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天気の子に登場するラブホテルはどこ?(その場所・ホテル名などを同定する)

映画「天気の子」に出てくる例のホテル(例のラブホ)を特定する記事です。
ホテルの名前(ホテル名)や場所、部屋の詳細なども記載しております。
聖地巡礼や舞台探訪、ロケ地めぐりのご参考にどうぞ。

※ネタバレ・R-18にご注意ください。
※確認できた全てのロケ地を巡る本記事「新海誠 天気の子 聖地巡礼(Location Finding)」はこちら。
※地理の考察記事「天気の子 『世界の形』の変化を考える」はこちら。




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カップヌードルのCMに登場する「例のラブホ」の部屋と実際の部屋写真とを見比べた画像

新海誠監督の映像作品「天気の子」
映画後半における怒涛の展開において、唯一、息をつけるのがラブホテルのシーンです。
この記事では、このホテルはどこの何というホテルなのか、それを考えていきます。

2019年7月19日の映画公開から数日。
このホテル、一体どこなのだろう?と思って探していたのですが、見つけるのは中々難儀でした。

なにせインターネット上から確認できるだけでも、池袋駅(帆高たちが電車を降りた駅)周辺のラブホテルは81軒。
舞台となったと思しい(※詳しくは本記事をご覧ください)、池袋北口界隈のホテル街だけでも42軒が存在します。
小説版にも「場末のラブホテル」(角川文庫版、p.193)としか言及されず、経路も不明、ヒントはほぼ無し。

仕方なく、周辺のホテルをしらみ潰しに当たることにしました。
調査開始から5日。やっとのことでホテルを特定できましたので情報を共有いたします。

焦らすのは趣味ではありません。
先に結論を延べておきますと、天気の子に出てくるラブホテル、そのホテル名は池袋のラブホテル ドマーニ (リンク先R-18注意)Hotel DOMANIと思われます。

では、どうしてその結論に至ったのか、詳論を述べて参りましょう。

法律上ラブホテルは二種類あり、いわゆる「四号(風営法2条6項4号)ホテル」と「新法(旅館業法)ホテル(レジャーホテル)」に大別されます。
この2つは構造により容易に識別が可能で、フロントの構造が遮蔽構造であれば四号ホテル、開放型であれば新法ホテルです(風営法施行令3条1項2号ニ参照)。

映画をご覧になった方ならばお分かりの通り、「例のホテル」は遮蔽構造がある「四号ホテル」です。
一方「新法ホテル」の代表格、バリアンリゾートなどは開放型の構造を採っているため、「例のホテル」とは異なることが分かります。

では、ドマーニはどうでしょうか。
ホテルの公式HP掲載のフロント画像を引用して見てみましょう。
天気の子に登場するラブホテルはどこ?(その場所・ホテル名などを同定する)_c0124076_12564288.png
空室状況を表示する案内板。その奥には、小さなのぞき窓がついた遮蔽措置付きのフロントがあります。
つまりは四号に該当するホテルです。

いわゆる「四号ホテル」については、法律(風営法28条)により18歳未満の立ち入りが禁止されています。
そのため、上に挙げたホテルのHPへのリンクにも「R-18注意」と記載いたしました。
ホテルの部屋を紹介する都合上、これ以降の記述についても18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。


18禁注意(なんで全年齢向け映画のレビューでこんな注意書きを書いているのか…)


・・・さて、映画でも見覚えのある遮蔽構造のフロントでした。
一説には、フロントは同じく池袋のホテルアミー(New Amie、こちらも四号ホテル)ではないか、との情報もあるのですが、ここでは捨象します。
(なお、ホテルの外観そのものは確かにアミーらしき建物であり、劇中の部屋番号は813号室でした)

部屋の中を見て参りましょう。
天気の子に登場するラブホテルはどこ?(その場所・ホテル名などを同定する)_c0124076_13072921.jpg
まずは映画の予報2を確認。
キングサイズのダブルベッドにサイドテーブル。2人がけのソファ。
陽菜の後ろにはレンガ風の壁が見えており、帆高の後ろには楕円形(オーバル)の意匠で飾られたドアが見えます。

つまりは、こう。
天気の子に登場するラブホテルはどこ?(その場所・ホテル名などを同定する)_c0124076_13452088.jpg
レンガ風の壁(603号室)、オーバルのドア(702号室、写真奥)。画像はドマーニの客室紹介ページからの引用です。
ドア窓の形は(左右を反転すると)映画そのものであることに対し、レンガの幅は映画の方が太いことが気になりますが、作画上のリソース確保だと思えば納得できそうです。

それぞれの部屋の内装を見ていったのですが、映画で用いられたディテールは各部屋に散らばっており、どれか特定の部屋が舞台という訳ではなく、複数の部屋の特徴をつなぎ合わせている様に思われました。
そして、その事実は日清の天気の子コラボCM(「大切なシーン篇」)に収録された以下のカットを見ることで明らかとなります。
天気の子に登場するラブホテルはどこ?(その場所・ホテル名などを同定する)_c0124076_13530158.png
画像はコマーシャルムービーの12秒ごろのもの。
これに各部屋の情報と重ねてみると、こうなります。
天気の子に登場するラブホテルはどこ?(その場所・ホテル名などを同定する)_c0124076_14392008.jpg
手前に見えるタイルで装飾された柱は201号室のもの。
壁龕(へきがん、壁のくぼみ)風の意匠は506号室のもの。
壁の中央にある正方形状の浮き彫り風ディテールは301号室のものです。

つまりドマーニ全体が「例の部屋」のモチーフとなっているのです。
(逆に言えば、劇中の「28,000円の部屋」そのものは存在いたしません)

結論に入りましょう。
映画「天気の子」におけるラブホテルの部屋は、ドマーニ池袋の各々の部屋の意匠を数多く援用している様に思われます。
そしてその部屋=「例の部屋」とは、ホテル内の諸要素をかけ合わせ、更に映画オリジナルのデザインを加えたものと言えそうです。

いわば「ドマーニのディテール盛り合わせ 新海誠の装飾を添えて」と申せましょうか。

流石にラブホテルにまで聖地巡礼なさる向きは少ないと思いますが、もし仮に探訪なさるのでしたら、広いジャグジー付きの部屋(例えば703号室)などがゴージャス(1泊18,300円)で劇中の雰囲気に浸れて良いかもしれません。

・・・ラブホテルとは儚い存在です。
行為の目的が達されようと達されまいと、朝になり日が昇れば去らねばならない仮初めの楽園です。
その儚い存在を、身分不詳にまで追い込まれてしまった帆高・陽菜・凪の三人が駆け込み、一夜の避難所とする。

そこで三人が見せた楽しげな様子は、映画全編のなかでも取り分け明るく、それ故に悲しく、眩しい光景でした。
(了)

by katukiemusubu | 2019-07-24 20:14 | ブックレビュー・映画評
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