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【レビュー】サントリー 碧Ao

感想と評価。
Review : SUNTORY World Blended Whisky 碧 ao




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<スペック>
・2019年4月16日(火)発売。
・アルコール度数43%、容量700ml、価格5,000円(税抜)。
・サントリーHDの所有する世界の蒸溜所のウイスキーをかけ合わせたワールドウイスキーです。

・世界五大ウイスキーと呼ばれる、アイリッシュ、スコッチ、アメリカン(バーボン)、カナディアン、ジャパニーズのウイスキー。
・アイルランドからはクーリー蒸溜所、スコットランドからはアードモア蒸溜所(ハイランド)とグレンギリー蒸溜所(ハイランド)、アメリカからはジムビーム蒸溜所、カナダからはアルバータ蒸溜所、日本からは山崎蒸溜所(大阪)と白州蒸溜所(山梨)、計7つの蒸溜所が参画しています。
・すべてサントリーの関連会社であり、世界規模の酒類製造会社の面目躍如と言うべきラインナップです。

・現状では日本国内のみでの販売ということで、2019年、年2回(春夏版と秋冬版)の出荷が予定されています。
・製造予定本数は36万本(朝日新聞報道)。プレスリリースでは「2019年(の製造)は…」という表現が多用され、2020年以降の製造・出荷にも含みを残しております。

・36万本という製造本数は、競合他社であるニッカウヰスキーのブラックニッカ数量限定版の製造本数(各種14万本)に比べて遥かに多く、実に2.5倍の規模です。

・そのためサントリーとしても一大プロモーションを仕掛けており、綾野剛主演のロングCM(約5分のショートフィルム)や特設サイトコミュニティサイト Blend_Salonの設置など、広告への力の入れぶりも尋常ではありません。
・逆にいえば、サントリーにとってそれだけの"うまみ"がある商品なのですが、実際に飲んでみるとそれも頷ける原酒の若さがあります。

・若い原酒ということは、つまりは(調達価格の)安価なお酒なのですが、それを「ワールドブレンド」という形でうまく組み合わせることで、比較的高価格帯(希望小売価格 5,000円)へ持っていこうという努力が伺われました。
・これは決して皮肉や否定的な意味で言う訳ではありませんが、ウイスキー不足の時代ならではのブレンダーの腕前が際立つNA(ノンエイジ)ウイスキーです。

・原酒の若さだけで言えば(おそらく平均熟成年数は10年にも満たず)3000円ほどの価値のウイスキーですが、これに「ワールドブレンド」という付加価値を持たせることで、5000円相当の個性をもたせ、適度な美味しさに仕上げている。
福與伸二ブレンダーをはじめ、サントリー・ブレンダー室の技量、ブレンドの妙が垣間見えるウイスキーでした。

・同じく「ワールドブレンド」というコンセプトを持つものに、イチローズモルトの白ラベル(現行品:モルトに9つ、グレーンに2つ、世界の11の蒸溜所原酒をブレンド)やキリンシーグラムのテン・ディスティラリーズ(終売品:名前の通り10の蒸溜所原酒をブレンド)がありますが、こうした他社の「ワールドブレンド」と飲み比べをしてみて、ブレンドの多様性を味わうという楽しみ方も面白そうに思われました。

【レビュー】サントリー 碧Ao_c0124076_21040612.jpg
<ティスティングノート>
・光沢のあるライトブラウンの水色。
・野草の香りと香辛料、パイナップルや桃を思わせるフルーティな上立ち香がある。
・爽やかな酸の芳香とほのかなミントのヒント。
・口当たりは少し刺激的。全体的に若い原酒と思われる。
・口に含むと、伸びのある樽香が広がり、同時に生クリームのニュアンスがある。
・基調香はバニラ、ビスコッティなアロマ。
・穀物感があり、アメリカンとカナディアンの含有量の多さが感じられる。
・味わいは厚みがあり、ビターチョコレートを思わせる苦味と甘味が調和する。
・余韻ははじめ鋭く、後に円やかでそれなりに長い。
・モルティな含み香があり、返り香にはスモーキーさが含まれている。

・ストレートで飲む限り、低・中価格帯のブレンデッドウイスキーといった印象で、そのままでは5000円という値付けには首をかしげざるを得ない。
・しかし、このウイスキーの本領はアレンジにある。

・少しだけ加水すると、ミルキーな風味が現れ、口当たりも格段に滑らかになる。
・そのままトワイスアップまで加水すると、物凄くミルキー&スイートな味わいに転ずる。
・蜂蜜を連想させるこってりとした甘さと、それを縁取るライ麦のスパイシーな余韻。
・バーボンがフィーチャーされ、カナディアンがそれに寄り添う。

・ハイボールにすると、打って変わってフルーティ&スモーキー。
・アイリッシュとスコッチがフィーチャーされ、華やいだ香りの中に、タンニンの渋味が顔を出す。
・アードモアのスモーキーさとグレンギリーの円やかさがたしかに存在している。

・全体としてジャパニーズウイスキーは表に出てこないが、その色調や香味の節々に気配が潜んでいる。
・無加水時のライトブラウンの光沢。加水時のコク。ハイボールにした際の炭酸に弾ける清涼感。
ウイスキーマガジンの記事によれば、日本からは山崎蒸溜所のシェリー樽熟成原酒と白州蒸溜所のスモーキー原酒が使用されており、それも頷ける味わいも少しくあった。

・これだけブレンド元の原酒内容が公開されているブレンデッドウイスキーは他に無く、どういったアレンジでどういった味わいが出てくるのか、それを引き出す"宝探し"にも似た感覚で楽しめるウイスキーと申せましょう。
・「世界をつなぐ雄大で美しい海の色」をイメージしたという碧色のパッケージの様に、7つの海を巡るトレジャーハンティング系ウイスキーなのです。
・無加水・加水・ハイボールと試してみた感じでは、「ゴッドファーザー」などのカクテルベースに用いることでジャパニーズが出てくる気がいたします。

・決してまずいという事はなく、とはいえ値段相応に美味しいというよりかは面白いウイスキーですが、五角形のボトルデザインやオリジナルのロゴ、サントリーが世界で初めて開発に成功した青いバラ(APPLAUSE)を思わせるネーミングなど、気合十分の商品でもありました。

by katukiemusubu | 2019-04-17 21:04 | 生活一般・酒類・ウイスキー
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