IMAXデジタルシアター・IMAXレーザー・IMAX次世代レーザー(GTテクノロジー)など。
IMAX規格の違いについて解説する記事です。 映画鑑賞のご参考にどうぞ。 アイマックス規格。 映画館のHPを見てみると、「IMAXデジタルシアター」や「IMAXレーザー」、「IMAXレーザー/GTテクノロジー(ツインレーザー)」などIMAXに関する様々な名称を見かけるものと思います。 2019年12月現在、日本国内に存在するIMAX規格は4種類。 古くから存在するアナログ規格「フィルムIMAX」、 2008年から始まったデジタル規格「IMAXデジタルシアター・システム」、 それを2014年にブラッシュアップした「IMAXレーザー」、 その最上級仕様である「IMAXレーザー/GTテクノロジー」の4種類です この記事では、それぞれの規格のスペックや違いについて説明していきます。 規格1:フィルムIMAX 【スペック】 日本での館数:1(鹿児島市立科学館) 投影方式:オムニマックス ×1 音響方式:オーダーメイド 解像度(理論値):12K 画角(画面アスペクト比)= 1:1.43 スクリーンサイズ:超巨大(ドームシアター) 3D対応:上映館による 【解説】 ・IMAXはカナダ発祥の大型映像投影システムです。 ・カナダ発ではありますが、実は世界初のIMAX上映は日本で行われました。 ・初めての上映が行われたのは1970年。大阪万博、富士グループパビリオンでの出来事です。 ・70mmフィルムを横に使うことで、通常(35mmフィルム)の20倍近い撮像面積を確保することに成功したIMAX方式。 ・その大きさの分、桁違いに高精細な映像を得ることが出来、単独のフィルムを30m超の大画面に引き伸ばしても鑑賞に耐えうる「圧倒的な映像美」が実現されました。 ・「インターステラー」や「ダークナイト」で知られるクリストファー・ノーラン監督によれば、その理論解像度の値は12K。デジタルな画素数に置き直すと、約1億2千万画素となります。 ・現実にはプロジェクターの問題もあり、その解像度で観られる訳ではありませんが、ともあれ凄まじく高情報な規格でした(その実効解像度は8K=3200万画素くらいあるのではないか、と言われています)。 ・しかし、これを投影するためには、非常に高価な専用フィルムと軽自動車並みの大きさの専用プロジェクター、更には専用スクリーンが必要であり、導入にも維持管理にも恐ろしくコストが掛かるシステムでした。 ・加えて、アナログ方式であるフィルムの複製には、現像、定着、焼付といった手間がかかり、一作品を流通させるために掛かる時間やお金も莫大なものとなりました。デジタル方式のようにデータをコピーすれば即完成するわけではないのです。 ・こうした高コスト体質が災いして、一時は国内だけでも20軒近くが存在したフィルムIMAXの上映館は次々と減少。 ・現在は鹿児島県にある鹿児島市立科学館の宇宙劇場が全国でただ一軒の上映館となっています。 ・ただし公営施設ということもあって上映プログラムに商業映画が含まれる機会は少ない印象です。 (とはいえ、2019年には「アポロ11」が上映され観客の度肝を抜きました) ・世界的にも減少が進んでおり、現存するフィルムIMAXの上映館は20にも満ちません。 ・国内的にはスペースワールドのギャラクシーシアター(2018年1月閉館)が記憶に新しいところです。 規格2:IMAXデジタルシアターシステム(別名:デジタルIMAX、IMAXデジタルシアター) 【スペック】 日本での館数:たくさん 投影方式:2K DLP Cinema プロジェクター ×2 音響方式:5chサラウンド 解像度(実効値):2K 画角(画面アスペクト比)= 1:1.85 スクリーンサイズ:それなり(10m〜15m前後) 3D対応:◯(偏光フィルム方式) 【解説】 ・高コスト体質によりアナログ方式衰退の危機に瀕したIMAX。 ・彼らはこの状況に対し、デジタル方式に打って出ることで現状の打開を図ります。 ・この方式は2008年に発表され、2009年に日本に導入されました。 ・現在最も多いIMAX規格はこの「IMAXデジタルシアターシステム」であり、特に留保なしに「IMAX(アイマックス)」と言われる場合は、大概この規格です。 ・そのスペックは実効解像度2K(フルハイビジョン)=約200万画素。フィルム時代の解像度が理論値とは言え1億2千万画素であったことを考えると、実に60分の1。大幅にスペックダウンしています。 ・画面アスペクト比も1:1.43から1:1.85(または1:1.90)と横長になり、縦方向の情報がバッサリ切り捨てられてしまいました。 ・確かにデジタル化することでコストは大幅に下がり、商業映画への間口も広くなりました。しかし、そこに現れたのはフィルム時代のIMAXとは似て非なるものだったのです。 ・目で見てわかるほどに低下した解像度。IMAX独特の映像への没入感を生んでいた縦方向情報の切り捨て。 ・確かに通常の映画館の画角(1:2.35 シネマスコープ)に比べれば縦長なのですが、フィルムIMAXの画角に比べれば2割以上の情報が失われており、従来に比べて大いに見劣りするものになってしまったのです。 ・これに失望した人々からは「LieMAX(≒嘘八百≒ニセモノのIMAX)」という蔑称を奉られています。 ・とはいえ悪いことばかりではなく、サラウンドスピーカーがデフォルトで導入されていたり、プロジェクターを2基導入することで3D映画における光量の低下が防がれたり、デジタル時代に対応した技術が存在することもポイントです。 ・導入の点でも簡便になり、アナログ時代のような容積的な制約から開放された結果、専用のIMAXシアターを一から新設する必要はなくなり、通常の映画館を改装することで「IMAX化」が出来るように成りました。 ・作品の点でも進展があります。フィルムの時代とは異なり、デジタル処理を施すことで「後からIMAX映画化」することが出来るようになり、多くの商業映画がIMAX対応となったことも、この規格の功績です。 ・興行側、映画館としては低コストに「IMAX化」が図れることもあって、客寄せとしても、追加料金(概ね700円前後)を確保する口実としても、最適なシステムでした。 ・そのためこの規格は爆発的に普及し、現在日本に存在する多くの「IMAX」は「IMAXデジタルシアター」となっています。 ・しかし解像度が低いこともあって、スクリーンサイズを大きくし過ぎると粗が目立ってしまうという欠点があり、その最大幅は15m程度に留まってしまいました。従来のフィルムIMAXの3分の1〜半分程度のサイズです。 ・たしかに15m×10m程度のスクリーンでも通常のシネコンで考えれば十分に大きいサイズですし、迫力もあります。しかし20m超のスクリーンが存在する都市部の巨大劇場に比べればたいした大きさではなく、フィルムIMAXと比べれば明らかに小さいものでした。 ・現在「IMAX」を導入している劇場の多くがそのスクリーンサイズを「非公開」としていますが、その裏には、こういった事情があるものと思われます。 規格3:IMAXレーザー(別名:レーザーIMAX、IMAX with LASER) 【スペック】 日本での館数:増加中 投影方式:4K レーザー光源 プロジェクター ×1 音響方式:12chサラウンド 解像度(実効値):4K 画角(画面アスペクト比)= 1:1.85 スクリーンサイズ:大きい(20m前後) 3D対応:◯(偏光フィルム方式) 【解説】 ・2Kという低解像度、スクリーンサイズの制約、5chサラウンド…。 ・これらのスペックは導入当時こそ新鮮でしたが、あっという間にキャッチアップされてしまいました ・導入から10年も経たないうちに、「IMAXデジタルシアター」は陳腐化してしまったのです。 ・2010年代以降に新設された映画館では、4K解像度のプロジェクター導入が相次ぎ、IMAXを超えるサイズの通常スクリーンが次々と登場することになります。 ・TOHOシネマズのTCX、イオンシネマのULTIRA、シネマサンシャインのBESTIA…。15m超、20mクラスの巨大スクリーンが各所に現れたのです。 ・音響面でもドルビーアトモス(Dolby Atmos)が登場するなど、技術革新が進んでいました。 ・このような状況に対して家庭用BD(ブルーレイ)同然のスペック(解像度フルHD、5chサラウンド)の「IMAXデジタルシアター」では到底太刀打ちできません。 ・折からの「LIEMAX」批判もあり、IMAX社はデジタル方式のリニューアル、テコ入れに着手します。 ・「IMAXデジタルシアター」の日本導入からわずかに5年。2014年に発表された規格が「IMAXレーザー」です。 ・映像面では解像度が2K(フルHD)から4K=約800万画素へと4倍のスペックアップ。 ・音響面では5chサラウンドから12chサラウンドへと、競合他社の立体音響技術にキャッチアップしています。 ・特に重要なのはプロジェクターの光源の変更で、従来の白色灯(キセノンランプ)からレーザーへと変更が行われました。 ・レーザーの場合、白色灯ランプの光をプリズムで分離するという過程が省けるため、従来にくらべてクッキリ・ハッキリとした画を得ることが出来ます。 ・光量も大きく増加し、しかも発熱が抑えられるため、メンテナンス性にも優れていました。 ・現在多くの映画館で置き換えが進んでいる「IMAX」とは、この「IMAXレーザー」規格のことです。 ・残念ながら置き換え(設備更新)であり、一からの新規設計ではないため、画角は「IMAXデジタルシネマ」時代の1:1.85に留まりますが、それでも画質面・音響面での欠点が解消され、追加料金を支払うのに相応しい性能を持ち得ています。 ・スクリーンのスタンダードサイズ(想定される上限サイズ)も22m×16.1mまで大きくなっており、もし大規模なリニューアルが行われれば1:1.43のフル画角が期待できるかも知れません(残念ながら日本では例がありませんが…)。 ・唯一「IMAXデジタルシアター」と比べて劣る点をあげるとすれば、それはプロジェクターの数が2基から1基に減ったことです。 ・そのためIMAX3Dの利点であった「明るい画面」が一歩減退してしまいますが、その点はレーザー光の高コントラスト比と高光量で補えるという判断ではないかと思われます。 規格4:IMAXレーザー/GTテクノロジー (別名:IMAX次世代レーザー、ツインレーザー) 【スペック】 日本での館数:2(109シネマズ大阪エキスポシティ、東京 池袋グランドシネマサンシャイン) 投影方式:4K レーザー光源 プロジェクター ×2 音響方式:分散型12chサラウンド 解像度(実効値):4K+α 画角(画面アスペクト比)= 1:1.43 スクリーンサイズ:巨大(25m超) 3D対応:◯(電子シャッター方式) 【解説】 ・栄光よ、再び。 ・デジタル方式のIMAXにおけるフラッグシップ規格、それが「IMAXレーザー/GTテクノロジー」(IMAX GTレーザー)です。 ・発表は「IMAXレーザー」と同じく2014年。翌2015年には大阪府吹田市の万博記念公園に新設のシアターが設置され、2019年には東京都池袋のグランドシネマサンシャインにも導入されました。 ・1970年から有余年。約半世紀の時を越えて、吹田の丘にIMAXが戻ってきたのです。 ・画面アスペクト比は「IMAX画角」として知られる1:1.43。デジタル方式としては初めてのフル規格IMAXです。 ・プロジェクターの解像度そのものはシングルレーザーの「IMAXレーザー」と同じ4Kですが、これを2基用いたツインレーザー仕様であり、超解像イメージング技術によって従来の4Kを超える画質が確保されています。 (英語版Wikipedia の記事「IMAX」のうち「Laser Projection」の項目を参照のこと) ・「GTテクノロジー」のGTとは、Giant Theatre(ジャイアントシアター)を意味する略語と考えられますが、それもそのはず、この規格はIMAXのスタンダードサイズ(スクリーンサイズ22m×16.1m)を超える劇場にのみ許された専用規格なのです。 ・大阪のEXPOシティも東京のGDCSも、約26m×約18mの巨大スクリーン。 ・音響面も巨大劇場に合わせたチューンナップが施されており、IMAX最高音質がうたわれています。 ・IMAX3Dの方式についても異なり、従来の偏光方式ではなくアクティブシャッター方式が採用されています。 ・アクティブシャッター方式はシャッターを開閉するための機構や信号受信部、バッテリーがあるため3Dメガネが重いという難点がありますが、従来型に比べて更に明るく・高コントラストの映像が期待できます。 ・なによりも素晴らしいのは画角で、従前のデジタル規格で失われてきた縦方向の情報が得られるようになりました。 ・これまで日本ではIMAX規格の映画が上映されても、実際のIMAX画角で見ることが出来ないという悲しみがありました。しかしGTテクノロジーの導入により、再びホンモノのIMAXに触れられるようになったのです。 ・数字に直してみましょう。アスペクト比1:1.85の画面の面積を100とすると、アスペクト比1:1.43の画面の面積は129。 ・最大幅が同じであったとしても、投影される画面の大きさは3割近くも違ってくるのです。 ・そのためどの映画館がおすすめか、と問われれば答えは明白です。 ・もし大阪か東京の近くにお住まいであれば「IMAXレーザー/GTテクノロジー」の二館、それ以外の地域であれば「IMAXレーザー」への改装館をおすすめいたします。「IMAXデジタルシアター」しか無い場合には、現在の状態ではことさらにIMAXを選択する必要はなく、各社の独自規格やドルビーシネマ、4Kプロジェクターの設置シアターを探したほうが映像美を楽しめるかも知れません。 ・以上、IMAX現行4規格の解説でした。映画館選びのご参考になりましたら幸いです。
by katukiemusubu
| 2019-12-19 21:30
| ブックレビュー・映画評
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