感想と評価。
戸河内ウイスキー ビアカスク フィニッシュのレビューです。
Review:Togouchi Whisky Beer Cask Finish
<商品情報>
「桜尾ジン」などで知られる中国醸造株式会社(広島県廿日市市)の展開する戸河内ウイスキーの限定品です。
アルコール度数は40%、品目はブレンデッドウイスキーです。
最近では桜尾蒸溜所において、自社蒸溜の純国産ウイスキーも作り始めている中国醸造。
こと「戸河内ウイスキー」については、原酒についての案内がないため、
広義の(輸入原酒をかけ合わせた)「ジャパニーズ・ウイスキー」であると考えられますが、
熟成場所が国鉄時代の試掘トンネルであったりと、一風変わった試みのブランドです。
今回のビアカスク(ビール樽熟成)はサケカスク(日本酒樽熟成)と共に発表された2020年の数量限定商品。
樽の来歴が面白く、商品情報によれば、
ラム酒に10年、その後、ビール(IPA)のバレルエイジに使用され、最後にウイスキーが詰められています。
カリブ海からフランスへ。フランスから日本へ。後熟に次ぐ後熟の商品です。
IPAカスク熟成のウイスキーは、イチローズモルトの「秩父IPAカスク・フィニッシュ」をはじめ名作が多く、気になって購入してみました。
そのお味はというと・・・。
<ティスティングノート>
非常に薄く、割りすぎてしまった水割りを思わせる黄白の水色。
あまりに薄っすらとしているため熟成年数も若く思われるが、
それにしては穏やかな上立ち香を持ち、酒精の刺激は少なめ。
ビスケットを思わせる穀物香とレモングラスを思わせるハーバルな上立ち香。
クリームとも糖蜜とも思われる甘さのニュアンス。
口当たりは穏やかで、比較的調和が取れている。
基調香も上立ち香と同系統で、かすかなモルト香とどっしりとしたグレーンの甘味が感じられる。
よくある「バルクウイスキー」にありがちな、いがらっぽい青みは少なく、あくまでたおやか。
甘さの中にクローブを思わせるスパイシーな味わいがあり、舌で転がすとグッと苦味が増す。
その苦味の正体は明らかにホップであり、なるほどIPAカスクフィニッシュと納得させられる。
余韻はあっさりとしており、そこまで後を引かない。
含み香は、花蜜を思わせる甘やかな芳香。
樽の焦げ感とホップの輪郭、2つの苦味が舌を焼く。
元の味わいが濃い目ではないため、あまり加水しすぎるといけないが、
1:1程度に炭酸水で割ると、ホップのニュアンスが鮮やかに出てきて面白い。
シトラスを思わせる軽やかな甘みと酸味。それを彩るホップの苦味と香味。
ホップの種類は「シトラ」か「モザイク」あたりであろうか。
モルトとグレーンの旨味は丸くなり、するりと入ってくる。
一瞬のホップの余韻。
実売2,000円台でこの味わいとは、なかなか楽しいウイスキーといえましょう。