量が概ね60ml(ダブル)ですから、一般的な缶入りハイボールよりも濃い目の作りとなっております。

・それも頷ける、厚みのある味わいと、豊かな香りをもったハイボールでした。

・価格面についても触れておくべきでしょう。
・目下のウイスキーブームによる需要増大を受けて、国内の新興蒸溜所(クラフトディスティラリー)は多くのニューメイク(熟成3年以下、国際標準では「ウイスキー」の定義に当たらない新酒)をリリースしておりますが、これらは、市場の情勢も相まって非常に強気な価格設定となっております。
・例えば北海道の厚岸蒸溜所のニューメイク「New Born Foundation3」(8〜23ヶ月熟成、ミズナラ樽)は200mlで5,800円。常陸野ハイボールの一缶あたりの推定使用量(71ml)に仕切り直せば2,059円となります。熟成年数は若いものの、常陸野ハイボールの実に6倍近い価格設定です。

・蒸留開始から「ウイスキー」としての出荷までに最低3年を要するウイスキー業界では、その間の資金繰りのために他の商品を発売したり、樽の先行販売を行ったりして事業継続を図ることが多々あります。例えばニッカの創業者・竹鶴政孝は果汁ジュースを発売することで糊口をしのぎました。
・その様な歴史的文脈を踏まえると、ニューメイクの割高な「ご祝儀価格」は一概に否定されるべきものではありませんが、今回、36ヶ月以上の熟成を経た「ウイスキー」のみを使用したハイボールが350円で発売されたことには鮮烈な驚きを感じました。
・一切の「ご祝儀価格」に頼ることなく、はじめから完成品を出荷してみせた木内酒造の姿勢には頭が下がる思いです。

・2019年(令和元年)内には、これまでの額田蒸溜所(スチル容量10,000L)に加えて、専用蒸溜所となる石岡蒸溜所の新設が予定されており、オーク樽のみならず桜樽での熟成や地元産大麦を利用した100%国産のジャパニーズウイスキー製造も試みられているとか。
・いつ発売かは明言できないものの、クラフトウイスキーのボトル販売も検討中とのことでした。

・仮に、今回のハイボールで用いたウイスキーを単品ボトル(700ml)の価格で計算し直すと一本あたり3,450円となりますが、目下の情勢を考えれば破格の安さでありますので、その1.5倍、5,000円くらいでのリリースを期待したいところです。

・なお木内酒造の直営店(東京駅や秋葉原・万世橋の常陸野ブルーイング・ラボ)ではハイボール発売と並行して、ウイスキーのニューメイクの発売が実施されておりました。
・ボトル販売はなく、店内での飲用販売のみですが、価格も780円〜と比較的手頃な値付けでありますので近く試してみたいところです。

by katukiemusubu | 2019-04-06 16:32 | 生活一般・酒類・ウイスキー
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